中華航空、沖縄那覇空港で駐機後に炎上

You-Tubeから「引用」
 沖縄の那覇空港で着陸後駐機場に停止すると同時にエンジンから出火。燃料漏れが原因で駐機場に流れ出た燃料が機体を包み込み込む。発火した右エンジン(第2エンジン)から流れ出た炎の海で左エンジン(第1エンジン)が爆発。
 この僅かな時間に乗客乗員合わせて161人が自力脱出に成功。残された乗員4名も消防隊に救出された合計165人が全員無事の奇跡の脱出行だった。
インタネのニュースで判る範囲で時系列に事象を追ってみよう。日付はいずれも2007年8月20日
10:27 那覇空港着陸(接地)
    前から7列目の右側の乗客が右エンジンから黒い煙を見る
10:32 駐機場に到着
    燃料漏れを地上整備員が機長に連絡(たぶん、インターホン)
    初期消火に消火器を使う。右エンジン下は火炎。
    乗客の脱出開始
10:34 乗客(157名)の脱出完了
10:35 右第2エンジンの大規模な爆発
10:38 不明機体の胴体後部が折れて接地。
    操縦席右側窓から副操縦士脱出(胴体が折れる衝撃で転落)
    その後操縦士脱出
10:38 化学消防車到着。風上から消化剤を放出
10:43 首相官邸の危機管理センターに官邸連絡室を設置
10:47 那覇西消防署現場到着
    客室乗務員が取り残されてるとの情報で機内に三度突入。
11:37 鎮火

事故原因よりも大事に至らなかった奇跡の要因
 事故原因の解明はこれから進むでしょうが、ここは機体炎上って事態で無事に生還出来た理由を考えて見ます。別な事故原因でも起こりうる事態なので、その事態に備える考察を加えてみます。
 最初のニュース速報で中華航空側から「タラップを付けた直後だった」とのニュースが流れました。実は旅客機のドアの構造ではタラップを付ける場合にはドアモードを「マニュアル」にします。通常飛行(乗客が搭乗してから降りるまで)中はオートマチィックポジションにします。これは、ドアを開けたら非常用のシュータが自動的に膨れて脱出用のスロープになります。
 タラップを付けてシューターが膨らんでは困りますから、通常着陸後はオートからマニュアルに切り替えます。これは機種にもよりますがアテンダントが手動で行う機種も多く、航空機搭乗時にコックピットから「客室乗務員はドアモードをオートにしてください」とか「マニュアルにしてください」と指示アナウンスが流れることがあります。
 B736-800にはドアが非常用を含めて8箇所あります。機体前方に左右2箇所、主翼の上に左右2箇所づつ4箇所、機体後方に左右2箇所。今回脱出に使われたドアは確認されているだけで左の前方と後方、加えて右の前方です。右後方インタネでは確認できません。また、主翼上のドアは炎にさらされて使用されていません。
 航空機の脱出には国際的設計ルールがあって、全ての乗客が90秒以内に脱出できるように通路間隔やドア数を設計する必要があります。
 先のタイムテーブルを見ていただくと分刻みですが、2分で乗客は脱出完了しているのが判ります(詳細は事故調査委員会が出してくるでしょうが)。
 問題は炎が出ていると知らされてから2分後に脱出を完了してる点です。しかもドアモードがオートの状態で。
ここに第一の幸運があったと思います。
1)ドアモードがまだオートのままであった。
考えられるのはタラップが近づいてくるので前方左のみマニュアルにしたのかもしれませんが、咄嗟にオートに戻してドアを開けています。中華航空の会社の体質としても各ドア担当のアテンダントが非常に優秀とは考えられません。訓練のような金にならない事に投資しない体質があります。
慌ててドアを開いたら偶然オートモードだったので脱出のシュータが膨らんだ。が幸運を招きますした。

地上の風が幸運をもたらした
 これは災害を拡大したとの説を唱える人も居ると思います。事故当時現場の駐機場は風速4m程度の風が吹いていました。駐機した期待の右から左に向けてです。
発火が右第2エンジンですから炎は機体に向かって流れます。また、機体の下ではトンネルのように炎が吹きぬけるスペースが出来ます。これが機体の炎上を加速したと考えられます。
しかし、この風が逆の場合は別ですが機体の前後方向に吹いてたら使える脱出シュータは限られ、尚且つ地上に降り立っても炎に包まれる可能性があったのです。機体の前後まで炎が進まない幸運が地上の風の方向にありました。
 また、貴重な写真ですが、朝日新聞に掲載された
『機体が炎に包まれる中、脱出シュートで避難する乗客ら=20日午前10時34分、那覇空港で、乗客の大学教員撮影』
は、前方左のドアから脱出した直後の写真です。この写真で機体中心部に燃料が流れ出ているのが読み取れます。風によってしたたる燃料も機体左側に流れていったのです。この写真からは後部左のドアが使われたかどうか判読できません。ただ、動画を見ると煙が胴体を包んで右側後部に流れているので、使われなかった公算が大です。

本来の半分のドアで全員脱出完了の不思議
 話は少し戻ります。タイムテーブルでは2分で出火に気がつき乗客全員の脱出完了となっています。通常の半分のドアで満席の乗客を曲がりなりにも2分で出せた。
一つには乗客がタラップが近づいて(接続はされてなかったと思う)シートベルトを外して席を立っていた。つまり、降りる準備をしていたことがあります。また、機体は通常の状態で車輪が折れたり傾いたりはしていません。もちろんこの時点では乗客にも負傷者は居ません。あと、何よりもB737-800の機体の地上からの低さがあります。シュータが恐怖を抱かせるほど高くないのです。B747だとかなり高いので恐怖心がおきます。動画で見る限りも乗客は思い切ってジャンプしてシュータで降りています。
しかし、脱出の開始が1分遅く始まったら。左第1エンジンの爆発によって機内はパニックに陥りますます脱出時間はかかったでしょう。僅か1分の違いで結果は逆な方向に傾いたかもしれない。
 決断の、それも1分の違いが大惨事を防いだ、それに加えて数々の幸運が奇跡を生んだ。またく幸運だったのです。想定内の安全が保たれたのでは無いのです。
 現段階(8月23日)では脱出の手順がどのように決定され行使されたかのマスコミ情報は少ないです。乗客の中には案内を聞かなかったと言う人も居ます。ただ、同種の事故が起こった時に乗り合わせた乗客にとって、何故生還出来たかを記事として伝える責務がマスコミに有ると気がつかないのでしょうか。
 機内では「落ち着いて順番に」とパニックを防ぐ行動をとった乗客も居たようです。その状況を分析して記事で伝えてもらいたい。

事故原因解明の証拠が奇跡的に焼却免れる
 ここからは8月24日に加筆
23日現前中の調査で右翼燃料タンクにボルトが刺さっているのが確認された。これが燃料タンクを突き破って燃料を流出させた。部品は前縁フラップとも呼ばれるスラットを支持するボルト。
後縁フラップも前縁フラップも離陸時や着陸時に主翼面積を広げ低速でも高い揚力が得られるようにする装置だ。那覇空港着陸時には出ていて、滑走路をタクシー中に引っ込める。この引っ込める時にボルトが燃料タンクを突き抜いて燃料漏れが始まった。燃料タンクは通常加圧されており小さな穴でも勢い良く燃料が流れ出していく。
事故の直接の原因らしいボルトが前縁フラップに有ったとの記事を読んで気になったことがある。事故直後の情報に台湾交通部(日本の旧交通省みたいな組織)から『事故機は8月に入ってから2日連続でフラップのトラブルが有ったが今回の事故とは関係ない』とのコメント。
 実は、関係あったのだ。フラップが動作不良を起こしセンサーの関知した値と異なる事象が起きていたのではないか。5番スラットの動作不良がこの時起きていたのではないか。
※写真は「脱落したボルト部が穴を開けた燃料タンクの一部」=運輸安全委員会提供

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2007.08.23 Mint