「かんぽの宿」、マスコミの鳩山邦夫氏バッシングは何故

政治介入は悪との単細胞か
 インタネを利用して情報を検索するのは限界があるが、入手した情報によれば、日本経済新聞と朝日新聞は社説で鳩山邦夫総務大臣の「不当な介入」を非難してる。産経新聞は竹中平蔵元総務相への反論の投稿を掲載した。テレビでは雨後の筍のようにワードショが有って追い切れないが、日本テレビ系列では幸坊治郎氏が同じく鳩山邦夫総務大臣に批判的であった。
 実態を知らずに感覚的に批判したと思いたいが、少なくとも社会的に責任のあるマスメディアが良く調べもせずに感覚的に社説を書くとは思えない。
 逆に、中日新聞では社説で「かんぽの宿の取引の不透明性」、地方紙ではあるが北海道新聞では同じく社説で「白紙撤回しろ」と書いている。
 朝日新聞は左よりなので政治家=悪みたいなDNAに染まっているとしても、他の日本経済新聞や産経新聞が何故鳩山邦夫総務大臣の介入に批判的(日本郵政に友好的)なのか不思議な現象だ。
 時間が経つにつれて明確になってくるが、日本郵政の払いさげに不透明な部分があり、旧郵政公社が簡易保険の収益で建設した準国有資産である「かんぽの宿」の売却方法としては不適切な事案である。国民に解りやすい説明が必要だし取引にも透明性が求められる。その意味で許認可権のある鳩山邦夫総務大臣が疑問を呈したのは正当であり、行政の執行官としては的を射たものである。

商業マスコミに潜む危険性
 今回の「かんぽの宿」売却は日本郵政側に立つと準国有財産の売却だが、民間側に売却を受ける企業が存在してる。
 最近のマスコミの報道で非常に気になるのが複数の企業が関係した事件の報道で「○○を始め7社が」とか「○○容疑者ほか3名が」とか代表のみ固有名詞記載の記事の組み立てかただ。紙面が限られるので全ての企業を書けないとか、限られた放送時間に納めるには短くしなければならないとの理由のようだが、長さ、時間の制限のないネットにおいても各社代表社名のみの報道記事を掲載してる。
つまり、同じ真実の報道であっても企業や個人の固有名詞を選択する権利は「編集」の名の下、マスコミ各社に委ねられているのだ。また、記者クラブ報道を垂れ流すマスコミにおいては、記者クラブ報道の「編集」によって特定企業や個人の名称が消されてしまうのだ。
 前回2007年3月の178物件の売却に参画した企業名が「コスモスイニシアなど7社で構成するグループ」と報道されている例が多い。この時は社宅を中心に払い下げを行ったので「かんぽの宿」ほど目立たず、評価額が妥当だったか今となっては検証が難しい。しかし、鳥取県岩美町の「かんぽの宿」も含まれており、これは報道にあるようにグループ内では1万円と評価されて6000万円で転売されている。
 では、どの会社が1万円を6000万円に化けさせたのかと言うと「コスモイニシアなど7社」では事実の報道にほど遠い。実は、この7社とは「コスモスイニシア、東急リバブル、長谷工コーポレーション、穴吹工務店、穴吹不動産センター、リーテック、有限会社レッドスロープ」の7社である。この中の有限会社レッドスロープが1万円→6000万円のマジックを使った。しかし、有限会社規模である。他のゼネコンのダミー会社では無いのかとの疑惑は当然起きてくる。
 また、東急リバブルは全国7個所の旧社宅を1000円で手に入れている。グループ7社の隠れ蓑の中で何が行われたのかは正確に情報を入手するのは困難だ。
 まして、このような報道手法では代表会社に無名の会社を上げておけば、本体の名前も出ることが無い。それを巧妙に、いや、マスコミと企業群が暗黙の了解として使い国民の知る権利を騙しているとしか思えない。

今回の取引の透明性
 一般のマスコミ情報では「オリックス」と表記されている例も多い。これは誤記である正しくは「オリックス不動産」である。この段階で今回の「かんぽの宿」の払い下げは転売目的の企業に対して行われていることが解る。事業の継続は入手企業に義務付けられてはいない。2年間の転売禁止だけである。逆に2年目には転売可能だ。
「オリックス」と報道されると事業継続のように受け取れるトリックがここにも隠れている。最終選考に残った企業は正確にはオリックス不動産1社なのだが、その前段でオリックスと競っていたのが「ホテルマネージメントインターナショナル」である。こちらはホテル運営を営業品目にする会社で詳細は不明だが「かんぽの宿」事業の継続を前提に入札に応じたのだろう。だから、転売を目的にしたオリックス不動産の109億円」に対して61億円までしか出せなかったのだ。もっとも、86億円を提示したのだが、オリックス不動産と同様の条件に日本郵政が調整して「入札価格は61億円」と日本郵政がしてしまったのだが。
 さらに資産売却の告知としては2008年4月1日に日本郵政HPに掲載、5月15日締め切りと何時間の間にアリバイ作りのように告知しただけで、例えば有馬温泉の温泉街では落札結果が出るまで自体を把握できていなかったのだ。これを広報行為と呼べるだろうか。
 これは談合による囲い込みと呼ばずして何と表現したら良いのか。結局、いかに不透明にして民間の利益をはかるか。そして、それを新たな資金源に天下り先を増やしていくか、それに尽きる気がしてならない。その片棒をマスコミが担いだのだろう。

マスコミも公器では無くなった
 非常に巧妙に仕組まれた日本郵政、民間不動産業者、スポンサー欲しさのマスコミの3者による報道のねじ曲げと国民への「めくらまし」の実態が見えてくる。
 その中で地方紙である北海道新聞や4大新聞に水を空けられた中日新聞がまっとうな報道に徹したのは結局既存のマスメディアの限界を露呈してるのだろう。泣く子とスポンサーには勝てないならニュース番組や社説はジャーナリズムを捨てたバラエティなのだと懺悔したら良い。上から目線で社説を書くが、実態は報道の暴力、マスメディアによる世論誘導なのだから。
 NHKのように何故淡々と事実を伝える姿勢に徹しないのか。それは民放とNHKの決定的違い、立ち位置が何処にあるかだろう。民放は制作費減少に苦慮してますます番組の質にまでスポンサーへの配慮が介入してくるのだろう。それは自殺行為なのだが、食うために魂を売り渡すことを何とも思っていないって潜在的危険性が今回の「かんぽの宿」vs鳩山邦夫総務大臣の報道に見え隠れする。
 国民は益々、マスコミに騙されないように警戒しなければならない。



2009.02.10 Mint