紫坪埔ダムと震源地の距離は25Km程

現地の余震の様子
 東京大学地震研究所が今回の地震の観測データを分析してWebで公開している。この発表にgoogle earthを使った余震分布の映像がある(google earthがインストールされていないと見られません。後半に掲載します)
 同じgoogle earthに紫坪埔ダムと余震をプロットすると、紫坪埔ダムは余震に沿った断層帯の真上にあることが解る。この紫坪埔ダムは龍門山断層帯の上に作られたことが解る。現地からの情報は錯綜していて紫坪埔ダムが危険な状況にあるのかどうか判然としない。
 また、大規模な余震が20日に予想されるとの発表もあったが、余震による直接的な破壊に限らず地震湖の崩壊による貯水量の急激な変化、周辺岩盤の崩落等、非常に潜在的危険も含めて危機管理すべき状況にある。
 四川省の西南部に紫坪埔ダム以前に2001年に満水になった大橋ダムがある。ここは満水後に群発地震が発生し、最大でM4.6の地震が発生し、半年ほど過ぎて収まった経緯がある。
 今回の龍門山断層帯は1913年、1933年、1976年と大地震を発生させているので必ずしも「今まで地震が無かった所で地震が起きた」とは言えないけれど、先に書いたように徐々に蓄積したエネルギーを発散するものが、一気にエネルギーを発散して大地震になった可能性は残るのではないか。まして、震源地と紫坪埔ダム(の筐体)は25Kmしか離れてない。ダム湖そのものの距離を考えるとダム湖内が震源地と呼んでもおかしくない距離なのだ。

水が岩盤に入ると冷却効果
 地中の岩盤は圧力よって250℃〜400℃以上の温度があると歪み圧力により徐々に褶曲して圧力を受け止める。ゆっくりと水飴のように動いて地下の中で流体のように地層に馴染んでいく。
水が入ると、圧力が高いにも関わらず沸騰して水蒸気を発生させて岩盤を冷やす。冷えた岩盤は元の岩石に近い堅さに戻り、歪みは亀裂の形で岩盤に生じる。
 ダムが出来ると今まで水が入らなかった所にまで水が浸透し岩盤を冷やす。冷やされた岩盤が固くなり圧力で砕けて群発地震を起こすのではないかと考えられてきた。
 最近のダムは水面が100m高を超えるものも多く、目処は水深100m、地面への圧力が10気圧を超えるダムだ。ここでは満水後群発地震が観測される。ま、これは巨大地震にならないので岩盤の再編成とでも呼べる。しかし、現実には数カ所で災害が発生している。インドでは200名ほどの被害者を出した1967年のコイナダム地震がある。
 もっとも、断層の上にダムを作るのが無謀な話で、三峡ダムも含めて中国の電源開発はギリギリの選択を迫られているのかもしれない。チベット地方は標高差が大きく地下鉱物資源に加えて農業に欠かせない水もまた資源として山を下ってくる。その利用に巨大なダムを作れば作るほど、ダム決壊のリスク(危機管理)を考えなくれはならない。
今回の地震でそのノウハウが蓄積されるのか、壊滅的な事になるのか、自然災害とは言え、中国政府は対応を誤ると先のチェルノブイリ原発事故から発したソ連崩壊と同じシナリオを演じることになる。

紫坪埔ダムと震源地、余震地域

google Earthによる震源地周辺の様子。黄色のプロットは東大地震研究所の分析による。画像が暗くて見えずらいが水色のピンが紫坪埔ダムのダム筐体の場所。
 朝日新聞の報道によると問題の竜門山断層帯はほとんど活動してない活断層で、6500万年前からは活動の様子が無いとのこと。隣の鮮水河断層帯ではM7程度の地震は頻繁に発生してるのだが、こちらの断層帯では記録が残っていないとのこと。
ますます、紫坪埔ダムによる誘発地震の可能性が高くなった。

button 紫坪埔ダムの誘発地震の可能性
button 有珠山噴火の様子レポート

2008.05.20 Mint