選挙とワールドカップサッカー予選

投票率低下を予想した評論家
 34度の福岡出張から帰ってみると、北海道は18度、あまりの温度差に目眩すら感じる。それにも増して、福岡ー>羽田ー>千歳の飛行機が「ポケモンジェット」だったのも目眩を感じる原因かもしれない。(笑い)
 出張に出ると航空機の中で週刊誌を読む機会が増える。羽田往復でも4誌、まして福岡となると機内誌全部に目を通して週刊誌評論家になれそうになる。選挙直前の記事には投票率の低下が戦後最低をさらに割り込むと評論している評論家が多数見られた。
 どうも違うと思われる。投票時間を2時間繰り延べて午後8時までにした効果が出ていると言う。コンビニに代表されるような流通革命で日曜日が休日でない層は確実に増えている。これらの層にとって不在者投票や終業後の投票の道が開けたのは遅過ぎた気がする。また、平日投票論から比べれば、投票時間延長は国民の権利の行使を保証すると思う。そもそも、平日投票は現在の居住区近郊投票の制度から、必ずしも投票をコンビニエンスにしない。
 職場の近くで自由に投票ができる制度を補償するのはかなり難しい。
 選挙の直前まで、いや、下手すると日本代表がフランスでブラジルと決勝戦を行う日と参議院選挙が重なったかもしれない7月12日。ワールドカップが掘り起こした国民感情は不況不況で下を向いて歩く横並びが、なにか変じゃないかと思わせたことだろう。
 究極のトドメは丁度1週間前の田原総一郎氏の「サンデープロジェクト」に生出演して、減税に関して煮え切らない発言を繰り返した橋本龍太郎氏のリーダーシップの無さだろう。国民は同じテレビで岡田監督も橋本龍太郎首相も見ている。どちらがリーダーとして相応しいかは、岡田監督のイメージが残っているあの時期に、より鮮明になったのだろう。それにしても、あの時の加藤幹事長の狼狽ブリ、既に「橋本は首相の玉じゃない、俺が相応しい」と見切ったように見えた。
 そもそも、田原総一郎の志向は「減税を選挙の公約にしないのは自民党の見識の高さ」と思っているのだから、有るような無いようなノラリクラリとして答弁よりも、がんとして、減税は財源問題とリンケージしなければ選挙用のアドバルーンである、とはねつければよかったのが。

やれば、できるじゃないか
 W杯で日本のファンは2つの事を知らされた。日本以外の試合も全部中継されるので、その戦いブリを見て日本の実力では世界に通用しないこと。もうひとつは、勝てない戦いでも目標を明確にし、戦いを挑み、敗れ去って辞任の形で責任を全うするシナリオから逃れられなかった岡田監督のいさぎよさ。そして、リーダーたるものが果たさなければならない責任。
 あいかわらず巷の雀は岡田監督の責任論に忙しいが、基本的に岡田監督は現場のリーダーであり、背後で責任を感じなければならない長沼会長とか、川縁Jチェアァマンにまで突っ込んだ記事は少ない。
 最大の戦犯はラモスに解説させて、アナクロニズムの大和魂で顰蹙を買い、凝りもせずに更迭された加茂前監督を次の試合の解説に起用したNHKの馬鹿さ加減だろう。これはいかにNHKがサッカー等のスポーツの世界に食い込んでいないかの証左である。また、それ以前に、加茂前監督の解説者起用にNoが出ない組織の問題である。
 三浦和義無罪判決も少し影響したと思われる。結局、マスコミに流されず、自らの情報を基に物事を判断し、行動に(投票に)向かう、これが無駄な行為ではなく、個々人が政治の仕組みに挑戦する基本的方法であることに気づかされた。
 それは、「やれば、できるんだ」と思わせた日本代表のW杯であり、岡田監督のリーダーシップであったのだ。

開票直前の各局の予想
 出口調査と言うのは、本来「投票者の秘密」を侵す恐れがあるのだが、情報としては今投票した人に聞くのだから、外れようが無い。
 開票が始まる午後8時の時点で、各局の予想は自民党39議席から59議席の間であった。一番甘いNHKでも44議席から59議席。まさに出口調査は恐ろしく正確である。
 直前の自民党の61議席責任論ってのは、なんだったんだろう(笑い)。顰蹙物で、さすがに「投票率が上がったのが敗因」と言う者は居ないが、直前の自民党の予測投票率は45%、間違っても48%までにして欲しいって感じ。国民がいかに投票場に足を運ばなくするか。これは、選挙も戦いの一種であるから、天気や神頼みでは無く作戦がたてれたはず。1週間前の橋本龍太郎首相のリーダーシップの無さが致命傷で、投票所に足を運ばせたと思う。
 考えてみると不況、不況と言っていれば責任逃れできる訳でなく、悲壮な立場でリーダーシップを発揮した人々、先の岡田監督だけでな初ゴールの中山、司令塔から転げ落ちた中田、ゴール前には居ない城、監督采配に疑問を感じるロペス、イッパツ屋の相馬、ただ早いだけの岡野、みんな責任を果たすためにフランスへ向かったのだ。その結末は望み道理では無かったが、決して、W杯を楽しんで来ますみたいな気分で出かけたのでは無い。そもそも、国の代表としてオリンピックで出発する直前に成田空港で「オリンピックを楽しんで来ます」発言を許す土壌がポストバブルの無責任体制を助長しているのだ。
 責任有る対応。これは、上に立つものに求められるリーダーシップの1要素である。
それを果たさず、自己の保身にばかりせいを出し、69なら責任問題は発生しないなんて、井の中の蛙を決め込んでいたのがわずか数日前の自民党であった。さすが、叔父が当選した亀井静香代議士も、田原総一郎の質問の切れ目に「もう、俺を解放してくれ」って泣きが出るのも、60議席あたりで丁々発止しようとしていた思惑が、44議席決定では手も足も出ない現実を悟ったからだろう。
 「うーん、日本も意外に良い国かも知れない」W杯の決勝待ちの2時〜4時の間に、そう考えた。

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1998.07.13 Mint