北朝鮮拉致問題対応の説明力
様々な事が有った2002年9月
とにかく、書きたい話題は沢山有ったのだが気力が付いてこない。ま、自転車紀行が忙しかったってことも有るのだけれど「世の中もう良く解らない」って気分で萎えてしまったってのもある。
9月の月間総集編みたいになるが、今月感じた一番のショックは「高齢者の高齢者殺人が多い」ってことだろうか。普通殺人てのは「若気のいたり」みたいな事が多いのだが人生60年も生きた人が殺人なんて手段に出るのは何故かと驚くと共にショックを受けた。
日本の社会全体が何か幼児的(と言ったら幼児に失礼だが)社会になっているのではないだろうか。社会規範が何処かでタガがずれてしまった、今の日本社会は社会構造として成り立たない程に悪化したのではないか、そんな事を新聞の記事を目にしながら思っていた。もう、この集団は駄目かもしれない。
それ以外に今月気になった事と言えば、小泉純一郎首相の北朝鮮訪問、ドラマ「北の国から」最終回、民主党代表選挙後のゴタゴタ、不審船の引き上げ、複数の電力会社の原子力発電施設の「不適切な自主点検情報の扱い」とかだろうか。
「北朝鮮国交回復交渉開始と北朝鮮拉致事件」が報道の土俵にのった。政治も土俵には乗りかけているのか、乗らないのか不明だが。
どうも最初は政府専用機に拉致された人々を乗せて小泉首相が凱旋するくらいのシナリオも有りみたいな状態だったようだ。なぜそんなに楽観的な話しが出るかと言えば外務省の情報操作(隠ぺい)で誰も事前に北朝鮮から公示される情報を知らなかったってことに起因する。赤十字の地を這うような交渉結果を外務省は横取りしたのだが、その中で今回北朝鮮からの「拉致事件対象の人々の現状」は小泉首相が北朝鮮を訪れる以前に情報入手出来ていたってのは公知の事実。
それにも係わらず現地(北朝鮮)で午前中の首脳会談が終わった後に小泉純一郎首相に伝えられたのは外務省の本丸は「国交回復交渉の開始」に有ったってことだろう。何故ならば、拉致事件は警察(自治省)の仕事であり、外務省の仕事(手柄)は国交交渉に有るからだ。
まったく縦割り行政の利権争奪戦の渦の中に今回の事象はあるのだ。外務省は「国交交渉」にしか関心が無く、拉致問題には傍観者いや観客なのだ。
振り返って見ると何度も書くが、国の責任(律令国家を国民が指示する(させられる)説得力)は国交と軍事なのだ。
国交を担う外務省が「お遊び集団」のまま運営されてきたのは「ペルー大使館事件」の時で重々解ったと思う。結局、瀋陽大使館事件(マスコミは忘れているようだが)でも明らかになったように今の外務省は明治時代の鹿鳴館外交と一歩も変わってないのだ。
もはや外務省を改革出来ない行政の長である小泉は(ここから呼び捨てになる)改革なんて口先だけなんだ。
説明出来ない小泉に怒る関係者
マスコミは「金になる(視聴率を稼げる)」編集しかしないので情けないのだが、総じて報道には戸惑いが混じっている。ワケワカメなのが自己消化が出来なくて北朝鮮の取材から得られた「日本だって100万人規模で強制労働で朝鮮人を拉致した」なんて証言を流し、そのコメントは「同じ様なことを日本もやっていたんですねぇ」って感じ。
同様に小泉は北朝鮮からの「過去の清算」と「今の拉致」について返答を求められてる。それは北朝鮮からの報道で「日本が過剰に反応すると事態は好転しない」って事に現れている。さて、このディペイドをみなさんはどのように見ますか?
直接会談てのは双方の説得力の応酬でなければならない。小泉は金のサインもらいに行ったのでは無い。むしろ逆なのだ、金が小泉の「国交正常化交渉開始」のサインが欲しい状況なのだ。だから、拉致問題に対して何も言わず金の謝罪を目を丸くして聴いていたのでは何が首相なのだ。
小泉が金と話さなければならない事は
1)アメリカから「ならず者国家」と呼ばれているのは北朝鮮がテロ支援もしくはテロ国家だと国際社会が見ているから。例えば、日本人拉致事件、不審船事件がその最たるものだ。
2)大量破壊兵器の保持は外交のカードの1枚で、それだけに国威を賭けるのはやはりテロ国家と呼ばれて国際社会からは除外されるだろう。
3)国際社会と協調してこそ自国(北朝鮮)の繁栄が有るのだから国際社会と協調する道を開いて欲しい。
これが、メインだろう。拉致問題の回答書を説明されて8人死亡情報に昼飯が喉も通らないってのは小心者なのだ。
今回の北朝鮮訪問でかねてからの予想が明らかになったのは小泉はリーダたる能力に欠けるってこと。思考を整理することすら出来てない。そもそも自己の意志が無いのだろう。ブレインが居ない人間の孤独、自民党体質を国民から見えなくする薄いオブラートが小泉首相なのだ。
拉致関係家族と面談した会場の机の信じられないくらい広く距離を置いた様子は、まさに小泉のどう対処して良いか解らない醜態なのではないのだろうか。
日本だって強制連行をやったじゃないか
実はこの一点での北朝鮮や知識人とか称されるエセサヨクは言ってくるがこれは基本を間違っている。それすら今の外務省や小泉は反論できてないのは、国際ルールを知らない外務省と骨髄反射的思考回路しか持たない小泉の情けなさなのだ。そのために日本が自虐的になるのは情けない。
国家の論理ってのが有るのだ。国際社会でしっかり主張しなければならない西洋人の独善ではあるが、それは地球に沢山有る国家が同じ土俵に登るために暗黙の了解をしなければならない仕組みだ。
西欧は過去17世紀にアフリカから奴隷を輸入していたのだ。200万人を狩って船に乗せ実に3/4に当たる150万人は現地に到着する前に死亡している。同じように1910年台でもアメリカに移る中国人を乗せた船ではコレラが蔓延すると病気の中国人を生きたまま海に放り込んだりしていたのだ。そんな過去を「歴史上の不幸な出来事」と棚上げしなければ現代の外交が成り立たないのだ。暗黙の了解事項とするのが外交の前提である。
それを「心が痛む」(個人的には言っても良いが公人は言ってはならない)とか「申し訳ない(同じく、公人が謝罪する)」とか言ってはならないのだ。
「それを持ち出すのは感情論だ、過去に拘って未来を失ってはいけない」。これくらいの事を言えないのか今の日本の政治家。
日朝国交回復は未来に向かっての事項なのだ、だから、過去を棚上げしてでも未来を得ようとの毅然たる姿勢が欲しい。外務省は哲学無く縄張り意識でしか動いていないが、せめてこの哲学を持てよなぁ。
過去は方法論で解決することが出来る、でも未来は理念が無ければ構築出来ない。そんな初歩の初歩も解ってない内閣や外務省や政治家にイライラする。もしかしたら、能力無いんだろうなぁと思う。だとしたら、この国は「国家」では無いな。学級委員会でしか無い。