小泉純一郎首相は何故「自民党をぶっ壊せない」のか

時代は明治維新に似ている
 「明治維新」と前向きに捉えるか「幕末」と悲観的に捉えるか言葉のアヤでしか無いが、ここは前向きに「明治維新」と呼んでおこうと思う。でも、本音は「幕末」なのだけれど。
 どの程度のサイクルで社会は変わっていくのだろうか。明治維新から日本は10年毎に戦争を繰り返して1945年の「終戦」以降戦争をしていない。今でも不思議なのは8月15日を「終戦記念日」と呼ぶ文化土壌。憲法9条を盲信する人達から「敗戦記念日」で良いのではないかとの意見は出てこない。
 昨年夏のNHK「人間講座」の戦争講座で作家の野坂昭如氏は「戦後」って言葉を批判していた。「戦争は何時か無くなると考えると「戦後」かもしれないが、世界の状勢を見ると常に「戦前」なのだって意識が必要だ」(意訳)と彼は語っていた。昨年の「終戦記念日」を意識した企画だったのだが、今、アメリカのイラク攻撃を目前にしてやはり世界には「戦後」は無いのだ。常に「戦前」なのだって感覚をととぎすます必要が有る。
 3度目の挑戦で自民党総裁の椅子を得て、小泉内閣総理大臣が誕生した。その姿勢は「変人」である。前にも書いたが第二次近衛文麿内閣と同じく閉塞感にさいなまれた国民には希望を託す対象となった。だが、変人である。「小泉内閣はぁ!」とわめいていたが所詮自民党の総裁選挙で勝たなければ「小泉内閣わぁ」で無くなるのだ。そのプロセスを踏むための選挙対策として自民党に小泉首相自身がすり寄ったってのが現状だろう。
 「自民党総裁でなければ総理大臣になれない」、これって「徳川家の家系しか将軍になれない」って事と何も違いが無い。その制度を「ブッコワス!」と言いながら体制に迎合したのが今の小泉首相なのだ。
 「ブッコワス」程度が小心者なのだ。自民党が未来永劫続くと思っているからこそ自民党を「ブッコワス」ことが出来ないのだ。だが、世論は既に自民党総裁が総理大臣になるなんて仕組みにNoなのだ。
 総理大臣公選制が現在の政治の閉塞感を脱する近道なのだが、自民党的な人々にとっては自分たちの築いたピラミッドの頂点に総理大臣を担ぐ方式を壊そうとは考えていない。それを壊すと公言した小泉純一郎総理だが、結局、壊せないのは、自分が自民党のピラミッドに座っているからだと、そろそろ国民も気が付かなければならない。

小泉首相にアイデアが無いこと
 アイデアを企画と置き換えても良いだろう。小泉首相には理念を装うことしか出来てない。総理大臣なのだから個々に小言を言う必要は無いと思うが、リーダは方針を明確に提示しなければならない。その意味で「日本経済を再生させる方針」は全然聞こえてこない。それが「丸投げ」と言われる所以だ。
 とにかくビジョンを描くアイデアが小泉首相自身に無いのが最大の問題点だ。石原東京都知事はバンバン自身のアイデアを流す。実現には沢山の根回しが必要なのかもしれないが、目標を明確に示している。今の小泉首相に欠けているのが、明確な目標の提示が出来てないことだ。
 所詮、自民党って感覚を抱く。それを払拭するのは原点に戻って「自民党をブッコワス」ってことだ。それが出来ないのなら政界から去るべきだろう。小泉首相の目標は単なる天下取りだったのだ、「天下を取って日本をこうしたい」って発想は戦国の武将達には無かった。天下を取ることが唯一の目的であり目標だったのだから。小泉首相も同じである。三度の総裁選挑戦で総裁になるのが目的であり目標で、その後の事は特に考えていないのだ。
 過去にも同じ様な総理大臣を自民党は生んでいる。例えば宮沢喜一総理大臣。国会で追求されると「総理大臣なんてやってらんないな」的な顔をする。極めつけは前森首相だろう。「総理に成りたくてなった訳じゃない」と公言してはばからない。
 結局、「自己満足オリエンテッド」なのが今の自民党総裁が総理大臣になる構造だ。本来「国民オリエンテッド」な人が立法府とは別に国民に選ばれる必要があるのだ。
結局「小泉首相」ってのは日本を考えていない自己チュウ人間なのだってことを国民が気付くのを隠したパフォーマンスしてるだけなのだ。国民の意識って視点が全然無い。それが総理大臣で良いのかぁ?

自民党をブッコワス方法は有った(過去形)
 自民党が総裁を選び、これが国会で首相になる構図を断てば良いのだ。単純な話しだ。それを仮に「首相公選制」と呼べば、小泉首相はこの制度制定に全力を果たすことにより「自民党をブッコワス」ことが出来たのだ。ハードルは高いが「西欧の消費税は日本より高率」なんて言ってる前に、西欧は首相、大統領並立制度であるって利点を国民に訴え、次回は自民党総裁選を経ない首相を目指せば良かったのだ。だが、今の小泉首相は自民党総裁選挙を秋に控えて再選を目指す単なる候補者になりだがっているのだ。
 最大の政治テーマは「首相公選制」だったのだが、小泉首相は自ら困難を避け、自民党総裁を選んだのだ。これでは自民党のバック無くして総理大臣無しって制度容認なのだから、自分のバックを「ブッコワス」なんてことが出来るはずがない。出来るのなら「変人」が「○チガイ」にワンランク・アップするってことだが、その悟りは今の小泉首相には無い。

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2003.02.22 Mint