後志支庁南端..空白地帯、島牧村、寿都町
コース概要
黒松内町をDepo地点にして、後志支庁の南端、島牧村、寿都町の2町村を回ってきました。ま、「何もない」と言ったら語弊がありますが、たしかに何もない感じでした。
渡島半島は北海道の南西の部分で、江戸時代末期から明治のはじめに掛けて、北海道開発の入り口としての歴史を持っています。そのためか、全体的に市町村1ヶ所あたりの面積は狭く、小さな地域に沢山の市町村が集まっている感じです。実際に走ってみると海岸線から開発が始まった経緯から、内陸を経由して市町村をつなぐ道は結構長く、自転車でまわるにはシンドイ地域に感じられます。一番の難点はコース設定がピストン型になりやすく、グルット回ったサークルコースは距離が100kmを超える過酷なものです。
このため、個々の町村をこまめに訪問し続ける必要があるかもしれません。今回の入り口の黒松内町まで札幌から3時間。そろそろ、車に乗っている時間が自転車に乗っている時間を超えるあたりまで遠出になっている訳です。
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陸軍演習跡地
今年の北海道の春先の天候は不順で、週末だけのサイクリストでは2週間に1回サイクリングが出来るのが最高のペース。今回は前の日の天気予報からバッチリ朝5時出発で黒松内に向かいます。ここには前年確認しておいたスポーツセンターがあるのだけれど、どうも見つからない。JRの駅でトイレを借りて、ま、ここの駐車場でも良いかとも思ったのだけれど、そう言えば虻田町に抜ける道の途中に北限のブナ森林公園が有ったのを思い出し、ここに車をDEPOすることにする。
天気はこれ以上望めない程の晴天、途中車の中でラジオの天気予報を聞いた所では、午後から崩れるとのこと。出発が8時だから、午後の早い時間にはここに戻ってこれる計算なので、なんとか天気は持つと思う。
寿都町に向けて黒松内町を出発して、少し進むと左折で島牧村へ真っ直ぐ進むT字路が有る。極力サークルコースを設定したいので検討したのだけれど、途中標高390mの峠超えなので迷った道。足の調子も今年はそんなに走っていないので、敬遠しようと思ったのだけれどハンドルは自然に左折。ま、いいか。これが道道523号「美川、黒松内線」。例によって、新しく出来た道路は車での往来を前提に設定されているので、アップダウンがきついと思われる。
登れど登れど峠が見えてこない。つづらおりの道はブラインドカーブになっているので、「あの角を曲がったら峠かな?」なんて淡い期待がことごとく裏切られる。それにしても車の通らない道の両脇に路上駐車がビッシリ。ここは一面の笹の原野で、ここで山菜採のメッカになっている様子。素人だけでなくプロも混じって一斉に笹の子(竹の子の小さいやつ)採取にせいを出している。
確か、今年の春も原野に迷い込んで亡くなった人が居たと思う。随所に「山菜採るより、命取られるな」の看板が立っている。つーことは、この看板の近くから入るのが玄人の道なんだろうか。
収穫した笹の子を分けている3人程の集団に合ったのだけれど、なんと直径2cm以上の笹の子が直径1m、高さ50cm程に積み上げられている。聞くと、3時間ほどで採ったとのこと。うーん、自転車止めて笹藪に入りたくなった。
後で聞いた話なのだが、この一帯は戦前の軍隊の演習地で平らにした後に笹が生い茂り有数の笹の子採りの名所とか。ただし、平らなものだから、方角の目安が無く、迷いやすいので素人は集団で離れないように入るのがコツとか。確かに今走っている道1本以外はろくに目印も無く、背丈を超える笹藪に入って迷ったら出てくるのは大変だろうと思われる。
まさか、あの青い小屋までは登らなくて良いのだろうと思っていた小屋のあたりが峠。左右の視界が開けてくる、右側には日本海が見えてくる。そういえば海を見るのはひさしぶり。
島牧(しままき)村
ここから一気に坂を下って。おいおい、島牧側はやけに道幅が狭い。登ってきた黒松内側と比べたら道幅が半分も無い。数年前までは一部未舗装だったらしいが、どうもこちら側が未舗装だったのだろう。と、言うことは笹の子は黒松内の人の採り放題?。
坂を下っていよいよ日本海に沿った海岸道路に出る。残念ながら島牧村には入っているのだけれど、役場まではここ「美川黒松内線」と「国道229号」の合流点からさらに南に13km程先にある。ここ島牧は海岸線の町が合併して出来た村で、合流点から「本目」、「港」、「豊浜」、「永富」と続き、永富に村役場がある。ちなみに、その先に「江ノ島」があり、海水浴が出来る海岸は「江ノ島海岸」。どこがどうだか知らないが、当然の地名かもしれない。
海岸段丘の波打ち際に張り付いたような住宅が続く。奥尻の地震および津波の時に被害があったのか、逆に新しい家が目に付く。海岸では釣りをしている人をチラホラ見かけるが、さほど盛んとも思えない。各自の家の前には国道を超えると小さな船付き場があり、1、2艘の小さな和船が陸揚げされている。
風景としては、三石町の海岸に近いが、あちらは昆布の収穫があり、家族総出って感じだけれど、こちらは高齢世帯のみのような活気の無い雰囲気がある。
日本海側の海岸線特有のトンネルの続く道が海岸線を伸びている。おうおうにしてこれらのトンネルは古く、狭い。最新のトンネルでも歩道が有るが、そもそも歩行者なんか1km近いトンネルに居る訳もなく、おざなりな歩道が多い。ガードレールも無い歩道を走っていると、もし踏み外して車道に倒れた時に後ろからトラックが来ていたら、なんて考えると、とても走る気にならない。結局、車道を力一杯走って抜けることになる。平らなら40km/hくらいで抜けることになる。一山超えた感じの疲労感に襲われる。
なんとか、役場まで到着。とりあえず、汗で汚れた顔でも水道で流したいのだが、普通の役場にある散水施設みたいな水道が無い。でも、役場前に小公園があり、噴水もある(土日は止めているみたいだが)ので、ここで大休止。
コンビニでのおにぎり2つとチーズを食べる。役場の前には、「後志弁慶観光の入り口として各町村のパンフレットを用意しています」って看板が出ているけど、土日の役場の休みの時は配ってないみたい。なんだか役所仕事だなぁ。
この229号も凄いのだが、国道だけを取り上げると、函館から渡島半島を北上するコースは100km以上に渡ってコンビニが無い所がざらで、金で解決しない糧食の得にくい場所になっている。北海道の海岸線で最も補給が困難な地帯に突入している訳だ。と、思ったら、役場の前にセーコマートって北海道地場のコンビニが建設中だった。(ここで、周辺町村のパンフレットを配るように委託したらどうだとう>島牧役場)
役場の横のスポーツ公園で顔の汗を流し、水筒に水を補給する。もっとも利用の少ない水道の常、カルキ臭くて、本当に水に困らない限り飲む気がしない。
寿都(すっつ)町
ここからは、折り返しで先の合流地点へ229号線を戻る。途中風が出てきて天候も下り坂になる。あれほど強く降り注いだ日光も雲に遮られている。
合流地点から緩い上り坂を進むと「弁慶岬」。北海道には弁慶・義経に関する伝説が多いのだけれど、ここの岬には高さ8m程の弁慶の像が建っている。伝説によると、本州から大量の食料、資材を船で運ばせる計画を立てた義経が毎日この岬に立って船が来るのを待ったとか。特に観光的価値も感じないのだけれど、見通しが良いので各社のアンテナが乱立しているのは現在でも岬の役割として注目される立地条件なんだろう。
駐車場で2台の車の間に紐を張って、開いたホッケを干している。朝方釣り上げて、寒さしのぎに飲んだ酒が抜けなくて、昼寝をしているのだろう。その間に一夜乾しを作ってしまおうとは、なんとも合理的な釣り人が居たものだ。
岬からほどなく寿都の市街地。海岸には港が開け、市街地は海岸段丘の丘の上にある。ここの役場は合同庁舎。記念写真を取って回りを探索。なんと、誰も居ない町営プール(なんせ、窓から覗いたら水面に波一つ無かった)、結婚式の準備中の文化センター。よくある箱物誘致市町村の雰囲気が有るなぁ。
ここは風力発電で「風の町寿都」とかコピーが有るのだけれど、この合同庁舎の坂の下に立派な本屋があり、どうも、役場特有の出入り利権がこの本屋に有ると見たぞ(笑い)。
郷土資料館とか、歴史博物館とか、よそ者には貴重な情報源なのだが、どうも見あたらない。ここから黒松内に戻る途中で、今回期待していた風力発電を見たが、「おそまつ」の一言。30kwくらいだろうか。これが数基乱立している。このなかの1本が風で倒壊したらしいが、そもそも、全部が2枚羽根でいったい研究してるんだろうか。単なる生産発電なら3枚羽根が主流なんだが誰も関心無いんだろうなぁ。先の弁慶岬に立ててこそランドマークなのだが。
やはり、今回のコース取りは正解。最初にこの風力発電を見たら引き返したかもしれない(笑い)。しかも、229号線に分かれて黒松内に向かう道はおりからの風が強まり、完全追い風状態。途中、向かいからサイクリストが1名。「やぁ!」「くーー、向かい風がしんどい」なんて会話を交わす。
ま、正直「何もない空白地帯」って感じぃ。
1997.06.15 本日の走行 81km
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