駆け込みの市町村合併協議会が増えた7月

組織は一人歩きするってことか
 北海道の市町村合併情報はここにある
7月末に向けて駆け込みの任意協議会が多く組織された。また、情報開示の観点からホームページにて広報する任意協議会も多い(その内容はともかくとして)。秋までに議会の議決を持って任意協議会を立ち上げないとスケージュールが詰まってしまうので7月の駆け込みが多いのだろう。
 しかし、その広報はいい加減だ。「合併ありきでは無い」と公言する任意協議会組織が多い。これが「議論が煮詰まっていない」証左だろう。合併を検討する組織が「合併ありきでは無い」と公言するのも無理な話で、せめて「合併した場合のビジョンを描く」とか合併に前向きな組織であることを標榜しなくては組織の指揮にもかかわるだろう。
 「議論が煮詰まっていない」のは何故かと言えば、任意協議会の前の庁内検討委員会や複数市町村との協同研究会が手抜きだったのだ。トップ会談で研究会を始めても下は適当に手を抜いていたのだ。それを見破れなくてトップが「次は組織作りだ」と号令を出すものだから「議論が煮詰まっていない」にも関わらず任意協議会がボコボコ出来てしまったのだ。
 議会対策で「合併ありきでは無い」と言って決済を貰っているのだろう。そもそも、議会が議論するだけの資料の提示も出来なければ、議会も決議するだけの見識も無い。ただ、そろそろ時間が迫ってますってんで協議会が発足している。

ニセコ、倶知安の例はおもしろい
 2町に加えて京極町との3町で勉強会を重ねていたが、京極町が合併せずに傾いてニセコと倶知安で法定協議会を立ち上げようとした。このあたり北海道庁出身の倶知安町長と全国着目度の高いニセコ町長のタッグチームで進めている(ある意味頭に「強引に」と付けても良いかもしれない)。
 そこに蘭越町が触手を動かしたために、両議会では8月1日法定協議会設立の決議を見送った。このあたりの議会と組長の綱引きはおもしろい。北海道庁の「重点地域」指定のタイムリミットを意識するあまり倶知安町長からは「何時までもダタダラ伸ばしてはいられない」との苛立ちの声も聞かれる。
また、国は合併特例期限を延ばすのでは無いか、としたらあわてて協議会を立ち上げる必要も無いって観測も有る。ニセコ町長がラジオで『国が情報を出さないから判断できない』と高橋はるみ知事に噛みつくのも解る。国は「まず合併ありき」の姿勢で、制度は後から付いてくる状況なのだから。

協議会を作れば独自予算で動ける
 ま、効率の悪い組織に予算を付けてもコストパフォーマンスが上がるとも思えないが、少なくとも独自予算で先進事例調査とかの出張とかパートを雇うとか事務所を構えるとか出来るようになる。協議会の分科会で集まる職員に手当も出せる。そんな所が目的じゃないのかな。
 しかも協議会で議論するのは「水道料金をどうする」、「介護保険料金をどうする」、「病院の医師の給料をどうする」、「職員の給与はどうする」てな「事務処理」なのだ。役人に地域の発展のデッサンをすれと言っても無理なので所詮「すれあわせ」だけ、それも議会で決済する基礎資料の取りまとめだけで終わる。
 さぁ、協議会で出た結論です、住民の方は合併に賛成ですか、反対ですか。と問われる住民もたまったものでは無い。誰も責任を持たないまま「合併ありき」の作文を見せられて「やれやれな役場だなぁ」ってので終わりだろう。結局住民参加型で物事は進まないのだ。

住民参加型の合併協議会運営
 一番に言えるのは合併の目的を明確にすることだろう。上意下達のように「合併ありき」では無くて、合併により豊かな地域になれる説得力だろう。唯一「適正規模」ってのが考えられるが、これは北海道の場合地域面積が全国平均とは比較にならないほど広いので、単に学者の作ったものだけでは説得力が無い。そもそも「役所の人員の目安が住民100人に1人」ってのも北海道の実状に合うのだろうか。
 分散して住むのでは無く集約して住むのが効率が良い。中国の経済発展の中で地方中核都市がじゃんじゃん出来ている。
経済の発展に都市集約が効率的なのは戦後の日本でも実証されている。実は地方都市も住宅地を集約させることにより経済効率が良くなる。そのために、酪農や畑作の現地には農業機械のセンターを作りここに通勤する農業を計画すれば良い。親父の4000円/時の働きで家族が食べていくのだから個々の農家が、農地に張り付くように分散するのでは無く、市街地に集まり(これは賃貸住宅でも良い)現在の住宅はグワインガルテンのように農繁期を中心に使う(もちろん、冬期間の維持管理事業も行う)そんなデッサンを描いて、家族には都会の利便性を与えるような町づくりが広域合併なら出来るのではないか。
 また、各種施設の共有化が計りやすいように公共交通機関網の見直しも必要だ。高齢者に必要な医療、福祉も施設型のみではなく中間型も市街地に作れば良い。合併した後の住民利便性の向上する町づくりを提示出来てこそ「合併協議会」ではないのか。
 このあたりの視点が欠けた駆け込みの「任意協議会設立」は早晩破綻する。

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2003.07.31 Mint