港湾の金網はアメリカンスタンダード
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港湾はデートコースから外された
出身が港町なので港湾での埠頭に係留された外国船を見るのが好きなのだが、最近の港湾は全て金網に囲まれて、入れる埠頭は漁港部分に限られてしまっている。なんでやねん!
だいたいあの金網はどっちに向かって設置されているのか。海から陸への攻撃に備えているのか、それとも陸から海(船舶)への攻撃に備えているのか。
サイクリングで 石狩湾新港を訪ねてはなはだ疑問になったので、疑問を持ったら調べるって鉄則の元、港湾の金網の事情ってやつを調べてきた。
その実態はテロ対策関連の国際条約なのだ。
物騒な世の中になったと思うが、国際条約の受入が貿易国日本の宿命なら、それもしょうがないだろう。ただ、岸壁で釣りを楽しむ権利を尊重するなら、単に金網で締め出しするだけではなく、海浜公園の整備に目を向けるべきだろう。
港がデートコースから外されては歌謡曲の歌詞にも困る事態となりかねない。
これが9.11以降のアメリカの船舶による貿易に対するSOLAS条約によるものなのだ。積み出し港での保安対策が求められる結果、国際港湾は出入り制限が行われる。港は共有財産ではなくなる。
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金網は外国船舶の荷下ろしを行う埠頭
全部の港を見ていないので確定的なことは言えないが、外国航路を担う船舶が入港してる時にのみ金網を締めてガードマンを付けている。函館港などでは入港が無いと金網のゲートは解放されていると言う。
石狩湾新港については週2便のコンテナー船の入港があるので、解放されていない。一度解放すると閉鎖の前に敷地内を再調査するので手間がかかり、常時閉鎖の場合も多いらしい。
実はあの金網、出航する船舶に不審物を積み込ませない船舶を守る金網だそうだ。全国一斉に行われてるので警備保障会社は仕事が増えて増えて笑いがとまらないらしい。
また、金網設置は悪名高い(僕は、的確であれば悪いことでは無いって立場だが)公共事業では無く、国費による整備で北海道は港が多いせいもあるが30億円弱の国費が投入されてる。全国ではどれくらいだろう500億円くらいか?
何故、外国航路の船舶を守るのか。このあたりは、インターネットで検索してみるとよく分かる。それ以前にマスコミが情報伝達力が落ちているのか、足で稼いだ情報では無くインタネで稼いだ情報に傾注しているからか、全貌を知るとたかだが港湾の金網なのだが、まったく別な背景が見えてくる。
改正SOLAS条約
SOLAS(ソーラス)条約は古くタイタニック号の遭難を受けて国際条約として制定された「海上における人命の安全のための国際条約」である。これが2004年7月1日に改正施行される。その主な内容は2001年9月のアメリカ同時多発テロが発端で、国際テロの阻止を目的として港湾施設の保安体制の強化義務が上げられている。
各国個別の保安体制では無く、SOLAS条約で保安基準を明示しこれを行ってる港には認定を行いうことになる。じゃぁ、認定されないとどうなるか。何が不法に積み込まれたか解らない船舶は入港を拒否するってのがアメリカ側の論理だ。だから、認定港以外からアメリカに乗り入れることが事実上出来なくなる。
どの船舶が何処の港湾に立ち寄ったかは世界レベルのデーターベースになっているので、認定されてない港に寄港したとたんに全ての認定港湾から入港拒否されてしまう。つまり認定されていない港はブラックホールで一度入港してしまうと国際船舶航路の日陰者になってしまう。だから、認定されなければ船舶にとっても港湾にとっても死活問題となる。
国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律で今回の措置を説明している。実際の各港湾の状況は
ISPS Compliant Port Facilitiesにあるが、正直言ってこの表の見方の説明が何処にも無く、良く解らない。
何故、事前に情報が流れないか
僕らしくないかもしれないが、事情は理解できる。実は港湾はそもそも立入禁止なのだ。だって釣りしてるじゃないと言われるかも知れないが、それは黙認、お目こぼしだったのだ。港湾を管理する組合に任されていた自由裁量の中で黙認されていたのだ。だから、本来の姿に戻ったとも言える。
裁量権が無くなり法律で立入禁止になったので、今後、港湾をデートスポットで金網の隙間を通って入ったりすると摘発されます。重い場合は「住居侵入」が適用されるでしょう。一般的には軽犯罪法違反で科料程度とは思われるが。それは裁判所の決めることですが。
大きな目的はアメリカへの入港拒否にあわないための措置であるのと、元々立入禁止だったのだがらあえて広報しなくても良いって感覚なんだろうなぁ。加えて、テロ対策が含まれるので、何処が規制され何処が規制されないかなんて情報は積極的に流す筋の情報でも無いだろう。
一番関心を持っているのは実は釣り人だったりする。今まで勝手に入って釣りが出来たのだが制限区域からは完全に排除される。石狩湾新港でも、あまり釣れそうに無い場所で棹を立てていた。
港湾の機能を理解してもらうための広報が不足していると言えるが、こんかいの措置は外圧であり、あまり公に外圧を認めたくない。だが港湾組合の自由裁量権が法律で規制されたのは何故かと言えば外圧であることに代わりはない。世界と貿易をしている日本だから、港湾を国際基準で保安警備する必要がある。くらいの説明は金網に貼っていても良いのではないかと思う。
今後、監視カメラ常駐の警備員なんかも整備されるので、現場に説明看板は欲しいところだ。