小泉純一郎内閣の顔ぶれから姿勢を読む

若手起用で反対勢力を肩すかし
 安倍晋三氏の幹事長起用で安倍氏の国務大臣は無くなった。となると注目のポストは外務大臣と財務大臣。竹中平蔵氏を留任させるかどうか。あとは福田康夫氏を切るのか続投させるのか、このあたりが組閣の注目点だろうか。
 結果発表になった顔ぶれは以下のとうり。
役 職 氏  名 年齢 続投
総理小泉 純一郎61
総務麻生 太郎63 
法務野沢 太三70 
外務川口 順子62
財務谷垣 禎一58 
文部科学河村 建夫60 
厚生労働坂口 力69
農林水産亀井 善之67
経済産業中川 昭一50 
国土交通石原 伸晃46 
環境小池 百合子51 
官房・男女共同参画福田 康夫67 
国家公安・食品安全小野 清子67 
防衛庁長官石破 茂46
沖縄・北方・科学技術
・個人情報保護・情報通信技術
茂木 敏充47 
金融・経済財政竹中 平蔵52
行政改革金子 一義60 
防災・有事法制井上 喜一71 
 先に安倍晋三外務大臣も有ると書いたが、幹事長に就任すると外務大臣の適任者は見つからない。そもそも外務省が抱える一番大きな課題は北朝鮮拉致事件で福田康夫氏と外務省の田中均氏が作った北朝鮮ルート。これを小泉首相の訪朝に随行し、その後の交渉で拉致された5名を日本に戻し(名目は一時帰国)、この5名を帰さないと決めた安倍晋三氏が外務大臣では外務省に反発が激しいだろう。かと言って福田康夫氏を外務大臣にあてたのでは元の黙阿弥に戻る。
 高村氏の目が無いではなかったが安倍・高村ラインで強行突破をはかっても北朝鮮問題は進展しないだろう。その意味で川口順子氏続投は無難な選択肢かもしれない。橋本派は北朝鮮側に近く、ここから外務大臣を出す訳にもいかないだろう。
 顔ぶれを見ると「毒まんじゅう」は無かったと言わざるを得ない。このためか野中ひろむ氏は「山崎拓を副総裁なんてとんでも無い」と対決姿勢の方向をこちら側にしている。
山崎氏を副総理に持ち上げて双方丸く収まる解決策を考えたのは誰かって興味がわくが、ヒントは「釣り馬鹿日誌」。ここに漁労長がガンと思いこんだ佐々木課長兼役員にほだされて役員会で反旗を翻した時に最後は漁労長を副社長にして矛を収めた鈴木社長のウルトラ技と同じなのだ。
 中川昭一氏を経済産業省に持ってくる人事も首を傾げたくなるのだが、メンバの顔ぶれを良く見ると江藤・亀井派への配慮が散見される。河村建夫氏、中川昭一氏、小野清子氏の出身母体が江藤・亀井派だ。橋本派からは留任を除くと茂木敏充氏のみ、全体でも石破茂氏と合わせて2名である。
 中川昭一氏は農水大臣の経験があるが、ここのポストは更迭で変わったばっかり、そこで平沼氏の後がまに滑り込ませたのではないだろうか。

麻生氏は地雷ではないか
 「創氏改名」をめぐって野中ひろむ氏の逆鱗に触れた麻生太郎氏を総務省、つまり郵政族の巣に送り込むのはいかがなものかと思う。反対勢力に格好の的を与えているのだ。どこか配慮に欠ける麻生氏が誘導尋問で墓穴を掘る公算は高い。どちらかと言うと攻めやすいタイプの人間だ。
 この内閣を与野党の別無く攻める側から見ると、麻生氏の首を狙うのが投資対効果が高い。総務省の官僚も郵政族の息がかかってるのだから。郵政民営化反対に向けて敵は麻生氏となるだろう。彼がそれを耐えてはね除けられるか疑わしい。
 全体にいわゆるタカ派が増えた今回の組閣の中で野中ひろむ氏を筆頭に橋本派は中国・北朝鮮の海外からの攻撃を仕組むことが出来る。もはや中から崩すことが出来ないと悟ると、外の勢力を利用して崩そうとする。これは江戸時代末期から明治に向けての戦略と同じなのだ。しかも、安倍晋三幹事長は長州っぽなのだ。人間は100年や200年では変わらない。中国・北朝鮮への不用意な発言が麻生氏や小泉内閣の命取りにならないように配慮しなければならないが、麻生氏はこの面でヘマをするような気がする。

石原伸晃氏の最初の仕事は藤井総裁切り
 先に扇千景氏が汚職を恐れて誰もなり手が無かった国土交通省のポストを与えられ「貧乏くじを引いた」なんて言っていた時代と大きく変わっている。道路公団民営化に向けて土建と関係の無い石原伸晃氏を持ってきたのだろう。最初の仕事は藤井総裁の更迭だろうか。とにかく、改革を進めるってポーズをアピールするために、若手の起用が目立つ。これは若手議員を囲い込み、味方にするとともに、若手に抵抗する古い層のイメージダウンを計り、選挙で落としてしまう効果も発揮する。
 若手起用しか打開策が無い現在の自民党、しかし若手起用が裏目に出ると派閥の順送りでは無くて活躍できるのなら何も自民党に席を置かなく他ってやりたいことは出来るって意識に若手がなる。つまり若手中心編成の自民党は政界再編成に片足踏み込んだ自民党でも有るのだ。
 先に麻生太郎氏は攻めやすいと言ったのと同じように小沢一郎氏から見たら若手中心で古株は勢いがない自民党を自勢力に巻き込むことはさほど難しくないだろう。それほどに若手中心の布陣は、派閥の結束力も消滅させ党の拘束力も消滅させてしまうのだ。
 また、小泉流では今後3年間新たな国務大臣は出ないのだ。たとえ解散総選挙が有ったとして、当選して国会に戻ってきても下手すると自分の任期中に内閣改造は無いかもしれない。となると、はじめから大臣の目は無いのだ。その中で選挙後に派閥が保てるだろうか。無派閥が劇的に増えるのではないだろうか。
 過去、40歳代で自民党の幹事長を務めたのは田中角栄、小沢一郎、そして安倍晋三だ。田中氏には利権と金、小沢氏には金丸って後ろ盾が有った、今回、安倍晋三氏には何も無い。どちらかと言うと未知数な脆弱内閣なのだ。野党も勢いづくが、自民党内の反対勢力も勢い付くのではないだろうか。 

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2003.09.22 Mint