空母インディペンデンス騒動を振り返る

97.08.26 ついに本決まり
 空母インディペンデンスが札幌の隣の小樽港に入港する。
北海道に住んで、空母を(もちろん自衛隊は保持して無い)見る機会は、今回のような場合かはたまた、有事(つまり、戦争ね)の時しかない。平和な時代に空母を見る機会ですら、一生物かもしれない。
早速、迎撃作戦を立案すべく、9月5日の空母の予定を諜報した。
一部軍機と言われたので、書けないが入港と歓迎式典はAM10:00から、空母が小樽港の沖に停泊するのは、これより4時間は前と思われる(これ以上書けない)。
よって、当日は日の出前から迎撃の予定。航行している空母の写真が撮れるか。こうご期待。
97.09.01 当日の予定
 アマチュア無線での実況中継ラグチューを予定。周波数はほとんど利用者の居ない6mのFM。
時間は島崎藤村の著作と言っておこう。
写真は250mmの望遠レンズで撮影予定。巧くいけば、12時頃にこのページにアップできると思う。
航行している空母の写真は停泊中の写真より迫力があるはず。

97.09.05 見た、来た、撮った
 眠い(笑い)。本日4:00起床、5:10小樽祝津からインディペンデンスを迎撃。
4:00と言うとまだ暗い。ヘッドライトに導かれて札幌から小樽に向かう。BGMは新沼謙二の「ヘッドライト」。朝里を通過する頃に日の出、天候は快晴に近い晴れ。
ヲタクがそれほど居るか解らないが、一生ものの空母迎撃だから、予想される数は半端じゃないだろう。駐車場所を確保するために、祝津に山越えでアプローチする。最悪でも祝津霊園に車が止めれれば後は歩いても良い。で、居る居る、道路沿いに車を止めて狙っているカメラの放列。なんとか、自然遊歩道前の駐車場に一角を見つけて駐車。5:12
見晴らしの良い所は席取りが終わっているが、まだまだ余地はある。駐車場で隣の車のおじさんに聞くと4時に一回来たらほとんど埋まっていて、家族を乗せて再度来たけど、もう場所は無いなとのこと。とにかく、展望閣ホテルのベランダに潜り込む。
既に遠くにインディペンデンスが見えている。かなりゆっくり動いているように見えるのは全体が大きい(370m)ためか。
300mmの望遠レンズではまだ取り込めないくらい遠い。見物の状況を視察に一番人の多いトド岩展望台へ向かう。若い女性が1000mmの望遠を柵を越えた崖の先端に構えて既にシャターを押している。若い女性が1000mmの望遠レンズを持つ時代なんだ、と感心していると、腕に「朝日新聞」の腕章。女性報道カメラマンなんだ。
ひととり写真を撮ると取材で回りの人間に片っ端から聞きまくっている。ななんと、一番乗りは昨日の夜から居るとの情報を得る。
6:00目の前をインディペンデンスが通過。視野に入った頃は2機の監視ヘリが4機に増えている。ここから逆光の区域に入る。遅れて来たカメラ小僧は唖然としている。
そろそろ、引き上げが始まったのだが、これでまた大渋滞が始まる。この間にアマチュア無線で実況中継。幸い、早い通勤中の仲間が居て、インディペンデンスの巨大なことをレポート。
入港写真を撮るために、朝里の毛無峠展望台に向かう。ここで勘違いしていたのは、空母は一旦小樽港の沖に停泊し、1時間くらい事前準備してから防波堤をパスして接岸すると勝手に思っていたこと。
小樽っ子の面目を掛けて祝津から毛無まで最短距離を走ったのだけれど、チラチラ見える空母は既に防波堤をパスしている。また、展望台が近づくにつれて道の両わきの不法駐車の多いこと。なかなか前に進めない。それでも展望台の駐車場に軽自動車なら止められるスペースを確保して駐車(路上駐車はしませんでした)。
凄い、警戒のヘリは数えられるだけで7機。最後のタグポートが接岸のための牽引とプッシュをしている。遅れをとったか。いちおう接岸の写真を撮影。8:15分
事前に聞いたとおり、外国の軍艦の上空は治外法権。警備のヘリが空母の真上でホバリングしている。これ以外に6機のヘリが飛び回っている。朝日新聞の千早型が上空を旋回、他社の取材ヘリ、飛行機が飛び交い、まるで2週間前にスズメ蜂に襲われた時を思い出す(笑い)。 で、詳細は後にして、撮った写真を現像に出して、とりあえず第一報。

97.09.11 事後実況中継
 結局空母インディペンデンスおよびミサイル巡洋艦モービルベイの一般公開には6日、7日それぞれ13万人、16万人と2日で小樽市の人口の倍の29万人の人出であった。
 港に停泊しているインディペンデンスと、入港の状況を見るのには雲泥の差がある。前に書いたように、停泊しているインディペンデンスを前に戦争の道具としての空母、小樽港の軍港化反対を叫んでも訴求力に乏しい。石狩湾にさす朝日を浴びて遠くに空母が見えた時に、始めて「有事」とは戦争の事なのだと理解される。空母が接岸する時に上空を哨戒するヘリの数の多さに、国家財産としての空母という兵器の慎重な取扱いに度肝を抜かれる。
 遠くに空母が見えた時に先導する海上自衛隊の「しらね」が上げる白波。それと速度がさほど違わないのだろうが、まったく動いていないように見える。近くの1000mmの望遠レンズ見ても、少し動いているようにしか見えないとのこと、300mmでとらえら得れるのはかなり近づいてからであった。
 小樽港に入港の予定は接岸歓迎式典が午前10時より。これだけが報道されていた。直前になってインディペンデンス接岸は8:30分の情報が報道されていた。実際の予定は6:45分に小樽湾沖停泊であったが、かなりの見学者が既にこれを知ていたようで、早い者はまだ暗い4時から撮影の陣取りを行っていたようだ。小樽港に入港する艦船を最初に捕らえるには小樽の西の丘、祝津が最適である。ここには報道人も含めて500人程の人手が有った。遅れて来た人には最悪の逆光であったが、逆光に浮かぶインディペンデンスを撮影出来たのは幸いであった。
 逆光状態になったので、入港の模様を撮影するために、赤井川村のキロロスキーリゾートに抜ける道の毛無峠の頂上付近展望台に向かう。入港準備に1時間はかかるだろうと踏んでいたのだが、既に空母は防波堤を越え、タグボートに引かれ勝内埠頭に向かっていた。
 沖を見ると石狩湾の中央からミサイル巡洋艦モービルベイが真っ直ぐに小樽港を目指して進んでくる。その大きさに比べて速度の早いことに驚かされる。先頭と両わき、そして後尾に護衛の艦船を従えて、一斉に右会頭した時には、3本のウェイキーが同時に曲がり艦隊行動の見事さに思わず唸る。唸ったままで写真を撮り損ねた(笑い)
 既に接岸を終えた空母インディペンデンスとミサイル巡洋艦モービルベイのツーショット。これが毛無展望台からの撮影の目的。残念ながら距離が遠く、300mmの望遠では綺麗に撮影できない。もっとも、スキャナーの調整も悪いが(笑い)。
 ふと上空を見ると航空自衛隊のブルーインパルスが歓迎飛行(な訳無いだろうが。これは千歳の基地祭で撮影したもの(陳謝))
 この後、展望台を下り、平磯公園に車をなげて、足で港を徘徊するのであった。
警戒が厳重で撮影なんか出来ないだろうと思ってカメラを車に置いてきたのだが、予想に反して空母の直前まで歩行者ならまったく自由。残念なことをした。もっとも、空母の直前でもはやこの大きさをカメラで捕らえることは無理と解る。一部分しか視野に入らない。まして、飛行甲板に積んである航空機は見えない(苦笑)。
これは、肌で感じるしか無いだろう。見たことが無い人へ伝える術が無いが、小樽札幌間の自動車専用道路が張碓を跨いでいる高架がある。これにスクリューを付けたものが空母インディペンデンスであると言ったらローカル過ぎて解らないなろうか。

97.09.11 インディペンデンス騒動を振る返る
 8月上旬の千歳の基地祭には7万人の人出がある。これに比べて2日間で29万人は多いのか少ないのか。単純に語れない。一方は毎年行われるし、今回のインディペンデンスは1回きりであろう。来年には退役する艦艇だから、別なものが来るかもしれないが。
警備にテンテコマイした風の報道が多いが、それに伴う事故、事件のトラブルが以外と少なかった。これは、小樽市側として29万人は読みスジの範疇だったのでは無いだろうか。考えてみると人口16万人程の町だが、運河観光で毎年500万人は訪れているし、夏の潮祭では3日で20万人の人出がある。
 何故、インディペンデンス見学がフィーバーしたのか。それは天候に有ったと言ったら一方的だろうか。また、港を訪れた数だけしか報道されたないが、周辺の平磯公園、毛無展望台から空母を観察した人を加えると50万人は下らないと思われる。
 小樽港の軍港化、日米有事の事前実績作り、話題が多いこの事象を、自分の目で捕らえて判断したい。まさに、情報は民主主義の糧である。多くの人が空母とはどんなものなのか触れる機会が提供された事により、より闊達な論議が出来るのではないか。
インディペンデンスの乗員に朝日新聞が反対運動をどう思うかと馬鹿な質問をしたらしいが、その返事は「自分の意思表示をする事は良いことだ」とは、模範解答過ぎるが、当然の返答だと思う。反対を押し切って入港した訳では無い。賛否両論有って良いじゃないか。それがデモクラシーなのだから。

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1997.09.11 Mint