有事状態と戦争状態

戦争とは政治のコントロール下にあるのか
空母インディペンデンスが小樽港に入港してから2年。当時一部の報道では「動く国家空母」と表記してた。的を射た表現である。国家が国家たるには「領土、国民、主権」の3点が必要条件だが「これを守る手段」も要素として必要である。その意味で、各地で主催される「ローカル共和国(遊び)」は国家たりえないのである。
しかし、この3必要条件と1要素を具備したのが空母であるとの感覚は鋭いものがある。漫画「沈黙の艦隊」が描いている「国家」は一面で正しい。それが国家なのである。
 だが、空母個々を国家として認め、国連加入を勧め、ODEの対象としないのは、それが上部機関である所属国のコントロール下にあるためだ。
漫画「沈黙の艦隊」では、政治のコノトロールがおよばない場合の原子力潜水艦を描いている。
 本当に周辺有事の場合の法整備が遅れていることは今年正月のの朝日新聞の特集で明らかにされてきた。ただし、これは戦争をシビリアンコントロール下で実行する想定のものである。仮想敵国の不穏分子が現在でも2、500名程リストアップされているとの情報がある。これらの活動が原子力発電所テロと国境線を越えた侵略と同時多発的に発生したら、そもそも事前の取り決めである法整備で対応可能なのだろうか。「専守防衛」は軍備の整備の精神ではあるが、実際も「専守防衛」のみが戦術とはならないであろう。
「周辺有事の周辺とは何処を指すのか」なんて馬鹿な論議をしている場面もあるが、これは「身にかかる火の粉」のことである。それが、足に降り掛かろうが、頭にふりかかろうがその位置を定義するのは不可能である。同様に周辺有事の周辺を地域概念で決めるなどと言う空論を繰り返すのは無駄である。
そもそも、政治家が机上の論議に終始しているのは、戦争放棄が戦争概念の失念まで来ている真の戦争教育を行っていない日本の世界に通用しない戦争論の欠如に起因している。 いまだに、スイスは永世中立国を称して武力を求めない日本と同じ平和国家だと信じている、それも中学校の教師がいる(対面している)。スイスが永世中立の維持にどれだけ血を流しているかまるで理解していない。ウイリアムテルは子どもの頭にリンゴを乗せて、それを射た職人ではないのだよ>某教師。
戦闘状態にある非常時は、それぞれの動く国家が広義か狭義かは別にしてそれぞれの動く国家の存続を掛けて血を流している状態と言える。シビリアンコントロールの名のもとに敵の銃弾が飛び交う現場から離れた場所で、この動く国家を統制することは難しい。

村山政権時代に今の北朝鮮脅威があったら
 たぶん、自衛隊は「わしら、憲法違反じゃけん」と言って職場放棄したであろう。まず最初に当時の社会党がなさねばならなかった事が「自衛隊合憲」であったのは、国家がその条件を守る手段として自衛隊を認めなければならなかったからであろう。裏返せば、当時までの社会党には国家を守る必要性は感じていなかったと思われる。その一部が流れ込んでいる今の民主党も同様で、市民運動から上がってきた菅直人の頭の中には個々の市民運動の勝利は見えるが、大局的な国家のあるべき姿なんかは描けない人材である。
もちろん、戦争状態を想像するイマジネーションにも欠ける。
「人類の権利は、戦い勝ち得たものである」。共産党宣言の冒頭の言葉は、必ずしも共産主義に限らず、新しいものを得ようとするのみでなく、現状を維持しようとする行為も「戦い、勝ち得なければならないことを示唆している。

戦争は非常事態の認識は欲しい
 過去を現在のスケールで批判してはいけないとは良く言われる。同様に戦争を平和時の感覚で判断してはいけないのかもしれない。でも、それは出た所勝負でもまたいけない。戦争状態が異常な状態であると認識すれば、その形態は平常時に想定できないのは逆説的に真である。だから、重箱の隅をつつくような議論は徒労に終わる。全てのことが事細かく事前に決めておくのは不可能なのが戦争状態なのだから、その場面に遭遇しての精神、ここの行動の是非を判断する指針、越えてはいけない最低の事前協議、このあたりに不備がないかチェックするのが妥当であろう。
どうも市民運動出身の人間は全てがマニュアルレベルまで決着していないと気が済まないようで、これが大局感の無い些末な人間に国民に見えているのだけれど、本人は大将の器でないので、他に戦略を考えることもできない坩堝の底に居る。
 菅直人に苦言を呈する人間を菅直人自身が切り捨てている。これは、結局自分の首を絞めているのだと気が付かない。そして、社会党的階級闘争集団に利用されているのも気が付かない。ま、今の民主党では10年持たないであろう。
もちろん、戦争を指導する力も無い。その力が無いのに要求だけは一人前。これって、経営の力が無いのに要求ばかりしていた、あの社会党と同じではないのかな?

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1999.02.25 Mint