羽田空港と航空行政の課題

B767-300は名機だと思う
 千歳空港に着いて最初の洗礼がエアドゥが機材手配が出来ずに欠航(笑い)。前日もこの便は欠航になっていたのにスケージュールは回復していないらしい。で、全日空が臨時便を出すのだがこれがエアドゥの受け付けカウンターからオンラインで座席予約できない。
 で、どうしたかと言うとエアドゥの3ヶ所の受け付けカウンターの後ろに発行した搭乗券を抱えた女性が居て「窓際の席を」と言うと走っていって「窓際ある」とトランプゲーム状態になっている航空券を婆抜きよろしく引き出している。「完全手作業になってますね」と言ったら手馴れた作業なのか「ちょくちょくあります」だって。これで国土交通省の航空行政は末端まで行き渡っているのだろうか疑問を感じる。
 一つ気になったのは、この段階で渡された航空券には搭乗者氏名の記載が無い。ということは万が一墜落した場合に搭乗者名簿はどのように処理するのか。この疑問が生じたので全日空のマイレージ登録器にANAカードを入れ搭乗券を入れると「カード登録と名前が一致しません」とのエラーになる。つまり、搭乗券発券時点では搭乗者名が記載されていないのだ。
 当日の天候は千歳空港は晴れ、東京は離陸時は雨のようだった。また、気流はおおむね安定だが東京羽田空港に降下中は多少揺れがあるとのこと。席は44A、つまり、最後尾の左窓際。さすがに最後尾は狭い。レジナンバーはJA8970の全日空所有のB767であった。
 離陸してやけに高度が高いなと思ったらキャプテンのアナウンスで38,000フィートを水平飛行してるとのこと。さすがB767、他の航空機が真似を出来ない高度まで登れる。函館を経由せずに直接仙台空港をパスして、あとはお決まりの大子経由で羽田空港にランディング。機体が小さいので多少の揺れはあったが、危なげない飛行ではあった。ただ、翼の内側のエルロンを見てると動きがタービランスモードに設定されていたようで小刻みに動いていた。
 昔、B747のジャンボ機で羽田に着陸する時にやたら揺れて、エルロンが自動タービランスモードなのだが、さげが最大になったと思ったらあげが最大になりガタンガタンと音をたてなが水泳のバタ足してるような状態でアプローチして着陸したことがある。この時はその便を最後に午後半日、羽田空港は風が原因で閉鎖になったのだが。
 到着後エアドゥの宿命、バスによる空港ターミナルまでの搬送。が、機体の後部ドアも開けてくれるのではじめてB767の後部ドアから降りた。昔、大分でMD80で後部から降りたことがあったが、羽田では珍しい体験であった。

仕事が終わって羽田空港見学
 到着後1時間程余裕があったので昼飯時間の混雑を避けるために空港ビルで早めの昼食が出来る店を探す。が、2000円より、みたいな価格でしか店が見つからない。ようやく3Fの蕎麦屋を見つけて760円の天丼セットと思ったのだが、天セイロ1200円なりを注文してしまった。札幌なら3食分だぞをと思うとえらく気がめいる(笑い)。
 仕事が終わって早めに羽田空港に戻ってきた。まずはエアドゥの搭乗手続き。なんと、出発2時間半もまえに座席が取れた。そして、とりあえず空港ターミナル内を探索。。送迎デッキに出ると第二ターミナルなんで全日空ばかり目に付く。時間に余裕があるので第一ターミナルにも行って見るかと羽田モノレールのキップ売り場まで下りたのだが、実は連絡通路がある。羽田モノレール路線図を見ると大きく180度回って第二ターミナルに入ってくるようで、実際の距離は羽田モノレールの距離よりも近いようだ。
 連絡通路の動く歩道を利用して第一ターミナルに行って見る。ここが懐かしい昔の羽田空港ターミナルだ(もっとも、その前のターミナルが最初に利用した羽田空港なんだが)。航空関係の書籍を扱っているブックス・フジもある。早速数冊を物色するが、ま、今ならアマゾンで手に入るものばかり。昔のように「航空管制入門」なんてマニアックな本を買うまでにはいたらない。成田空港の歴史なんて本を立ち読みしながら航空行政のいいかげんさを再確認する。
 軽く夕食でもと屋上の送迎デッキに出るが、売店は17:00で閉鎖、しかもとまっていた雨が降り始めている。自販機でジュースを買って飲みながら第一ターミナルから滑走路を見ていると、当日は着陸専用のようで各社の航空機がランディングしてくる。JALは出発時は大きく第一ターミナルを迂回して第二の海側の滑走路に向かうようだ。
 で、帰りはエアドゥのレジナンバーJA8258のB767。雲中飛行かと思ったら結構各市町村上空で夜景が見えて機内アナウンスでは高度は28000フィートとのこと。聞き間違えかと思ったが仙台の夜景は広く見えた。ま、さっきのアナウンスは上昇中の高度としてもたしかに朝より高度は低い。
 千歳空港に到着して「たいへんながらくお待たせしました。機材が到着したのでみなさまへの機内へのご案内は定刻1時間30分遅れの。。。」と搭乗待合室でアナウンスがされていた。ま、朝から機材が徐々に遅れ始め最終便は90分送れってことらしい。

危機管理にまで配慮が出来ない現状
 先の手作業発券の危うい所は搭乗者名簿も手作業になり、危機管理上まことにあやうい。航空行政もいいかげんだが、実際の運用現場もいいかげんだ。もっとも、個人情報保護法が施行されてから、万が一の航空機事故で乗客名簿の公表をどのように行うか、想定内になっている航空会社がエアドゥを含めてどれほどあるのか心配だ。
 現在のJALの争議に代表されるように、航空産業は新規参入が可能になりスカイマーク・エアラインやエアドゥの新規組みに加えて地方での参画や既存の会社の別会社が沢山出来ている。
日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)、スカイマークエアラインズ (新規参入)、エアーニッポン(ANK、ANA系)、北海道国際航空(AIRDO)、日本トランスオーシャン航空 (JTA、JAL系)、日本エアコミューター(JAL系)、スカイネットアジア航空 (JAL系)、エアーセントラル(ANA系)、JALエクスプレス(JAL系)、IBEXエアラインズ(旧:フェアリンク)、ジェイエア(JAL系)、旭伸航空(新潟県佐渡)、オリエンタルエアブリッジ(旧:長崎航空) 、 琉球エアーコミューター(JAL系)、スターフライヤー(福岡)
 yahooのカテゴリーだけで上記の数の航空会社がある。北海道のエアトランセ(2005)が抜けてるし他に、天草エアライン(天草)、エアージャパン(ANA系)、エアーニッポンネットワーク(ANA系)、エアー北海道(JAL系)、オールニッポンヘリコプター(NHKの取材へリ)、JALウェイズ(JAL系)、新中央航空(調布飛行場)、日本アジア航空(JAL系)、日本貨物航空(ANA系)、日本航空インターナショナル(JAL系)、日本航空ジャ(JAL系)、日本トランスオーシャン航空(JAL系)、ハーレクィンエア(JAL経営統合)、北海道エアシステム(JAL系)なんかも定期便を就航させている。
その数33社。全てが規制緩和による航空行政のいいかげんさが生み出したと言っても良いだろう。特に全日空と日本航空は「子会社」の形で経営責任を別扱いにしている。つまり、「天下り」を真似ている訳だ。
 これだけの航空会社が日々航空機を飛ばしてるのである。会社それぞれの顧客対応は千差万別であろう。ましてや、航空事故時の対応なんかは過去、JALやANAでしか経験が無いのだから危機管理は「出たとこ勝負」になっているのではと推測される。
そして、激烈な価格競争のために本社の意向で低料金提供を使命として切り離された系列会社も多いので、経営陣はとても安全管理にまで目が向いていないのではと危惧される。
所轄官庁である国土交通省も航空行政に関しては無策で、JAL、ANAの陰に隠れて実態を把握できないでいるのではないだろうか。

雑な羽田空港の使い方
 両送迎デッキから見てるとはたして管制塔から全ての航空機が見えているのだろうかと気になる。死角があるとも思えないが、新しいターミナルビル方式になって管制、特に地上の移動管制が不便になってないだろうか。
 空中衝突よりも地上での航空機の接触が気になる。また、羽田空港は便利な都市部にあるが、航空事故の80%は魔の11分(クリテイカル・イレブン)に集中する。離陸後の3分。着陸前の8分。この時間は航空機は東京湾上空のことが多いが、横風の時は東京タワーをかすめて離着陸する。どこもジャンボ機が落ちたら9.11事件の二の舞になる地域だ。
 羽田空港の拡張で沖に伸ばしているが、第二タ−ミナルの送迎デッキからは対岸がずいぶん近い。ここに成田空港、羽田空港の2大空港と米軍の横田基地、自衛隊のヘリポート等が点在する。3次元にルートを区切った立体的な回廊を伝って航空機が離着陸している。横田基地の移転が急務なのは羽田空港の拡張に伴って限界に近い空の回廊の開放に必須のため。いや、必須だから国が航空行政の最重要課題として総力を上げて取り組む課題だろう。
 B767のような急上昇が可能な航空機には余力があるだろうが、B777クラスだと満載で離陸時に片方のエンジンが止まったら。規定の回廊を辿れず他の航空機との衝突なんて場面にならないだろうか。
 雨に霞む対岸を見ながら羽田空港の拡張で、しまいには羽田空港は東京湾をまたいで千葉と繋がるのではと思ってしまった。

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2006.03.07 Mint