エア・ドウ一番機を迎える

一番機到着
 12月20日(日)待望のエア・ドウの1番機が新千歳空港に到着する。もちろん、飛行機オタクとしてはこれを目にしない訳にいかない。
東京を7時30分出発なので予定どおりであれば9時頃に到着するはず。札幌を7時半に出て千歳空港に向かう。当然、GPSのテストも一緒に行う。あれやこれやの複合したドライブとなる。
 やはり1番機の到着をカメラに納めたい。そのためには、今朝の新千歳空港の滑走路の利用状況をモニターしなければならない。そのためにワイドバンドレシーバーも積み込む。到着機には「ランアウェイ ゼロ・ワン」とアナウンスしているので、南方向からのアプローチであることが解る。実はこの方向なら良い撮影ポイントがある。高度50m程で頭上を通過するポイントが空港の南側にある。残念ながら午前中は逆光になるのだけれど、今日の天気はかなり雲の濃く低い空なので逆光の影響は少ないだろう。
 雪道の運転では夏のように速度が出せない。千歳市から苫小牧市に抜けてから撮影ポイントに入るため予定の8時55分には撮影ポイントに入れない時間になってきた。
 空港を右に見ながら国道36号線を南に向かっているとワイドバンドレシーバーに「エア・ドウ」のコールサインが飛び込んで来た。苫小牧沖からファイナルアプローチに入ったようだ。飛行機は視界に入らないが、既に上空から新千歳空港に向かっているのが解る。何回か機体の写真は目にしているが、この航空無線で「エア・ドウ」のコールサインを聞いたとき、本当に『北海道の会社が航空機を運行させたのだ』と感動した。新千歳空港を右にして制限速度を1割ほど越えた速度で車を運転しながら、この第1声を自宅で録音してたほうが良かったかなと思ってしまう。
右に曲がる前に上空を着陸灯をサーチライトのように光らせてアプローチしてくる機体を発見。あの黄色い垂直尾翼は間違いなくエア・ドウのB767。
残念、撮影は間に合わなかった。

WNTってなんだ
 作戦は離陸の撮影に切り替えて、苫小牧方面から新千歳空港に向かう。レシーバーから「ウイスキー・ノーベンバー・タンゴ」のコールサイン。なんだ、この飛行機は。たまたまエア・ドゥの直後のアプローチになっているみたいで、丁度撮影ポイントを通過中に上空を過ぎて行く。なんだぁ!!、何のマークも無い真っ白な機体のB747−400。レジ番号も良く読み取れない。アジアにフェリーする機体なのだろうか。
新千歳空港の駐車場に車を停め、レシーバーの電源を切る前に「KLM」のコールサインが聞こえる。グランドからタワーにバトンタッチして離陸直前らしい。
そうだ、KLMは周2便、新千歳経由でヨーロッパ直行しているのだ。たしか、着陸が7時頃だったはず。離陸はこの時間なのだ。
氷で滑る駐車場を歩いている時にKLMがあの白地に独得の青で書かれたKLMのマークを見せて離陸して行く。あの冠のマークのKLMと肩を並べた(単に機体を並べただけかな?)航空会社エア・ドウの一番機なのだ。さらに感動が強まる。

あの、ウチワが欲しい
 空港ビルで到着歓迎会の様子を偵察に行く。少し出遅れたがデパーチャーでは搭乗客がロビーに出始めているはず。人の輪が出来ている。マスコミに混じってカメラ片手に輪に加わる。地元の商工会が歓迎の旗とハッピで福田副社長を囲み万歳三唱を始めたところ。
感激派の僕はおもわず「ご唱和」してしまった。なんか涙が出そうだった。50を過ぎた男達が顔を上気させて万歳している。さっきKLMを目にした僕は、本当の意味で「北海道国際航空」の最初の1便を祝いたい気持ちだ。
回りを見ると丸い硬紙に親指の穴を開けた、ま、ビジネスショーでは既に化石となったウチワを手にしている人々が居る。AIRDOとプリントされている。このウチワは何処で配っているのだろう。いままでのマスコミ顔を急遽オタク顔に変えて回りをキョロキョロする。
どうも、この化石のウチワが「ご搭乗記念」らしい。まさかぁぁぁぁ。航空会社の記念すべき第1便の記念品がこれ!!??
ま、経費を削って格安運賃を目指すのだからいっか。

いたいたオタク軍団
 新千歳空港には半年ぶりだろうか。福岡に出張の時に通過しているけど空港ターミナルを歩き回るのはひさしぶり。なんか3階と4階に昔のターミナルビルのNEWSが閉鎖されたたので引っ越した店舗があるらしい。
出発の写真を撮るためには送迎デッキが最適、4階で従業員風の女性に「送迎デッキ」の場所を聞く。「展望台ですか」って聞かれてあわてふためいたけれど、結局3階の奥の送迎デッキは冬期間閉鎖の看板が出ている。それは無いだろうがぁ。エア・ドウの一番機が到着するのだから、空港ビルとしても特例で開放したら良いのに。まったく、こんな所に北海道の問題点があるのですよ。脚光を浴びる者を妬むのか、はたまた無神経なのか、結果として「足引っ張り」になっている。ま、いいけど。と、実は後から解ったのだけれど、送迎デッキは開放されていて、ただし、多くのオタクがこの「冬期間閉鎖」の看板が有ったので出ようとしなかったとのこと(まったく、なんだかなぁって感じ)。
 結局3Fの窓から出発の模様を撮影することにする。撮影の基本は「待機」。9時45分に出発するエア・ドゥの撮影のために9時20分から窓際の場所を確保する。出発の直前に割り込んで写真を撮るような恥ずかしい振る舞いは私には出来ない。正統派のオタクとしては30分や1時間はジット耐えて待つのです。
千歳→東京にお父さんが搭乗する若いお母さんと2歳くらいの子供が隣の場所に来る。ピカチュー塗装のANAが飛び立つので早速子供と仲良くなる。
時刻表に出ている時間はターミナルのボーディングブリッジを離れる時間。たぶん、その10分後あたりに離陸となる。9時45分には場所取りのオタク達が集まって来る。いよいよ離陸だ。機体の左下に書かれた「一歩前に出る勇気があれば...」をカメラに納めるためには230mmの望遠では難しい。しかも窓硝子越しのアングルでは。
それでも手動巻き上げで3枚をゲット。

一歩前に出る勇気があれば、なにかがはじまる(c)airdo
 正直言ってエア・ドウはKLMと肩を並べる企業にはならない。企業としての戦略をデザインするのなら、早急に業績を上げて上場して一般への株式の公開を行った後、大手の企業に身売りするのが得策であろう。現在の大手3社と互角に立ち回る戦略を立てているとしたそれは企業とし夢を見ている。最良の戦略は「高く他社に売るための努力」になければならない。
 北海道のキャッチコピーの「試される大地」は、ありもしない夢を「見る」ことから脱却し、現実的な夢を「描く」タイミングに北海道があることの時代背景を受け止めることが出来るかどうかの問いかけであろう。北海道の気質は夢を見ている夢想家と夢を放棄している弱虫しか居ない。実際的に夢を手にするまで民度は育っていない。今回のエア・ドゥは一見、夢を現実にしたように映るが、そればかりにうかれていてはならない。
世界に互して行ける企業が育つには、まだ、数十年の歳月が必要であろう。
 一歩前に出ることにより、叩かれ、痛めつけられ、そんなら一歩前に出るより黙っていたほうが良いと思うこととの葛藤が、やがて、そのバランスが一歩前へに傾く時代がくる。がしかし、それは今では無い。まだ、体力が培われていない。
しかし、だからと言って「勇気」を捨てる必要は無い。今一度「ボーイズビーアンビシャス」の精神が何故北海道に必要であるのか、ここはエア・ドゥの1番機を迎えた今、道民があらためて考えてみる必要があるだろう。

Back
1998.12.20 Mint