襟裳岬..三石、浦河、様似

コース概要
 北海道を魚のカスベ(エイの一種)の形に似ていると表現することがある。その尻尾にあたるのが日高山脈が海に達する襟裳岬。ここは北海道を旅して回る人々の数有るメモリアルポイントの一つだろう。
 手元の紀行記を見て解るとおり、どうも、あと一歩Depoポイントを確保しないと、この襟裳岬を攻略できそうも無い。僕の北海道212市町村訪問のサイクリングは役場訪問を基本にしているので、えりも町の役場を訪問すれば自動的に襟裳岬も訪問したことになるのだが、やはり、あこがれの襟裳岬、えりも町の役場だけでなく実際に岬を訪ねてみたいものだ。
 そう計画すると、やはり最も岬に近い地点に車をDepoする地点を確保して置く必要がある。不本意なピストンコースを今回も採用して、襟裳岬に向けて日高路の足を伸ばすことにする。
三石(みついし)町
 先に静内まで足を伸ばしているので、今回の出発地点は静内町。ここの桜公園に車をDepoしようと思ったのだが、河川敷きに公園が有るので、できるだけ国道に近くと思いここに駐車。ここまで札幌から160km。本当に「思えば遠くに来たものだ」。
 ここから右に太平洋を見て襟裳岬に向かう海岸段丘の道を進む。最初の街は三石町。
 今日は朝から天気が良いので、海岸に流れ着く昆布を集めて干し場にならべている。たぶん、日の出からすぐに作業に取りかかったのだろう。既に干し場に並べ終わった所もあれば、横に積み上げた昆布を一本づつ干し場に並べている所もある。有名な三石昆布はこうやって作っているんだ。集落を抜けるとポットにお茶を詰めて朝食の用意を篭に入れた女性が足早に海岸先に向かう様子を目にする。
 家族総出で昆布干しに取りかかっているのだろう。結構高齢な人も海岸に出て昆布を干し場に並べている。漁業って高齢になっても果たす役割が有るっていいなぁ。
 日高三石の役場の前で休憩。記念写真。ここの役場は大きな水車が売り物のようで、隣の郷土図書館の前には直径3m程の水車が回っている。この役場地帯が文京地区なのかもしれない。と、言っても小さな集落なのだが。

浦河(うらかわ)町
 ここから岬へ向かうとしばらくして、オートキャンプ場の三石海浜公園。ここは短い夏の間の施設なのだが、どうかなぁ、オープンが夏のシーズンだけってのは、オートキャンプを本当に解っているのだろうか。冬もオートキャンプが出来る施設が整備されて本当のアウトドアスポーツだと思うのだが。そう言えば、道内をキャンプで回るサイクリストも6月より早いとほとんどのキャンプ場がクローズで利用できないなんて、ねぇ。
 ここから坂を登ると三石町を越えて浦河町へ。
 ここは役場の看板がない役場が建っている珍しい町。記念写真も気が抜けてしまう。NifのCYCLOでツツさんが言っていたが、「同じ景観にする必然性への疑問」のある商店街を抜ける。昨年の秋に車で訪問したのだけれど、なんか、やっぱ、商店が個性を失った景観って感じ。ここで、再開発に反対している店の再整備されてない狭い歩道の前で、あやうく宅急便のトラックからの荷物と衝突するところだった。意見が対立するのも良いけれど、第三者の安全を脅かすのはいかがなものかと思うのだが。
 競馬馬の生産者が町外から資金を集め、これを地元商店街が分配する経済循環が確立したと思ったらバブルの崩壊でこの構造にリストラがかかり、さりとて公共事業依存構造になるような産業基盤が無く、町全体の経済構造を模索ししている感じのする町だ。
場違いなダイエーとホテルが遺物にならないように、景観統一した商店街がゴーストタウンにならないように、この町の未来を担う若者に期待したいものだ。
 ここ静内からは20年ほど前にオートバイで襟裳岬を目指した時以来の道。再開発未整備の狭い国道を抜けてさらに進む。

様似(さまに)町
 単調な海岸線が続く襟裳岬への道だが、様似町に近づくと海岸線が一変する。

沖に取り残されたような岩が点在している。名前は何処にでもある親子岩なんだが、この岩は半端な大きさではなく大きなビル2、3個くらいある。また、町の直前にトンネルがあるが、ここから砂州のように別な岩に町が伸びていて、今までの単調な海岸線とは違い非常に変化に富んだ景観となっている。
 トンネルを抜けるとそこは様似市街地。ここの様似中学校や小学校はインターネット指定校でホームページも結構楽しめる所だ。で、無理をして襟裳町役場を訪れるよりも、この様似町を見学して、襟裳岬を視野に入れた最後のDepo地点にすることにする。なんせ、役場を見た瞬間に、少し研究する価値を感じさせる町なのだ。
 日高本線最後の駅、様似町。ここのJR駅でハードキップの入場券160円なりを購入。本当に線路が無くなっている地点を確認(めったに見られないから)。スポーツ施設、児童会館、幼稚園、公共施設が役場近辺に集中している。なんか勢いを感じる。考えてみるとこの襟裳岬に向かう海岸道路は僕の持論の「勢いのある町の隣町は寂れている」を証明するような道だ。静内−三石−浦河−様似と縞のように町の勢いがサンドイッチになっている。
 やはり気になるのは海岸線。この海岸にそびえ立つエンルム岬へ向かう。ここの手前に郷土資料館がある。
 最近走りに集中しているので、郷土博物館はパスしていたのだが、この様似町の原動力研究のためには格好の資料なので自転車をとめて入館する。無料らしい、記帳していると守衛室のような事務室から人が出てきてドタバタしながら各展示室の電気のスイッチを入れている。記帳しながら一行前を見ると、室蘭からのカップルが昨日訪れたのが最後。時間は14時を過ぎているのに、今日の入場者は僕が初めてらしい。
 うん、なんか秘密が解ってきたぞ。ここ様似町は北海道の中でもかなり早い時期に入植が始まったらしい。産業の基盤は貴金属採掘、加えて昆布に代表される海産物。そして、さきほど見た親子岩とここエンルム岬に囲まれた天然の良港を形成した地の利。様似川を利用した運送。なにを取っても好条件になる。そして、その歴史をとどめる、このような郷土資料館として維持する文化の形成が出来たことが現在の様似町を支えていると言えるだろう。
 ここにも武四郎の作った北海道地図(絵図)が展示されている。ま、最低限この資料は郷土の歴史として子供達に見せたいものだ。ひさびさの手造りの資料館にすっかり満足して、出口の事務所でお礼を言って外に出る。
 普通、岬と言うと砂浜か岩場が海の中に突き出ているのだが、ここのエンルム岬は海岸に有る大きな岩(海抜50mは有る)が岬になっている。自転車で途中まで登って、駐車場に残し、ここから徒歩で岬の頂上(って変な表現だが)に登る。本当の最高地点には上れないが、途中まで山道が整備されていて、終点は4畳程の展望台。ここから太平洋を望むことも出来れば、様似町を一望することもできる。

 これなんだよなぁ。志しを持つためには町にランドマークが無ければ。特に自然の景観がランドマークになれば最高。様似町と言えばエンルム岬。ここから太平洋を望んで、町を望んで、自らの住む町を望んで、大志が起きない訳がない(はず)。

 景観に大満足し、襟裳岬へ38km地点にDepo可能なことも確認し、岬から後で挑戦する襟裳岬も見えたし、ここから出発点の静内へ戻ることにする。
 途中、午前中に始まった昆布干しが終わり、堅く乾いた昆布を、また家族総出で収穫しているのを随所で見た。昆布1本が5m近くかるから、取りまとめるまでは全員で出来るが、最後の車への積み込みは大黒柱の仕事。これを浜の作業場へ持ち込んで一定の長さの規格に切る。既に作業場には電気が点っている。
 北海道のサイクリングもこのシーズンになると行動時間が制約される。6時には暗くなるし、朝は5時過ぎないと明るくならない。静内に到着の頃はあたりが暗くなっていた。

 それにしても、単調で何もない襟裳岬への道だが、様似町にはザクザク溢れる程の情報が有ったのは収穫だった。
1996.09.07 本日の走行119Km

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