オホーツクサイクリングロード..常呂町
コース概要
ここオホーツクサイクリングロードは北海道の大規模自転車道路として国土交通省のホームページにも記載されている。この中には前に紹介した札幌の自転車道もあるが、紹介と実態にはギャップが有る。全て未完成なのだ。予算配分が逐次行われるので、気がついた時にチョコチョコ作るため全体構想の実現には程遠い(その前に忘れ去られる)のが実態なのだ。そして、前回の「札樽(さっそん)サイクリングロード」のように利用者からすれば幅広い歩道を利用したほうが便利なことが多い。
今までの訪問ルートから新たに常呂町を訪問するルートが3方向考えられる。その中で一番遠くからのルートをあえて選んでオホーツクサイクリングロードの実態を実走して経験してみる。
輪行概要
網走市の国道39号線と244号線の合流地点、通称「呼人への曲がり角」を過去通過しているので、ここから238号線を利用してサイクリングロードに入りる。地図によると、このままサイクリングロードを利用して常呂町まで辿りつけるはずだ。
網走市に向かうのに北見峠を越えるか石北峠を越えるか迷うところだが、北見市内を通過する時間を考えて交通量の少ない北見峠越えを選択する。北見峠越えは何回もレポートしてるので越えてからのルートを紹介しておく。
遠軽町を越えて安国で直進して国道333号線をさらに進む。旭で突然「遠軽北見自動車道」なんてのが現れる。無料なのだが、ここに自動車専用道路がある。距離は2kmほどだが。栄のT字路を左折し更に若佐で右折する。本当は若佐で直進したいのだが当日のルートを車で事前に走ることは避けたいので、あえて回り道をする。去年、遠軽町から丸瀬布、白滝を訪問した時に同じ道を車で走ってデポしたのだけれど、なんとも自転車で走っていて虚しかったことが教訓として残った。
途中サロマトンネルを越える。ルクシ峠である。数年前ガケ崩れで車一台が巻き込まれ2名が亡くなった事故の有った峠だ。今でも夜間通行止めになっている。サロマトンネルを抜けると両側が切り立った渓谷を進む。崩れた斜面が石だらけなのに驚く。普通ガケ崩れが有って数年経つと岩盤がむき出しになっている風景になるのだが、ここは地層が若いのかゴロゴロ岩が落ちてくるようだ。新しい道を作る工事もあって夜間通行止めなのかもしれない。それにしても、日勝峠の日高からの3〜5号目の渓谷と比べるとまだ緩い斜面に見えるのだが、やはり地層が若くて雨での侵食が大きいのだろうか。
ここから端野町で国道39号線に合流する。左折して進むが二見が丘で左折して道々104号線を進む。目的地は先の国道39号線の網走から呼人に向かう途中の駐車スペースだ。網走湖を右に見て国道238号線に合流する地点で右折し網走市を目指す。途中でサイクリングロードの施設の駐車スペースが有ったので、ここを出発地点として車をデポする。
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網走市側は整備十分
地図で確認するとここは「大曲駐輪場」とのこと。ここに車を停めて自転車でミッシングリンクを繋ぐために網走市の通称「呼人曲がり」まで辿ることにしよう。自転車を組み立てて駐車場からサイクリングロードに入る。最初に感じたのは虫の塊である。右に網走湖を見ながらの湖畔沿いの道なのだが、木々の日陰に虫の塊が飛んでいる。この塊に突っ込んでしまう。目といわず口といわず虫が飛び込んでくるので、この塊は息を止めて下を向いて通りすぎる。なんとも憂鬱な状況になってしまった。
網走市に入って高架を越えると、これがJRと国道39号線を越える高架で、なんとリンクを結ぶ場所を行き過ぎてしまった。久しぶりの網走市なのでポタリングしてみたい気持ちもあったのだが、今日はあわよくば常呂町を越えて佐呂間町まで足を伸ばしたいと考えていたので線路を越えて既に通過のT字路でリンクを繋いでサイクリングロードに戻る。
網走側のスタート地点は駐車場も整備されて大きな看板も出ていて非常に解りやすい。北海道を自転車で回る人の多くは海岸線を利用するので、ここ網走から北に向かう人はここから自転車道路を利用するのが便利だろう。南からここに向かう人の多くは先のT字路を左折して北見方面に向かうかもしれない。その意味ではT字路の前にも看板がほしいところだ。
ここオホーツクサイクリングロードは旧国鉄の湧網線の跡地で一方の網走は石北線が残ったが湧別は去年訪れた「道の駅、中湧別」のように国鉄の駅のみが名残を道の駅にしている。ここ網走から90km北に伸びていた湧網線は今は一部をサイクリングロードとして残すだけで歴史の記憶から消え去ろうとしている。ここの看板には当てつけのように廃止の理由を「赤字対策で廃止された」と書かれている。
考えてみると地方の交通の足は消防や警察と同じ社会インフラであり「赤字で廃止」されるものでは無いのだろう。それを東京しか知らない人間が全国一律民営化で赤字路線廃止で結局地方の過疎化を促進しているのだ。その弊害が北海道の旧国鉄の路線に限っても多々言えるのだが、歴代の知事は無言であった。道路が社会インフラでは無くて、道路を走るバスも含めて社会インフラ整備なのだって感覚の有る政治家はほとんど居ない。行政マンは東京しか知らないで「過疎地対策」を考えてる。この石碑の文面の「怨念」は解る人には解るなぁ。赤字で廃止して過疎地対策を考えるのは「本末転倒」なのだ。
出発地点で記念写真を撮って給水の準備をしていると声を掛けられた。「そこの蛇口は水が強いよ」と言われる前にひねった蛇口からは水が勢い良く飛び出していく。蛇口を絞って数秒で振り降りた水の音を聞きながら振り返ると自転車を横に汗を拭いているおじさんが居た。「今日は山菜取りに常呂まで行ってきた」とのことで自転車道路以外に山菜取りの道路としても地元で重宝してるらしい。「何処から来たの」と聞かれて「札幌から」と言っても「そうなの、じゃぁ気をついけて」ってくらいの返事なので、結構このコースは自転車での北海道旅行に通過する人が多いのだろう。あわてて「車でこの先の駐車場まで来て、さっき走り始めたんだ」と言ったのだけれど「あ、そう」って返事。
6時間も車飛ばして来たのに、結構そんなマニアが多いのだろうか。
出発点に戻り常呂町を目指す
車を停めた地点から国道をまたぐ自転車専用の橋が伸びている。これを越えて先に進むと若干の緩い上り坂が始まる。国鉄の線路の跡地にも関わらず結構昇っているのだ。当日は5月としては珍しく台風が上陸したのだが北海道の網走まではその影響が届かずサイクロメータを温度計に切り替えると25℃を示している。風は今は弱く追い風だ。
程なく旧国鉄時代の卯原内(うばらない)の駅に到着する。ここは地図では「鉄道記念館」となっているのだが、蒸気機関車が一台と客車が一台以外は特に設備は無い。建物は近くの小学校の資料室兼物置き場になっている。なんだかなぁ、鉄道記念館と言えば前に訪れた平取町の鉄道記念館が思い出される。ここに鉄路が走っていたのだって主張が有った。産炭地も多くの記念館を残していたが、ここでは湧網線が過去に走っていたってことを主張する気持ちは無いのだろうか。考えてみるとスタート地点での「赤字により廃止」って言葉の怨念がここに有るのだろうか。
ここがサイクリングターミナルになっているので給水が出来る。汗をかいたので顔を洗う。この地域の春は始まったばかりなのか水道の水は冷たくて気持ちがいい。でもこの水を口に含むと明らかに「鉛臭い」のだ。水道の水は常に流れていてこそ上水道なのだが利用が少ないと水道管から溶け出す鉛が水に含まれる。公園の水飲み場に多いのだけれど、しばらく流さないと飲めない水が多い。ここには3個の蛇口が有ったので全部空けて1分程待ったけど飲める水にはならなかった。なんだかなぁって気分になる。飲める水では無くて「とりあえず作ったかんね」って給水所がいかに多いことか。ここも同じだなぁと感じる。でもさっきの出発点の水はおいしかった。結局設計が悪いのだろう。
更に先を目指す。この道は能取湖を巻く道で西に向かいながら徐々に北に向かうことになる。ここから10km先にサイクリングターミナルが有る。能取を越えて更に先に進む。実は3年前の正月に常呂少年自然の家の取材をしたことがある。1月10日頃なので自転車で走ることは出来ない時だったのが、そこに徐々に近いづいている。オホーツクの海が見える頃には漁協の直売所に出る。ここからサイクリングロードがどのように伸びているのかが解らない。とりあえず歩道を辿って常呂町市街地に向かう。役場の前で常呂町訪問の記念写真をゲットする。
次回の佐呂間町に向けてのデポ地点として常呂少年自然の家の前にある駐車場を使いたい。そのために更に西に進む。当日は「浜祭り」が開かれていて道のあちこちに「3km先」、「2km先」と標識が出ている。主に「ほたて」らしいのだが風が強くなってきて焼いている匂いが伝わってこないので良く解らなかった。
栄浦から「竜宮街道原生花園」が始まる。ここは昔来たのだけれど歩いて見学する道が整備されていてお勧めだ。この道を左折して「船長の家」、「湖畔の宿」と民宿が有る奥に常呂少年自然の家が有る。この施設と道路を挟んで駐車スペースが有る。ここで休憩、おにぎり2個と給水をする。ここが次回の車のデポ地点になる。
今来た道を戻っても良いのだけれど、さらに進んで国道238号線に合流して斜めに常呂町を横切って役場方向に戻る。
最悪のシナリオになるか
先に漁協の直売所から国道に出たのだけれど常呂市街地に入ってみるとここにオホーツクサイクリングロードの入り口が有る。ちょうど温泉兼温水プールのあたりに出る。この施設はインターネットにも出ているのだが、木製のベランダで水着姿の子供たちが遊んでいる。5月に泳げるってのはオホーツク海では今まで出来なかっただろう。この施設から一旦サイクリングロードは切れる。森林公園を右に見ながら進むと国道と合流する。
その昇りで突然両足の太ももに異変を感じる。自転車を降りてみると真っ直ぐ伸ばすと痙攣が走る。伸ばすようにしゃがみ込まないと痛みが走るのだ。少し休んで直売所からサイクリングロードに戻る。この頃から風が強くなりしかも完全に向かい風に変わった。海の波を見るといわゆる「兎が走る」波が出ている、風速5mを少し越えているのか。
自転車を500mも踏むと太ももが悲鳴を上げる。降りて休むのだがしゃがみこんだまま動けない。出発地点まではまだ20km以上有る。通常なら1時間だが今の足の状態は最悪だ。本当500m走っては降りて歩くを繰り返す。湧網線の跡地なので直線道路が無限に(と、僕には思えた)向かい風にさらされている。時計は13時、14時には車に戻って札幌には20時前に帰りたいのだが、このままでは車まで戻るのは18時を過ぎる。だとしたら今日中に札幌に帰れない。それにしてもこの足の痛みはなんなのだろう。
能取のサイクリングセンターで休む。かばんに残ったおにぎりとスニッキーズを食べる。網走方向から来たおじさんサイクリストが現れた。「何処まで行ったの?」、「常呂の栄浦まで行って帰る途中なんだけど、向かい風が強くていやになってきた」と言うと「そうだなぁ、踏まなくても30km/h出るから怖いは、ここから戻る」と言っていた。良く見るとボトルホルダーにポカリの500mlが挟んである。やっぱ、このサイクリングロードは補給が出来ないらしい。それにしても年のころ60歳、レーパンにヘルメット派手なジャージで決めたおっさんは今の僕の足の状況ではうらやましい限りだ。
ここから次のサイクリングターミナル(ここではサイクルパークと呼ぶらしいのだが)まで10km有る。どうしても駄目なら次のターミナルで自転車を置いてヒッチハイクで車まで戻ろうと本気で考える。これほど走れない状況になったのは始めてだ。いや、考えてみると前回小樽からの帰りに軽いけど同じような状況が有った。
500mほど乗って100m程歩くって繰り返しで進む。この方式では10km進むのに2時間近くかかる。走りながら考える。普通故障はどちらかの足に出る。今日は両足同じように不調だ。とするとこれは体が原因では無くて環境が原因なのではないか。とすると一番考えられるのはサドルの高さだ。
出発する時に設定したシートピンが走っているうちに下がってくる。これが足が伸びる範囲を狭めている。伸びる筋肉が伸びなくなっているのだ。そう考えたときにシートピンを伸ばしてペダルの下で足が伸びるようにした。これが、解決策だったようだ。弱いながらもペダルを踏んでなんとか10kmを1時間で走って車のデポ地点まで戻った。なんとも辛い走りだった。
サイクリングロードとは呼べないと思う
有る意味期待していたのだけれど自分の体調異変を別にしてもここはサイクリングロードでは無いと思う。地域と融合していないのだ。「隔離された」って感じがするのだ。鉄道記念館(卯原内)から国道に出て走ったのだが、自販機でビタミンCを補給するにはこのサイクリングロードでは補給できない。先に書いたように「鉛臭い水」しかないのだ。国道に出たほうが便利だ。
これが国土交通省のホームページで紹介する価値があるのか。それは走ったことが有る人にしか解らない。企画ではあと10km残しているらしいが、この10kmは何時完成するのだろう。駄目だな、これをサイクリングロードと呼ぶ行政は「死刑一歩手前」の処罰をすべきだ。
「国道を走れば良かったかなぁ」って悔いが残るのはまったく残念だ。だって、国道を走ると人との出会いがあるじゃないか。ここでは出会いはほとんど無い。ただ道路が伸びているだけだ。ハードが有ってソフトが無い、行政の欠陥そのものなのだ。
わき道に逸れないで国道を走ることをお勧めする。国道を走ることによって得られる地域との触れ合いは残念だがここオホーツクサイクリンロードでは得られないと思う。
2003.05.31 (C)Mint 本日の走行 85.0km 走行時間 5:23 (車:行き 355km 帰り 325km)
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