経済>デフレスパイラルは品質で克服

役人の定見の無さ
 悪口に聞こえるので書きたくないのだが札幌市の進める「ITマイスター制度」ってのが有る。最近この成果を売り込む人と付き合いが出来てしまったのが不幸(僕の不幸? 相手の不幸?)の始まり。札幌市はjavaセンターなるものに異常に力を入れている。先のマイスターもjava関連なのだ。だが、札幌で聞くjavaの話しは悲惨を通り越して「javaさえ無ければぁぁぁ、ガク!」って死屍塁類の状態なのだ。一例を上げると4000万円で請け負った仕事が完成までに2億円かかり、不良債権野積み状態に陥ったソフトハウスとか、大手企業(ま、Iで始まる企業だが)との口座が出来ればと参画したが契約履行にはかなりの持ち出しを強いられたとか、良い話しは聞かない。
 これに何故札幌市が入れ込んでいるのかと言えば、それしか知らないからなのだ。しかも教育を任せる企業の見積が高かったので自分達でカリキュラムを作って「経費削減した」って何が目的か良く解らなくなっている。素人を100人集めてもゼロなのだ、それが技術の社会なのだが、役所には技術は理解できないらしい。
javaに限って言えば、これは「情報」が有っての効率の良い言語なのだ。javaライブラリーが共有できる環境でjavaは進化するのだ。そのライブラリーの事も解らないでjavaに飛びついて4000万円が2億円の持ち出し構図になるのは技術が解ってない札幌のソフトハウスの実情を知る良いケーススタディだろう。そしてjavaセンターがこれからのIT化の本命みたいに広報する札幌市は札幌のITを壊す事業を税金で行っている「とんでももの」なのだ。
 正直言って僕は、技術は役人に解らないのだから役人は先端技術は外部に任せ底辺拡充を考えろって何回も機会有る毎に言っているのだが、「先端技術の実績」って飴に踊る役人が多い。そもそも国民の税金で千三つの先端技術踊りをしている程役人に余裕は無いと僕は言いたい。基礎学力の向上こそが税金を使って行われるべきなのだ。そして、その効率を高める方法を研究するのが公務員の責務ではないだろうか。一部の企業を利するのみの先端技術(そこは死屍塁塁の世界だが)は地方自治体の政策にはそぐわないのだ。

以外と「高品質」は簡単
 デフレの要因に中国の国際化がある。誰でも作れる物は生産原価が低く市場価格が安いほうがシェアを獲得出来るのだから中国製品を筆頭に人件費の安い国の製品が市場を席巻するのは必然だ。しかし、「誰でも作れる」の中に潜む「品質」に着目したい。
 かつて同じ様な時代が有った。電卓戦争で国内で価格競争を展開し、半導体メーカーの代理戦争と化したカシオとシャープの戦争は、結局、アメリカに数年遅れていた日本の半導体産業を世界に羽ばたかせた。売れるICを作るのが半導体産業なのだと事業としての半導体産業を実証したのだ。
ところがアメリカは生産技術を東南アジアに持ち込み、価格競争を仕掛けてきた。日本の半導体と同等のものが10分の1の価格で生産されるのだ。これでは日本の企業は太刀打ち出来ない。人件費を含めて東南アジアの国々と価格競争することが無謀なのだ。結局日本の企業は自動化推進によって人件費を必要としない生産行程を模索することになる。
 で、結果として日本の半導体産業は品質で東南アジアの安い半導体に勝利したのだ。安くても故障しては困るのだ。当時の東南アジアの半導体は欠品率分製品を上乗せして「欠陥率が5パーセントなので100個の注文でしたので105個納めます」と大目に入れときましたって感覚だったのだ、欠品を捜すのは提供者であるメーカーの仕事と割り切って「低価格」だったのだ。
 考えてみると市場のニーズは低価格もあるが、やはり高品質の面も有ると思う。今のデフレの時代に生産者は品質にコダワルべきだと思う。物が売れないとか受注が得られないとかの前に「売ってる商品は高品質か」て問いかけをしてみると良いと思う。そこに解決のヒントがあるのだ。
 で、先の話しと何処が関係するかと言えば、誰も追随出来ない最先端の技術はやがて誰かが追いついてくるか、自らの時代の変遷に取り残されて自滅していくってこと。話していると、どうも役人は技術を「公務員試験」のイメージで捉えているようなのだ。「技術者が不足しているから養成しなければならない」って言葉の裏には養成すれば不足が補えるって単細胞発想しか無いのだ。
実は、IT関連のコンピュータ技術は、現役技術者でありながら技術の変遷に付いて行けず落ちこぼれる人間が多いので「技術者不足」しているのだ。システム開発能力はそのプロジェクト運営能力は高いのにクラサバ(クライアント&サーバー)システム技術に弱いために仕事が無い中堅技術者。これを切ってきたので「技術者不足」になってる現状を役人は理解していない。
「再教育」が「技術者不足」への対応のキーワードなのだが、役所ってのは役人同士が解る言葉でしか予算が付かないようで、実情が届かないようだ。それが、先の話しだ。

製造業は品質で勝たなければ
 廉価、安売りは流通の世界の話しだ、製造業は流通と違い作る力が重視される。そこで生産する商品がどれほど独占的で画期的なのかが問われる。先端的で無い多くの企業はここで萎えてしまう。でも、孫氏の兵法では無いが、敵(中国製品)を知る行動を行っているのか。敵の弱点は「品質」なのだと解る経営者がどれほど居るのだろうか。
 誰でも作れる製品(商品)は誰かが作るのだ。でも、その品質は「悪かろう安かろう」って日本の工業社会の30年前の歴史のコピーなのだ。
 低価格に頭を悩ます経営者は駄目なのだ。自身の生産する「商品」の付加価値は価格では無くて品質なのだと解らなければならない。そして、営業も含めて自社の資源は何かってことを考えた経営者が勝利できるのだ。解った会社は少数なのだが。
 「手の打ちようが無い」のでは無い。身近にヒントは有る。それは「高品質」がキーワードなのだ。製造業に限らない、個々の社員の行動規範にも通じるのだ、昔はこれをCS(カスタマー、サティスファクション)とかヒョーロン家は言っていたが、僕は分かりやすく「高品質」と呼びたい。
単純なのだ、今の時代は価格破壊、デフレなのだ。この時代の変遷に生き残るには同じ土俵で「価格破壊」するのでは無く個々の社員が「高品質」に向けて努力する会社を目指すことだ。
「リストラ」のキーワードで社員を減らして経常利益を確保する経営はアメリカ的な経営(株主優先)なのだが、日本は過去にアメリカのQCを日本流にアレンジした実績を元に、リストラを言葉通りリストラクチャリング(戦略の再構築)と捉え、新たな経営戦略を打ち出すのが経営者の責務だろう。
人件費削減、ひいては経費削減で利益確保、って経営方針は何処か破綻しているのだ。経営は攻めでなければならない。守りになってリストラした大企業は10年先にその代償を払わざるを得ないだろう。
キーワードは単純だ「高品質な...」を自社で実現出来るかどうかだ。

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2003.04.07 Mint