天北峠を越えて..歌登町
コース概要
6月に入ってサイクリングの出来ない週末が続いている。この季節に多い週末の天気が悪いのに加えて会社の設立記念日行事なんてのも週末に有る。6月は週末が結構雑用が有ってなかなか出かけられない。それでも地図を見ながら次回の訪問先を考えるのだが、前回訪問の常呂町の隣の佐呂間町は、輪行の距離は長いが自転車の走行距離は短いので魅力を感じない。
そんな状況で地図を調べていると2年前に足を伸ばした音威子府村(おといねっぷむら)から先のルートに今まで気が付かなかった新しいルートが見えてくる。
地図のページの切れ目の妙と言うか、ここ音威子府の道の駅をデポ地点にして北へ天北峠を越えて中頓別までのルート。ここは片道41kmで途中に天北峠越えが有る。これに二の足を踏んでいたのだが、天北峠を越えて、ここから東に向かうと歌登町まで31kmのルートがある。ここを攻略して中頓別へのデポ地点の確保とオホーツク沿岸の市町村への展開を図ることが出来る。
このルートの検証を是非とも行っておこうってことで、目標を定める。
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輪行(C&C(Combined Cycling))概要
札幌から国道275号線をひたすら北上すると途中合流区間はあるものの道北の浜頓別町まで国道275号線が伸びている。
今回はその途中の音威子府村の道の駅をデポ地点にするべく国道275号線を北上する。
石狩当別を抜けて月形、浦臼、新十津川とおなじみのコースだ。国道12号線がかつての札幌−旭川の基幹ルートだったが、今では通称「裏道」の国道275号線のほうが時間的に早い。雨竜、北竜を越えて碧水(へきすい)の交差点を直進して沼田町市街に入る。ここは何回通っても良く解らない。何とか小道を辿ると国道が再度現れて、これをさらに幌加内町に進む。ここから僕の好きなルートになる。
北海道はかなりの地域を走ったが、ここ幌加内町から先の
朱鞠内湖(しゅまりない湖)の景観は一番好きな景観なのだ。学生時代に北見に住んでいたのでバイクで阿寒湖や摩周湖を見ているが、北海道の湖でもっとも美しい景観を人間に見せてくれるのはここ朱鞠内湖だと思う。しかもこれは人造湖なのだ。
たまたま見る方向から北に伸びているので朝の風景、昼の風景、夕方の風景にそれぞれ趣が違う。でも逆光になることが無いのだ。これで、何時見ても素晴らしい景観が得られるのだ。
何度かこの道を走っているがやはり「思案橋」を過ぎるときに[また来たな]って感覚になる。ここにかかる橋に何故「思案橋」と名づけたのか、かなりのシャレっ気なのだろう。亡くなった青江ミナの歌が思い出される。
このルートで北海道を満喫しながら美深町で国道40号線の合流する。実は若干の戻りなのだが、裏道を使うともっと先で合流できそうだが、あいにくその交差点を見逃してしまった。
ここから国道40号線に合流して目的の道の駅「おといねっぷ」を目指す。車の積算メータを見ると250km程。札幌からの時間距離は網走より近いようだ。
道の駅「おといねっぷ」で車を停めて自転車を組み立てたのは、まだ10時をちょっと過ぎたころだった。
どれほどの峠なのか天北峠
道の駅を出て右に国道275号線を進む。あたりは酪農農家が多く、ご多分に漏れず犬の放し飼いが散見される。どうも犬は苦手なので酪農家の建物が近づくたびに緊張する。放し飼いで飛び掛かって噛む犬なんて居ないとは思うが、出来れば犬は繋いで飼って欲しい。徐々に登る緩やかな道を峠に向かって進む。しばらく進むとその酪農家も無くなり単調な道が続く。
今日は新たな秘密兵器を自転車に付けいてる。小樽訪問の時にタイヤのパンクに悩まされたのでフレームに空気ポンプを設置し、なおかつパンクの瞬間修理の「自転車用タイヤパンドー」をカバンに入れている。オホーツクサイクリングロードで足を痛めたときに思ったのだが、普通に自転車で走れば1時間に20kmは進めるのに、自転車に故障が起きると歩いて1時間に4kmしか進めない。足の故障は別にしてパンクで時間をロスするのは痛い。そのための装備を充実したのだ。これは出来れば使わなくて済む装備ってことなのだが。
サイクロメータの高度計を見ると徐々に高度が上がってるのが解る。もっとも出発点が標高70mほどでそれから50m程増えた程度だ。
それにしても道から見える離農農家の家が多い。離農してから10年程だろうか、家屋は屋根が壊れているがサイロだけは「あと50年はもつ」みたいに立派に残っている。北海道もここまで北に来ると畑作は難しく、酪農一本の経営なのだろうが、多くの借金と共にこに地を去った跡を見るのは辛い。
上り道が急にきつくなる。普段なら気になる程度では無いのだが前回のオホーツクサイクリングロードで足を痛めたので、あえて足をかばってギアを落とし10km/時程度でゆっくりと登る。走りはじめて10km程、サイクロメータの高度計では230m程登って(つまり、音威子府からは170m程登ったことになる)で天北峠を越える。
越えると一気に下り坂になる。自転車での峠越えは緩やかに徐々に登るのが楽なのだが、この天北峠は音威子府側から越えるのが楽かもしれない。下りを一気に走り抜けると小頓別に出る。ここが歌登町へ抜ける道と中頓別町に抜ける道の交差する所だが交通の要所なのか小公園が有り車の駐車スペースも有る。ここから25km程で中頓別町に出る。格好のデポ地点を確保する。ここのトイレを借りて小休止。
今日は、ここから右折して歌登町に向かう。道々12号線に右に分かれる。
ここの交通量は異常に少ない
音威子府の道の駅から走って感じたのだけれど、とにかく交通量が少ない。音威子府の道の駅からここまで車の通行は1台/5分くらいの密度だろうか。その合間に1組み2名のチャリダーとすれ違った。良く表現される「北海道では車より熊が多い高速道路が有る」って発言は都会人の勉強不足なのだが、それにしてもここまで走って国道275号線もここでは1台/5分の状況なのだ。で、右折して道々「江差音威子府線」にはいる。突然急な坂が現われる。ここは前回の常呂での状況があるので無理をせずに自転車を降りて押して登る。
こちら道々12号線は先の国道よりも更に交通量が少ない。とにかく峠を越えようと歩きしてるのだが、追い越す車は無い。ここは1台/10分くらいの交通量しか無いのだ。こんな交通量の少ない道では熊が出るってことは無いだろうけど、事故にでも遭っても誰にも連絡が取れない。携帯を見るとなんと「圏外」こんな地域もまだあるのだ。この道を再度通りたくないので地図を調べると別ルートが見つかる。とにかく、こんな交通量の無い道をトボトボ走るのは生存の危険を感じてしまうのだ。とにかく「人に会わない」って路線をひたすら進む。本当に、一時間に6台程しか遭遇しなかった。
歌登町
緩い坂をダラダラと下って高度が70m程になった当たりで咲来北見線に合流するT字路に出る。この交差点の右側に公園がある。芝生が広がり子供用の遊具や東屋が整備されてる。給水も可能だ。ここで峠越えの汗を流すために顔を洗わせてもらう。
水は冷たい、味も良好だ。先日のオホーツクサイクリングロードの「サイクルパーク」の水は鉛臭くて飲めたものではなかったのだが、ここの公園の水は冷たくおいしい。飲んでさらに空になった500ccのペットボトルにも給水する。
ついでにここで軽く昼食をとる。こんな公園が随所にあればサイクリングは楽になるのだがと考える。昔は旅人の休憩所ってのが発達していて、北海道でもこのあたりでは「逓信所」ってのが随所に有ったようだ。さっきの小頓別も昔は駅停だったのかもしれない。ここの公園も元はそのような土地だったのだろうか。
しかも駐車スペースも有るので、歌登から先へのデポ地点に使える。
ここのT字路から2km程で歌登町の市街地に入る。当日の風は北北東で今までずっと向かい風。歌登からの帰りは全て追い風になるので、最後の向かい風を歌登町市街地に向かう。町の入り口で大きな看板に出会う。歌登観光マップ。なんと分かりやすい。ここで役場の位置と町の観光施設をチェックする。なんと「郷土博物館」みたいな施設は無いようだ。
まずは恒例の役場訪問を行う。役場の壁に「道立中高一貫教育高校を」って看板が上がっている。そう言えばこの地域で高等学校はどうなっているのだろう。出発地の音威子府にもたしか高校は無い。とすると、ここ歌登にも無いのだろうか。それ故に「中高一貫教育高校誘致」なのだろうか。
お約束の記念写真を撮ってカメラをバッグに戻そうとしたら何やらネバネバ状況でカメラが汚れている。実は先日のサイクリングで飲料水に加えた「エネルゲン」の粉末が半分程残っていたのを入れたままにしておいたのだが、これが湿気を吸ってドロドロになりバッグの中を汚している。バッグの中を全部出し、せっかくさっき給水したペットボトルの水をタオルに受けてバッグの拭き掃除を行う。貴重な水を失ったがまだ自宅からのボトルが手付かずなので1リットルは残っている。
このあたりに町民文化センターとか町民プールが有るのでそのあたりで休憩しようと川を挟んだ対岸に向かう。ここ歌登町は幌別川をはさんで広がっているのだ。
文化センターのあたりをポタリングしていると丁度12時になったので消防の建物からサイレンが鳴る。最初何が起こったのか解らなかったが、正午のサイレンって地域によってはまだ残っているのかと改めで認識した。僕の知っている範囲では小平町の鬼鹿とここくらいかなぁ。昔の名残と言うか正午のサイレンはどれくらいの市町村で残っているのだろう。
小規模な商店街のT字路があるが、歩道の整備と各商店の建物がユニークだ。スイスの山小屋風と言うのか、実に情けない。歌登町を主張していないのだ。前に通産省の商店街活性化策が結局「箱もの」で成功していないと書いたが、その余波がここまで来ているとは。訓子府町、新冠町、浦河町、余市町などで目にしたが、まったく地域の主張が無い昔の「ユネスコ村」なのだ。ここでもこんな様相を目にするとはなんとも情けない。それよりも「郷土資料館」の一つも整備するのが地域の主張では無いかと思うのだが。
農村整備基金を使ったのか大規模パークゴルフ場が有る。一日券で町民300円、町民外500円だそうだ。駐車場もあるのだがほとんど車が駐まっていない。プレーしている老人も少ない。これもなんだかなぁ。
再度さきほどの看板の前を通過して音威子府に戻る道を進むのだが、やっぱある意味忘れられた町なのかもしれない。内陸を走る国道40号線添いの音威子府、海から開けたオホーツクの町である枝幸町。ここに挟まれた町である歌登には主張すべきものが無いのかもしれない。いや、主張する意識が無いのかもしれない。
町内では結構アマチュア無線の鉄塔が目に付く。そこそこ酪農を支える機械農業の経済構造なのかもしれないが町に工場も量販店も目にしない。うーん、良く分からないってのが正直な感想だ。
帰りも同じ1台/10分
先ほどの公園が有るT字路を直進して咲来北見線を進む。ここも緩やかな上りで咲来峠に向かう。途中はほとんど酪農地帯だ。牧草を刈り取ったロールが点在している。気にしていた足の調子も好調だ。押しを使わず速度を落としてでも峠越えは実走する。サイクロメータが先ほどの天北峠と同じくらいの240mを指す頃に咲来峠を越える。ここの峠は気象観測所が有り若干の駐車スペースもある事を確認する。
ここから緩い下りを辿りながら国道40号線に合流して右折し、4km程北上すると出発点の道の駅「おといねっぷ」に戻る。
自転車を車に収容して、せっかく音威子府に来たのだからJR音威子府駅で「音威子府そば」の月見そばを食べていくことにする。ここの蕎麦は昔の国鉄の駅蕎麦ナンバーワンになった事で知る人ぞ知る蕎麦なのだ。
蕎麦の実を全てを使うので色の黒い蕎麦で通称「田舎蕎麦」なのだ。自転車で走って汗をかいた後の塩分補給には醤油ラーメンが最適って意見も多いが僕は蕎麦も塩分補給候補に上げたい。ここの蕎麦は二年ぶりか。駅蕎麦のこれ以上小さい卵は無いってくらいの卵を落とした月見蕎麦を食べながら『ああ、音威子府村は主張しているのだ、歌登町にはこれが無かったな』と舌が教えてくれた。
あと数回はこの蕎麦を堪能する旅が出来そうだ。
2003.06.21 (C)Mint 本日の走行 68.0km 走行時間 3:51 (車:片道 282km、往復564km)