伝家の宝刀を抜けない小泉首相

衆議院解散は有っても良いが
首相の専権事項だからどうでも良いのだけれど、衆議院の解散は小泉首相の決断力のリトマス試験紙だと思う。で、結局出来ないのだろう。自身の保身なのか自民党の為なのか、今の時期の衆議院解散はいまひとつ焦点が絞り込めないのだ。自民党総としては公明党を抜きに自らの地位は語れないのだから当然公明党に有利な選挙を演出する必要がある。そのためには衆参同時選挙なんてのは避けて通らなければならない。がしかし、来年には衆議院は任期を全うするのだ。だから、自民党からすれば今年衆議院解散総選挙が無ければ来年は「衆参同時選挙」に意見が傾いてくる。それを「公明党の意向」で避ける論理を通すのは自民党総裁として難しいだろう。だとすると、先に衆議院を解散させて選挙を行い、自民党内に有る衆参同時選挙の芽を摘み取っておくのが小泉首相としては好ましだろう。自民党の為の小泉首相なのか、自分が可愛いい小泉首相なのか良く分からない状態で、結局「自分が可愛い」に傾くのが小泉首相なのだろう。だとしたら、年内解散総選挙は必須なのだが、ここに小泉首相の決断力の無さが露呈されるような気がする。
結局何も決断されずに年内はズルズルと政局がながれて行くのか? それとも公明党の意向に沿って解散総選挙に打って出るのか、どちらにしても「大儀なき選挙」の批判はまぬがれない。
確たる政策対立も無い状況で解散総選挙は打ちづらいだろう。それが公明党の要求に立脚しているのがミエミエなのだから。とすると、お得意の「何も決めない小泉純一郎」路線で流れるのかもしれない。

選挙に負けて最後の「自民党総裁」
 小選挙区制は必ずしも自民党優位に展開しない。長期低落傾向が顕著な社会党を対立軸とした時代の制度が現在に合わなくなっているのだ。小選挙区制ではとにかく有効投票の過半数を得なければ議員が誕生しない。そのために「過半数一歩手前」って状況では誰かと手を組まなければならなくなる。それが今の自民党と公明党の関係だ。全ての選挙区で5%(投票率100%換算)の得票率を持っている創価学会の組織票は「過半数一歩手前」の政党にとっておいしい組織票なのだ。まして投票率が50%近辺な昨今の選挙では実に10%もの集票力は政局全体をコントロールできるのだ。
多数決の制度を取っている限り、拮抗する2大勢力の間に挟まれて全体の数パーセントしか集票力が無くても政局を左右する力を持てる。それが小選挙区制の長所でもあり欠点でもあるのだ。
ところで、今、衆議院解散総選挙を行った場合自民党に勝ち目はあるのだろうか。僕の読みは「自民党の自滅」である。野党が手強いと言うより自民党自らが自滅していくと思う。小泉純一郎頼みの自民党は反対勢力も含めて小泉人気にあやかろうとするだろうが、国民は反対勢力を支持しない。結果自民党は単独過半数を確保できずに今の連立政権を維持しなくてはならなくなる。がしかし、いくら組織票があるとはいえ、公明党も自民党との選挙協力では議席数は増えない。結局過半数を組織するには小沢一郎の自由党の抱き込みが必要になってくる。
先の少数政党がキャスティングボードを担う構造だ。
で、自由党の小沢一郎は公明党が嫌いだから、合流話は霧散するだろう。で、選挙後の首班指名投票の構造は、過半数を取れない自民党連合と民主党連合。ここで公明党は手のひらを返して民主党側に付く。小沢一郎は「とにかく政権が変わらなくては何も始まらない」ってことで一過性の「数の論理」を受入。そして、政権交代が起こる。
そんなシナリオにならないために決め手に欠く小泉政権はダラダラと任期満了まで衆議院を解散しないだろう。あと半年は選挙対策に終始することで政治家は忙しくなるだろう。もはや天下国家を語っていては票にむすびつかないと選挙対策一辺倒に陥る。

解散権を使ってみるのも手
 必ずしも自民党に拘らない「小泉党」で行ってみる手はある。「抵抗勢力だなんだでは無くて、この小泉の改革路線を支えてくれる人が国会に終結しなければ日本の明日は無い」なんて方向で超党派の小泉党に打って出る選挙戦を仕掛ける手は有ると思う。
それが有るか無いかなのだが、9月20日の総裁選挙、ま、これは小泉再選って事で落ち着くだろうが、その後の内閣改造での竹中氏の扱いだろう。小泉首相が竹中続投のカードを引いた時に、、今までの「自民党的な」部分が完全否定されたことになるのだ。それでなくても先の最初の組閣では「これが小泉流、自民党も解ってないね」と豪語した、あの派閥からの推薦リストを鼻で笑って捨ててしまったこと。
小泉首相は組閣は総理大臣の専権事項ってことを結果で示している。だとすると、総裁再選で内閣改造を行うときに、どれほど小泉流を前面に出すかによって、小泉首相の考えが見えてくる。竹中続投なら「小泉党」志向なのだ。竹中更迭なら「自民党的な」小泉首相なのだ。

株価高騰で竹中続投はやりやすく
 古い言葉だが「エコノミックアニマル」ってことで日本の株価が東証で1万円を越えようとしている。これは二つの局面の結果だと思う。一つはアメリカ大統領選挙をの中間選挙を控えてアメリカのユダヤ勢力が株価高騰を迫った結果。もう一つはイラク侵攻(と呼んでも良いかどうか考慮中なのだが)の結果アメリカの武器の在庫一掃セールが終わったってこと。
 日本の経済が生産性向上により好転した訳では無い。どちらかと言うと金融機関の不良債券処理はまだ数年を要する。にも関わらず株価がここ数週間で急激に上昇しているのはアメリカの大統領選挙の中間年に向けてのブッシュの大盤振る舞いなのだ。そのおこぼれが日本にも流れているだけなのだ。だから、「竹中政策の勝利」なんてのはとんでも無い誤解なのだが、これが小泉首相にとっては渡りに船。総裁選挙で「私は2、3年は苦しみが有ると言ったが、経済は再生しつつ有る」と言えば誰も反論しないだろう。それが、ブッシュのユダヤ勢力との取り引きの「おこぼれ」なんて誰も言わない。
 日米首脳会談ってのは、ここまで腹を割って話しているのだろうか。ブッシュは在庫一掃セールで経済として新しい「ニューデール政策」をやっているのだ。それに踊っている日本の株価高騰が竹中擁護に結び付くのは「人生はタイミングや」って意見にうなずくしかない。

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2003.07.08 Mint