出発(デポ地点、釧路大楽毛海岸)
ここらの海岸は太平洋に面している。北海道は南に太平洋、東にオホーツク海、西に日本海に面しているが、実は小樽市に生まれ、北見市で学生時代を過ごし、既に札幌市で25年過ごしている僕には太平洋は一番遠い海だった。先の様似町訪問で「エンルム岬」から見る太平洋に感激したのも、やはり「この先10、000km海が広がるのだ」って感覚が体験出来たからだと思う。その太平洋に面しているってことだが、記憶している人が少なくなってしまったが、40年ほど前の南米チリ沖地震の津波が襲った地域がここなのだ。その意味で周囲を見回すと30年以上古い自然が無い地域だと解る。先に書いたが、常に地震に見舞われているのだ。日本の東の端が自然条件として太平洋からの波に曝されるのは当然なのだが、その対応はされていない。
つい先日も南米ペルーで地震があったが、ハワイで40cmの津波を観測したとか。太平洋の彼岸の地震が、ここには到着するのだ。地図で地形を見ると、北海道の北東部の海岸線は流氷によってなだらかだが、ここ釧路近辺もなだらかである。これは有史以来の太平洋の波の侵食ではないだろうか。同じく北海道ではあるが、西海岸の荒々しくアップダウンに富む海岸線は、逆に海による侵食が少ない故かもしれない。
自転車を組立て先々週と同じ道を大楽毛の交差点に向かう。前はここを直進したが、今日は阿寒町に向けて左折する。ここからが本当の新しい道の始まりである。
最初に出会ったのは「国立釧路工業専門学校」。いわゆる「工専」である。NHKで放送される「ロボコン」の工専部門で全国に知られている釧路工専がここにある。国立だったんだぁ。
実は30年ほども前になるが、高校受験を控えた中学校3年生の時に、たまたま私立高校を受けると同じく受験日が違うので工専を受けようと考えていた。その頃は工専5年間で短大卒の資格が得られるので魅力があった。目指していたのは旭川工専なのだが、大学に入ってから新聞で知ったのだが、ここで学生ストライキを含む大学紛争ならぬ工専紛争が起きた。もし、高校受験時に入学していれば、自分の卒業を控えての騒動なので、逆に大学1年生として複雑な想いを感じたことがある。
で、今の僕は「工専ってそのレーゾンデートル(存在自我)を失ったのではないか」とこの工専の前を過ぎながら思う。自分自身工業大学を出ているので自己否定になるかもしれないが、国策が「工業化」だった時代は10年程前に過ぎたのではないだろうか。そもそも、国策である「工業化」に向けて地方で「工業化」に送り込む人材を育てた教育制度って地方を搾取、奴隷化したのではないだろうか。ここの高校のテニスの練習風景を道路から見て、「ま、実際には地域クローズの一学校」の雰囲気に安堵したのだが。
その先で公共事業に出会う。国道38号線の複線化を目指して工事が進む。これって、一般の公共事業である。十勝の清水←→池田間の高速道路のような「日本道路公団」の事業では無くて、市町村が国から補助金をもらって行う一般道路拡張事業だ。北海道の道路事情を考える時に、「都市バイパス化」は避けて通れない。根室市に行きたい人が釧路市の信号で止められるのは理不尽である。釧路市に入る人と釧路市から先に進む人の流れはは分けるべきである。その意味で、各市町村はバイパス道路と基幹道路の二つを整備しなければいけない。。
高速道路の整備なんて問題じゃない。有料の高速道路なんて市町村にインターチェンジが無ければ何のメリットも無い。それよりも、既存の国道の整備(市町村主導で)が必要なのだ、それは「自腹」の整備計画なのだから、おおいに市町村で議論してもらいたい。
てなことを考えながら国道240号線を北上する。地図を見ながら今日の目標を道の駅「丹頂の里」に絞りこむ。ここにはサイクリングターミナルもあるようで、交通の要所らしい。途中、阿寒町の役場も有るが、これは、帰りに寄ることにする。
釧路空港への分岐点を過ぎると左に「丹頂鶴自然公園」が見えてくる。ここも帰りに寄ることにして直進する。今日の気温はどれくらいだろうか、若干の追い風に30km/時くらいで走っていると本当に気持ちが良い。阿寒町もあっさり抜けてしまった。
あかんランド、丹頂の里
目的の道の駅「あかんランド、丹頂の里」に到着。ここは、いくつかの施設が複合しているようだ。国道240号線を挟んでむかえにサイクリングターミナル「赤いベレー」がある。こちらには「道の駅」。とりあえず道の駅でマグネットのプレートを購入。自転車でたどり着いたために向かい風が無くなったので汗が出てくる。ついつい「ソフトクリーム一個」と言ってしまう。とにかくひと休みする。考えてみるとここ阿寒町は南北に伸びる町で、北に阿寒湖をようして温泉観光のメッカな訳だ。ここからまだ40km先に本当のと言うか、観光の拠点阿寒湖があるのだ。その意味で今居る地域は「もうひとつの阿寒町」なのかもしれない。
ひと休み後、国道を挟んで向かい側のサイクリングターミナル「赤いベレー」を見学する。サイクリング・ターミナル(端)と標榜するけれど、ここに直結するサイクリングロードは無い。唯一、釧路市から伸びている「釧路阿寒サイクリングロード」が近くにあるが、国道240号線の合流地点からここまで6km程ある。夕張市にもサイクリングターミナルがあるが、ここも同じ。サイクリングロードと何の関係があるのかと思わせる「サイクリングターミナル」なのだ。これも、名目デッチアゲの公共事業なのだろう。
倉庫のような所に貸出自転車が沢山有ったが、ここは隣接する温泉の施設なのだろう。同じくレストランが併設されているが、「ザル蕎麦600円」にはまいってしまう。そもそも阿寒町は物価が高いと思う。ここのレストランの値段を見てもサーロインステーキ2300円てのは何なんだろう。この先阿寒湖の観光事業が全ての物価を環境客相手に設定させてるのではないだろうか。正直言って札幌より高いってのは何故なんだろう。
ここのサイクリングターミナルと称する温泉で珍しいお土産を発見した。釧路太平洋炭鉱の石炭の缶詰。「22世紀になれば価値が何倍にもなっているかも」って缶詰。300円って価格も手ごろなので買ってしまった。
ここから戻りのコースに入る。途中で目にした施設を見て回ることになる。最初は町役場。
阿寒町
本当の町の中心は何処かってことは別にして、市街地が広がる地域に町役場がある。明日に「ふるさと祭」をひかえて役場の前にはテントの設置準備がされている。記念写真を撮ってさらに戻りの道を進む。ほどなく「町立病院、町立歯科診療所」なんてのが並ぶ公園にでくわす。どうも、ここでは何でも「町立」らしい。阿寒湖の観光から得た収入で町民は「町立」に潤っているのかもしれない。そもそも、あそこは「前田一歩園」の土地をカラカミ観光を筆頭に借地して開けた温泉街なのだ。で、元をただぜばアイヌ民族の土地を近代法制度の下に私有地にした経緯がある。特に現在の国有林ってのは歴史的経緯は「天皇家の山」なのだ。林学が国有林の管理として結局「天皇家の資産の預かり」だった経緯は今は誰も口にしない。そんな歴史的経緯の中で阿寒温泉街があるのだがそのあたりは誰も触れない。北海道の目玉を観光にしたい堀知事は、歴史をもっと学ぶべきだ。そもそも堀に「歴史感」が有るのかどうなのか。そのような歴史を背景に、その恩恵によくしているのであって、本来の産業を興した訳ではない。その結果の「町立病院、町立歯科診療所」ってのは地方の弱さの象徴のような気がしてならない。
気になる施設がある。釧路空港直前に「丹頂鶴自然公園」がある。この北側に赤い鉄塔でつながったレールが天にそびえている。これって、何なんだろう。
「丹頂鶴自然公園」はなんだか入場料が必要らしい、時間が無かったこともあるが、今の時期に金払って入りたいとは思わなかった。釧路空港への分岐点に到着。ここの信号を右に曲がって釧路空港を目指す。おっと、ここは道々65号線なんだ。この登りがきつい。測量看板が随所にあるのだが、標高で50m程登ることになる。丘の上の空港が釧路空港らしい。登り終えたあたりで航空機が見えてくる。ほとんどがジェットで、申し訳なさそうにYS−11が駐機している。土曜日なのだが、バス専用駐車場には何台ものバスが団体観光客を待ち受けていた。
北海道の空港は南から「函館空港」、「八雲自衛隊空港」、「新千歳」、「札幌丘珠」、「旭川空港」、「帯広空港」、「女満別空港」と訪れた。釧路空港も加えることになる。残りは「稚内空港」と「中標津空港」になる。これは、手が届く範囲に入っている。
空港から下って国道240号線に合流してデポ地点に戻る。次回はなんとか厚岸町の厚岸大橋を目にしたい。
2001.06.30 (C)Mint 本日の走行 59km