観光が政策になる官僚支配のおそまつ

ビジット・ジャパン・キャンペーン
 ま、クイズ・ヘキサゴンで「丸の内OL、正解率10%」あたりの言葉だろうこれは。
何故か急に政府は「日本を訪れる観光客を1000万人にしよう」などと叫びはじめている。どう考えても唐突なのだ。工業立国だった日本の成長過程の先には観光が有るなんて説得力ある理論は全然無い。半年ほど前に小泉純一郎首相が「日本人は観光で1000万人国外に行く、だから同数の観光客を日本に向かえ入れれる策が必要だ」なんて言っていた。
 人間の知識って積み重ならないなぁと思う。かの成田空港反対運動に対して政府側評論家は反対派の「外国に行く人間の80%は観光なんだ。遊びのために先祖からの土地を提供する気は無い」って意見に「観光ビザでビジネスしてる今の日本の国際化を知らない」と痛切に批判したのだ。実は、そのデータは正しかったのだ。
 1000万人が観光で外国に行っているって前提事体がどうにも数字的根拠があやふやなのだ。それを論拠して「ビジット・ジャパン・キャンペーン」は無いだろう。何故、こんな取って付けたような政策が日本に有るのだ。観光は国民の税金を使う話でも無いだろう。国の施策では無くて姿勢程度に留めるべきなのだが、にも関わらず何故「ビジット・ジャパン・キャンペーン」なのだ。
 各地の「観光協会」が思考力ゼロなのが、この施策に何も発言しない現状から見えてくる。これは「官僚が開拓する新しい生存権」なのだ。それを政策にする小泉純一郎首相の「お里が知れる」って話がビジット・ジャパン・キャンペーンなのだ。
国民不在の行政(僕は国民不在の立法府は国民の責任だと思うが、国民不在の行政府は立法府(国会議員)の責任と考える側に居る)の典型ではないか。観光に税金を使うのは旧来から問題視されていた官僚の天下りの流れを国民の税金を使って用意する制度と何も変わらないのだ。
 日本を観光立国する方針は何となく解る。が、そのために税金を積極的に投入する のは何処かおかしい。「地方で出来ることは地方で」って視点に立脚すれば「観光」は地方の課題なのだ。でも、国(官僚)が手を伸ばしてくる現実を容認する小泉純一郎内閣には疑問を感じる。

「パーキンソンの法則」を考える国民性が無いのでは?
 結論を先に言っておこう。官僚は日本がどうなろうと良いのだ、官僚とは自分の天下り先を一生懸命作っている民族なのだ。「パーキンソンの法則」で言われているように「役人の自己増殖」は金言なのだ。それを誰も止められない現在の日本の行政制度は「改革」の対象にしなければいけない。それが国民本位の行政なのだが、そもそも行政が自らを律する訳も無く、歯止めの効かない「役人天国」に向けての超特急をさすがの変人小泉純一郎も止められはしない。
そして、新しい利権を求めて役人は活躍している。それが「観光」なのだ。
 世界の多くの国に「観光局」がある。積極的な観光立国を目指してインタネでも日本語のホームページを用意している。その内容を見ると機能としては日本の環境省とあまり変わらない。そもそも、環境省を作った経緯とその活動と成果を総括しなければならないのだが、それは今の自民党ではどうでも良いらしい。そもそも「環境省」ってのはどうでも良い裏小路の省庁なのだ。昔の通産省と厚生省の寄せ集めで始まったのだから。
 で、このあまり仕事してない環境省とは別途に「観光局」を作る動きが「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を利用した役人の仕掛けなのだ。とんでも無い「観光」は行政が手を出す領域では無いのだ。

観光産業とはどのような産業なのか
 ここを的確に捉えてから議論なのだが、業界団体の支援が欲しくて役人は様々な団体に首を突っ込む。このあたりも「役人の自己増殖のための縦割り制度」が巧みに利用されている。
 観光地の宿泊施設は「旅館業法」で厚生労働省の所轄。観光地までの足は国土交通省の所轄。宿泊施設で酒を飲むと国税庁(財務省)の管轄。車を運転するには警察庁の管轄。
 観光を行政が語るには自身が築いた利権が最大のネックになるのだ。「縦割りで分割されていて産業を育成出来ないから観光庁を作るのだ」って論理に展開するつもりかもしれないが、基本的に見向きもしなかった「観光」に利権と雇用を求めて暗躍してるのが実態だろう。
 そもそも、観光とは何か。それをまず国民や住民に提起しなければならないのだが、役人ってのはそこをあいまいにして国民の税金を投入する。企画無くて予算消化の新分野って民間では考えられないのだが、役人には予算制度の問題もあるが単年度の「今」しか無くて、「先行投資」って考えも無い。だから、付いた予算を消化する行政と、予算を付けたい行政の自作自演が戦後60年も繰り返されたのだ。
 観光産業とは何か。それは地域の自然風景に加えて地域に住む人々の作ってきた文化が他地域に開放されることである。先に観光ありきでは無く、しっかりとした地域文化が有って、それを開放するのが観光産業なのだ。だから、一過性の観光産業育成策は駄目で、観光産業の下地の有無調査あたりから始める必要がある。

宿泊施設作って観光事業なんてのは止め
 旧通産省の競輪の税金で整備した「サイクリングターミナル施設」が全国に有る。周りにサイクリングロードが無いのに宿泊施設として存在する。何に使われているか不明だが倉庫には50台以上の自転車(それも、ほとんどがMTB)が保管されている。僕の知っているだけでも夕張市、猿払村、阿寒町なんかの施設は頻繁に利用されてるとは思えない。
 そもそも、夏に多くのサイクリストが北海道を走るが、その旅行記に「サイクリングターミナルを利用した」ってのは出てこない。圧倒的に「道の駅を利用した」なのだ。何を目的にサイクリングターミナルを作ったのか、そこには「利用者の視点」が欠けているのだ。
 予算消化と会計検査に目が行っている役人に、利用者の視点が必要なサービス業は出来ないのだ。出来ないことをやろうとするから効率が悪い。結局、税金の無駄使いに陥る。過去の年金事業のグリーンピア事業に見られるように、切り口は何であれゼネコンの救済事業にならないように役所の「観光推進」を市民が監視する必要がある。

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2003.11.23 Mint