北海道でケナフを育てる

はい、園芸ってジャンルも有るのです
 最近は「ガーデニング」とか言葉先行で腹立たしいのだが、実は「園芸」って言葉も好きでは無い。15年前からNHKの「趣味の園芸」のバックナンバーが本棚に並んでいる。実はわが家の我が部屋は家族から「第7サティアン」と呼ばれていた時期があり(今もそうかもしれない)、8畳間の一方の壁は本棚。ここには航空関係の本がギッシリと並んでいるのだが、加えてCQハムラジオと趣味の園芸がある。5個の本棚はそれでも足りなくて本が2重に立てられている。
 窓際には28メガ(って、MHzって単位)を筆頭に50、144、430の無線機、その無線機からコードが伸びてTNC、窓の外にはアルミサッシに取り付けた50メガの自作ダイポール(これって、弦長3mのアンテナ)が伸びている。手前には144、430共用のダイポール・アンテナ(これは、こじんまりと1m程だが)。
 警察に「この部屋でサリン作っているらしい」と通報すれば信じてしまうかも。
 ちなみに、わが家と札幌西警察署とは500m程なのだが、「手入れ」は未だに無い。
 で、趣味の園芸は5年ほど前に購読を止めた。大きな理由は高齢者に的を絞った編成になりつつ有ったから。まさに「園芸」が高齢者の趣味になってしまう様相に腹を立てたから。
 植物を育てることに「前衛的素人農家」を目指している僕には「趣味の園芸」が退廃的守旧派に見えたのだ。
世の中には評論家が多すぎる。先の「第7サティアン」の城主である僕は常に実践こそが路を開くと思っている。そのためには自分でケナフを育てて肌で知ろうと思った。で、自転車がシーズンオフになった去年(1999年)ケナフの情報を集めだした。
 インターネットで検索するとヒョーロンは多いのだけれど実践情報は少ない。やっとたどり着いた情報が新聞記事の「北海道ケナフの会」の存在。新聞記事故に連絡先まで明記されている。早速電話した。すると「お客様のお掛けになった電話番号は現在使われておりません」の無味乾燥なアナウンス。インターネットから得られる情報はまさに玉石混合。
 電話番号案内(インターネットをこのスタンダードメディアが補完してるのですよ)を利用してたどり着いたのが「北海道ケナフの会」。なんと北海道士別市にあるらしい。
 インターネットの感覚で電話する。電話口に親切そうなおじいさんが出て、説明してくれる。会員になって種を入手して、実際に育ててみたいと言うと、育て方の講義が始まる。札幌と士別の間って長距離電話だよなぁ。種を植えてから畑に移植のあたりで「すみません、これからシッカリ勉強しますから、入会方法教えて下さい」と言ってしまう。  結局、めでたく「北海道ケナフの会」の会員になり、ケナフの種と会報が送られてくるようになった。いよいよ2000年はケナフで「前衛的素人農家」の活動が始まるのだ。

ケナフ生育日記
2000/04/29 皿にティッシュを敷き、種が半分漬かるくらいに水を入れて室内(気温20度弱)で管理
2000/05/01 白い根が延びる
2000/05/03 ポット苗として3粒を仮移植、他は直に地面に植える。たぶん、気温が低すぎるだろう。ポット苗は室内で管理
2000/05/04 ポット苗の一つから二葉が頭をもたげる
2000/05/10 二葉の間から本芽が出始める。何故か発芽はするが生育は遅い
2000/05/16 二葉の発芽から生長が遅い、本芽は10日とさほど変わらない。もしかして温度不足か?
2000/05/19 二葉は日の光で開いたり閉じたり。本葉の出が遅いのが気になる。5月に入って初めて晴天が続く
2000/05/23 二葉から本葉になるのに苦労している。ひょっとして、北海道ではまだ気温が低いのか
2000/05/30 晴天が続くが、本葉一枚ってところ。この本葉も双葉より小さい。
2000/06/01 茎の生長がモヤシのようだ。本葉は小さい。水やりすると生長が遅い
2000/06/02 本葉からの生長は弱い。気温が低いのだろうか
2000/06/12 本葉が伸びはじめる。日に当てる時間を伸ばす
2000/06/15 表で終日、日にあてる。結構夜の低温が生育に影響しないかと気にかかる
2000/06/16 表で終日日にあてる。やっと生育が始まった感じ。ただし、苗の個別差が大きい
2000/06/17 フィールドテクノロジー研究所の研究農園に移植。土を盛り上げてその上に移植。雨で粘土層の土地なので根が呼吸困難にならないように工夫。
2000/06/25 生育は遅い。自宅の鉢ではそろそろ伸びるのかな? って感じ。フィールドテクノロジー研究所の研究農園では移植に成功したようだ。ただ、北海道はこの時季雨が少ない。
2000/07/10 気温が上がると生育が進む。二葉のような丸い葉が終わり、3つに分かれた八つ手のような葉が伸びている。育成中はフィールドテクノロジーも含めて6苗。
番号で管理すると
グループ1(2本)午前中日の当たる南東向きの家の横。
グループ2(1本)直径50cm程、深さ20cmの鉢植え、終日日向。土はバミキュライトを混ぜて通気性が良く乾燥気味。
グループ3(1本)路地植え、終日日向。
グループ4(2本)フィールドテクノロジー研究所に移植。土地を盛り上げて粘土質の土地から40cm程持ち上げた畝を作成し移植。
現在はグループ2が50cm程に生長中。グループ3は一番生育が遅い。がしかし、個体差のような気がする。
2000/07/18 グループ2(1本)が3つに別れた葉が5つに別れた葉に生長中。
2000/07/20 グループ1(2本)30cmを越える。3分割葉状態。
グループ4(2本)3分割葉が終わり、5分割葉が出始める(2本とも)。高さ40cm程
2000/07/22 風による影響を受ける。ケナフは根の張りが弱い植物かもしれない
2000/07/28 気温の上昇と共に生育速度が速まる。一番の伸びはグループ2が1m近い高さに生長している。既につぼみがわき芽の場所に見えている。
2000/08/05 グループ2が1.5m近い高さに生長している。グループ1、4は50cm程度。グループ3は苗からさほど生長していない。
2000/08/19 誤ってグループ4が刈り取られて研究中断。2は2mを越える。グループ1が幹の生長と葉の生長のバランスが良い。グループ2は背丈が伸びすぎの感じ。グループ3は土が硬いためか生長が悪いく30cm程。どのグループも開花には至っていない。つぼみも見えない。
2000/08/29 グループ2)2mを越える。鉢が限界なのか伸びは止まる。 グループ1)幹の太さはグループ2)より太い。背丈は1mを越える。 グループ3)は50cm弱。やはり土が硬いと生育が遅い。
2000/09/06 グループ2)2mを越える。伸びが止まったまま。 グループ1)背丈が1.5mを越える。横からの葉の伸びも多い グループ3)生育が遅い。
2000/09/15 グループ2)2mを越える。先につぼみが出始めた。
2000/09/19 グループ2)明日はつぼみが花咲くだろう。
2000/09/20 グループ2)開花。まわりが黄色で中心が紫の花が咲く。
2000/10/05 グループ1)開花。つぼみの発生は、9月15日前後か。夜の気温が15度を 下回った頃と思われる。 グループ3)背丈は70cm程だが、ここにもつぼみが見られる。 グループ2)種の確認はまだ出来ない。
2000/10/18 札幌に初雪。種はまだ回収できていない。
2000/11/16 花は11月に入っても咲いている。しかし、種が結実しない。前に「北海道では花が咲くのみ」と案内書に書いて有ったが結実に結構時間がかかるのかもしれない。
2000/11/18 積雪30cm。もう限界なので種を取り込む。この種が来春発芽するかは未定。

南国娘は北国の青い空を知らない
 「表紙の写真集」にもあるけれど、ケナフの花を目にした時に、ああ、これは南国の花だと直感した。この花が9月末から10月にかけて、更に雪が降っている11月にも次々に開花する。南の国を原生地とするケナフは短日になると花を付けるのだと思われる。
北海道の最高の季節と言えば僕は北海道の東にある北見市で学生時代を過ごしたこともあるが、オホーツク海方面の「北国の青い空」の季節、秋である。ただし、この秋は8月下旬から始まって9月末には終わる短期間のものだ。
 札幌では「秋」は何時頃だろうか。たぶん、9月始めから9月一杯だろう。この時、伸びに伸びた(なんせ2mを越える)ケナフは急に訪れた秋に驚き伸びるのを止め、花を付けるのだろう。でも、今年の例で言えば9月20日、つまり、札幌では秋が終わる頃に初めて花を咲かせた。

ケナフは夏の花? 秋の花?
 地面から照り返す強い日差しの中でケナフの花を見上げる。それが一般的なのかもしれない。5月に種を植えてからの経緯を考えてみると、北海道でケナフを育てるのはやはり至難の技かもしれない。3年くらい繰り返して、何となく「当地」での栽培のノウハウが得られるのかもしれない。
 北海道ケナフの会の広報誌によると、十勝の会員が6月当初の士別市でのケナフの会の会合で「前日に苗を畑に植えてきた」と話しているので、やはり定植は6月頃らしい。すると、5月からのポット苗はもっと大きな容器で育てるのが良いのかもしれない。
 ケナフを育てて驚いたのは7月に定植した時には30cm程の苗が8月末には2mを越えているその生長のスピードだ。それだけ「地球上の二酸化炭素を固定する」かどうか解らないが、この生長力には驚いた。
 来年は是非とも雪が降る前に種を回収できるスケジュールをものにしたいと思う。

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2000.11.13 Mint