いざ出発
長万部(おしゃまんべ)町は海岸、国道、JRの線路で分断されてます。また、JRをまたぐ高架がほとんど無く、事前に線路の右か左か判断しておかないと、えらい遠回りを強いられます。国道5号線から一旦黒松内方面に向かい、そこから町の裏を攻めると東京理科大の方面に進むことが出来ます。この先に長万部公園があります。
時期ですね、桜が満開で既にキャンプを楽しんでいる人が数組居ました。キャンプ施設は有料とのことですが、函館から100km程ですから、自転車ツーリングの最初のキャンプ地として有望です。ただし、国道から少し離れているので、明るいうちに入らないと探すのが難しいですが。
ここに車を停め、自転車を組み立てて出発です。今回は新たな装備がありまして、フロントバッグを取り付けました。今までディバッグを背負ったり、後ろにキャリアを付けて縛ったりしていたのですが、背中の汗の発散や荷物を落として気が付かないとか不安があったので、おもいきってフロントバッグを購入しました。取り付けは2本のフォークのような器具をハンドルを挟むように取り付けて、あとは標準のフロントバッグ(ブリジストン製で4000円)を取り付けました。やはり便利ですね。
長万部から八雲(やくも)までは国道5号線で32km、往復でも64kmです。シーズン初めとしては少し短いので、今金(いまがね)町に抜ける道に車のデポ地点を探す行程も加えます。ま、10km程追加になると思ったのですが、結構この「ふろく」が後から利いてきました。
考えてみると、昨年はほとんど乗っていない訳で、50kmを越える行程は一度慣らしておけば良かったと反省です。
車を利用した輪行でどうにもならないのが、目的地(役場庁舎)から車のデポ地点まで戻らなければならない事で(あたりまえですが)、目的地は変えることが出来ませんから、車のデポ地点を最適な距離に設定する必要があります。
そのためには、太平洋(噴火湾)から峠を越えて日本海までは50km以上ありますから、途中のデポ地点が必要な訳です。北海道はタイヤチェーン着脱場とかに加えて、休憩所が道添いに有りますから、これをデポ地点として確保しておくのは容易です。また、最近は60ヶ所弱の「道の駅」これもサイクリングの輪行の車のデポ地点として最適です。
桜の下をくぐって、東京理科大学を右手に見て、国道5号線に合流します。ここから少し戻ってJRの長万部駅前からスタート。あいかわらず駅弁でもある「かに飯」看板が目に付きます。
八雲(やくも)町
ほとんど直線に南北に走る噴火湾添いの道は風の通り道にもなります。幸い今日は弱い向かい風ですが、一昨年来たときは立っているのも難しい強風。交通事情に加えて、風が我々サイクリストの強敵になります。
路肩は極端に狭い所があり、小さな橋はその路肩も無い。正面から大型トラック、後ろからバスなんて組み合わせの時は、橋の直前で一時停止。後ろからの交通の邪魔にならないことを確認して再発信。何度か、直後のバスの運転手から「ゆずってくれて有り難う」のサインをもらう。自転車1台と言えど、大型車2台がすれちがうのがやっとの国道では交通の邪魔は出来ない。
左手に噴火湾を見ながら南下。途中国縫(くんぬい)から右に折れて、今金、北檜山ルートの事前調査です。看板では北檜山まで51kmもある。一気に往復するには少し距離が有りすぎるので、やはりデポ地点を確保しておく必要があるだろう。脇を流れる国縫川の清流が綺麗です。この先、峠を越えると北海道でも有数の清流、後志利別川が有ります。今見ている川でも十分清流なのにこの先にもっと素晴らしい清流が有るのでしょう。
道の上から川をのぞくと、あれ、魚が居る。自転車を止めて川面をのぞくと、30cm近いヤマベ(アカハラって北海道でヤマベすよね。違ったかな?)が群をなして数百匹あちらこちらに見える。竿があれば入れ食い間違いなし。普通はウグイなんだけど、さすが清流にはヤマベがうようよですか。
緩い登りを進むと国縫の交差点から8km程で休憩所を兼ねた駐車スペースを発見。もう少し進むと峠にスキー場が有って、ここも車のデポ地点になるのだろうけど、今回の目的はあくまで八雲町、ここから折り返して、再度国道5号に戻る。
ますます交通量の増えた5号線を南に向かう。途中から左前方に特徴有る駒ヶ岳のシルエットが見えてくる。サイクリングと言うのは周りの景色を楽しみながら風と友達になって走るものだが、残念ながらその余裕はここ国道5号線には無い。幅30cmの路肩を段差でよろめかないように慎重に進む。横50cm程をトラックが追い越していく。横風が有れば非常に危険な状態だ。この道を迂回するルートは無い。別名、静狩国道・大沼国道と呼ばれるこの路線はたぶん、北海道で有数の
サイクリング危険ルートであろう。ここを避けるには北海道上陸を函館では無く、苫小牧にするのが良い。
長万部と八雲の境界線を越えて、八雲市街までは8km程。小さな漁港が点在している。左に噴火湾を望みながら、右には函館本線が走る。さすが函館そして青函トンネルを越えて本州への線路だけあって、JR貨物の20〜30両引きの列車が追い越していく。時々、「振り子車両」の特急も見ることができる。
八雲の町に入るとまず公園で洗顔と給水と思っていたのだが、どうも八雲の公園ってのは給水場が無い所が多い。しょうがないので役場の直前の小学校で給水。役場の前庭で昼食にする。ここまで50km程。なぜか足がつる兆候を見せている。昼食をとりながら1時間近く休憩するが、おさまらない。シーズン最初とは言え、50kmで既に足に来るとは思わなかった。
何処の田舎にも共通して言えることだが、整備された公園の規模の大きさには驚かされる。町民全員が来ても余るような公園が随所に有る。ここ八雲でも「さらんべ公園」は大規模である。総合体育館と言い、JRの高架下と言い、ここは車のデポには困らない。
春の連休中の大雨のせいか市街を流れる遊楽部川増水の傷跡がなまなましく、橋桁の数メートル上にも枯れ枝がからみついている。川添いの自転車道も一部地面がえぐられている。
「さらんべ公園」の川沿いにはデンマークのマーメイドの真似か、高さ3m程の「人魚姫の像」が有るが、ま、顔が自由の女神に似た、悪いけど悪趣味って感じがする。八雲の人はこのような彫刻や石碑が好きなのか、いたるところに何とか記念の石碑がある。それも、建立に携わった人の名前を全面に出したやつ。「ひっそりと庭の片隅に立つ記念樹」って感覚は無いらしい。俺がやったんだぞ!って感じ。ま、好きずきだけど。
ここ八雲にはあまり知られてないが航空自衛隊の予備滑走路が有る。まさか、F15が緊急着陸をしたりする気候では無いが、こちらもしっかり見学させてもらう。市街地の平らな一等地にあるためか、周りはアパートや病院で取り囲まれていて、浄水場の有る北側から全貌が見える。警備犬を放しているので敷地内に入らないようにとの看板が出ているが、どうみても警備犬が柵の下をくぐって出てくるような雑な柵では信じられない。
痛み始めたふくらはぎをかばいながら、再度国道5号線を長万部に戻る。
近づいていた駒ヶ岳が徐々に遠ざかる。あの駒ヶ岳の麓が今度の目標の森町になる。今度は風のない見通しの良い日に来たいものだ。
長万部までの30kmを休み休み戻る。本当ならラジオでも聞きながらのんびりと今来た道を帰るのだが、後ろから近づくバスやトラックに備えるためには、両耳をそばだてなくてはならないので、そんな余裕は無い。
遠くに放送用の鉄塔が見えてくる。たしか、理科大の裏に有った鉄塔に似ているが、そんな、あそこまではまだ10km以上も残っている。
実は、まぎれも無い長万部の鉄塔であった。ほぼ直線の道路が続くこのあたりでは、10kmくらい離れていても見える。鉄塔が赤と白に塗り分けられた放送塔と解るころ、左に曲がると長万部公園の道路標識が見えてくる。
それにしても、道沿いの距離看板が「函館まで88km」まで近くなった。もう、函館はすぐ先である。
それにしても、迂回路が無い、長万部ー八雲間はサイクリストの鬼門である。改めて思い出してみると、帰りの30kmはほとんど路側帯を見ていたことになる。風景の記憶がほとんど無いのだから。
1998.05.16 本日の走行 91km