ロッキード事件、仕組まれたアメリカの陰謀

辻褄が合わないロッキード事件
 飛行機ヲタクの僕はテクノロジーとしての航空と、3流の航空行政の両方に興味があったりする。今の日本は完全に航空後進国で、アメリカに隷属する情けない国になっている。かつては三菱(旧)の零戦(ゼロ戦)で世界をリードし、局地邀撃機の雷電のようなインターセプターを作り、震電に代表される画期的設計技術を持ちながら、敗戦によって全ての活動を停止させられた日本の航空機産業。
 日本人の航空に関する独創性は二宮忠八を持ち出すまでもなく当時世界のトップを走っていた。ところが、敗戦後GHQのお達しにより航空産業は禁止され産業としては壊滅的に崩壊した。
 僕は別に右翼的イデオロギーに立脚している者では無い。どちらかと言うと、ノンポリ的左翼なのかもしれないが、こと、航空産業については、なんでここまで日本がアメリカに隷属しなければならないのか理不尽さを感じる。日本人の文化に「刀」の文化がある。これは人殺しの道具だとかエセ左翼が言うが、基本的にテクノロジーの美である。これが解る日本人には航空機、まさにテクノロジーの美を実現する能力が備わっている。
 機械を機能美と捉える民族が丁度日本の地球の裏側に居る。ペルー航空ってのは、ガタガタの航空機を巧く使う世界でナンバーワンの航空会社である。
 日本が独自で航空機を製造したのは昭和30年代に入ってから。もちろん、ターボプロップのYS−11である。これは通産省の某課長がぶちあげた航空産業復活の一環で生まれたプロジェクトだが、ここで赤澤課長は(名前言ってるって!)航空機の製作を産業として位置づけようと考えていた。
 通産省と言えば日本の産業の旗振り役(おっと、言い過ぎた)なのだから、航空機製造を日本の産業に育てようとするのは当たり前のこと。とにかくアジアで唯一自前で零戦(ゼロ戦)を作くり、西欧諸国と戦った国なのだから。(中国の航空機はロシアからのライセンス生産とその派生系の設計。)
 とまぁ、歴史の勉強になってしまったが、アメリカは日本が航空機に手を出してもらいたくない。アメリカが世界の航空機の供給源でありたい。そんな思惑があったと思う。日本は下請けは許されても、アメリカにたてついて、50年前のように零戦(ゼロ戦)を開発されては困る。そんな思惑がアメリカに潜在的にあった時代背景を考えて欲しい。それは、1960年代後半から70年代に何があったか、そこで日本の航空行政は再度壊滅的に叩き潰された、加えてアメリカに追従しない総理大臣(当時は田中角総理)は排除する。それがロッキード事件の背景なのだ。

アメリカから火の手が上がった
 ロッキード事件は、ロッキード社が傾いた経営を挽回すべくL1011(トライスター、業界ではエルテンイレブンの名称が常識だが、ここではトライスターと称する)を賄賂を使って強引に海外に販売した。これ自体はアメリカの国益にかなうことで、たいして問題では無い。アメリカがこの一件を利用して航空機製造の覇権を握ろうとしたところになんとも小癪な所があるが、経済活動としてのロッキードの活動は特に不正では無い。
 日本の政治家に航空族は居ない。運輸族の一部が航空族とも言えるが、所詮利権の役所運輸省だからバスの停留所の移設から阪神タイガース(阪神電鉄は運輸省の掌にある)まで、幅広い。しかし、空を駆ける航空族は居ない。何故なら、日本の航空は東急に代表される五島一派のものなのだから。
 しかし、時の運輸省の運輸政務次官であった佐藤孝行氏は航空政策の大転換を図るべく、一路線複数会社(ダブルトラッキング、トリプルトラッキング)、しかも東亜・国内の合併による東亜k国内航空(現JAS)の設立とある意味では「改革の人」であった。ま、利権構造改革の人とも言えるが。
 かねてから、アメリカを逆なでするような日本通産省主導の日本航空機製造(株)のYS−11の登場。そして、日本の技術力をもってすれば自動車の次は航空機とは1970年代の世相を考えると規定路線とまで言える状況だった。だから、アメリカはロッキード事件を利用して日本の航空行政と田中角栄総理を根こそぎ壊滅させ、こと航空政策についてはアメリカ主導に逆らわず隷属する日本って路線を進めるチャンスと考えたのだろう。また、時の総理大臣であった田中角栄は特に親米派では無く、アメリカの意向が通りにくい総理大臣でもあった。その両者を一網打尽にしたのがロッキード事件であった。
 そもそも、ロッキード事件の中核であるトライスターを全日空が購入するようにセールスしたのは時のアメリカ大統領のニクソン大統領で、要請したのは1972年9月1日のニクソン・田中角栄ハワイ会談だったのだ。もはや全日空がトライスターを購入するのは日米の政治問題であり、後に中曽根康宏氏が政府専用機としてB747ジャンボ機を2機ボーイングから買ったのと同様な日米の政治的配慮が背景があった。
 にもかかわらず、トライスター購入はロッキード事件へと昇華していく。これが不思議である。

アメリカの日本航空産業叩き壊し
 まず、当時の全日空の社長である若狭得治氏は運輸省で「天皇」と呼ばれた事務次官であった。彼が次官を辞め全日空に入り、全日空の次期大型ジェットの選定にからんでいたのである。もちろん、前任者の大庭哲夫氏を訳の解らない「M資金事件」でおとしめて若狹徳治氏は社長になったって噂はある。
 しかも、大庭哲夫氏は日本の航空に広い視野を持ち、若狭得治氏は全日空だけの利益に視野を持っていたと思われる。何故なら、大庭哲夫氏はロッキード事件の国会証人喚問で自らのサインをすべき書類に血圧が高揚して手が震えペンが飛びさったほど、この事件に関しては長年の恨みがあったのだ。
 がしかし、彼は真実を記することもなく亡くなってしまった。たぶん、全日空の覇権争いについて、運輸省の官僚であった若狭得治氏が果たした役割はロッキード事件で有罪判決を受けてなお、全日空が守りたい何かがあるのだろう。つまり、全日空ではロッキード事件なんかは会社の経営からしたら蜂に刺されたくらい軽微な事らしい。それは何故なのかとの疑問が浮かぶ。
 そのそも、ワイロは全日空から田中角栄氏を含む国会議員に流れている。これがおかしい。買ってもらったロッキードが払えば良いものをあえてリスクを侵して全日空が受取り、個々の議員に賄賂として配っている。総額3000万円(ロッキード事件、全日空ルート)は何故、全日空が配る必要があったのだろうか。全日空は航空機を買った側である。買った側が何故、斡旋してくれた人に謝金を払う必要があるのだろうか。これがロッキード事件の謎である。通常は買って貰った側、つまりロッキード社が金を配る役割分担になるのだが。
 それは、全日空名目で払い込まれなければならない全日空の思惑が隠れているのだ。でも、渡したロッキードにも思惑はあるはずだ。実はアメリカの法律で海外での販売活動で該当する国の政府関係者に金品を贈ることを禁じている。いわゆる相手側政府に対する贈賄の禁止である。ロッキード社から国会議員に金品を贈ることはアメリカでは法律違反になる。国会に影響力を持たない全日空と法律の縛りがあるロッキードの考えた妥協策がロッキード事件における全日空による資金配りだった面もある。
 しかも全日空ルートで流れた金は多面性を持っている。全日空の思惑はダブルトラッキング、トリプルトラッキングに向けた路線拡大の政治献金、ロッキード社の思惑は防衛施設庁へ取り入るための政治献金。アメリカ政府(もしくはCIA)の思惑は田中角栄総理大臣の失脚への演出。これらの数者の利害関係が複雑に絡み合ったロッキード事件は、切り口を違えると見えてくるものが違うので、その複雑さはさらに増す。

領収書の項目名が「ピーナッツ」な訳
 マスコミの誰も触れない、推測もしない。だがロッキード事件の証拠品の中には工作資金への領収書があり、これには領収金額の名目として「××ピーナッツ」と書かれている。これって、トライスター販売への工作資金の領収書だろうか?
先に書いたようにトライスターの別名はL1011である。ロッキード事件で使われた領収書の項目名が何故ピーナッツなのか。ピーナッツと言えば、チャーリーブランくらいしか思い起こせないが、Pで始まる、当時の航空機ビジネスを考えてみる必要がある。
 ロッキード事件がなにか消化不良なのはニクソン大統領にハワイで頼まれた田中角栄総理は日本の国益(それが、米国隷属であったとしても、国益優先)のためにトライスターを選んだ(それしか日本に許されないくらい、今も当時も日本はアメリカに隷属しているのだが)。これがマスコミの報道である。しかし、同時に防衛庁の次期防衛計画に早期警戒機の話があったことを思い起こしてほしい。
 これはP3-Cオライオンである。この機体の価格は搭載するオプション機器を含めると「言い値」である。軍事機密に属するので商品では無い。基本的に価格が有って無い状態である。特に早期警戒機としてのレーダー情報の解析プログラムはアメリカの戦略によりブラックボックスのまま提供される。これに価格なんか無い。
 しかもP3-Cオライオンはトライスターと同じロッキード社が製作した機体である。ロッード社の再建に役立つ商品である。結局、ロッキード事件とは民間航空に名を借りたアメリカの日本の根源に係わる防衛の機器にまでおよぶ大疑獄事件だった。
 納得いかないのはロッキード事件を運輸省の民間航空機導入における許認可にからむ汚職としてしか立件しなかった検察の姿勢である。
 ロッキード事件で小佐野賢治氏に切った領収書はP3-Cオライオンに対するリベートである。だから、ピーナッツ(P)なのである。方や、全日空が政治家に配った裏金は出所はロッキード社かもしれないが、実態は全日空の路線拡大(ダブル、トリプルトラフィック化)、海外路線拡大のための許認可権に対するものだった(結局、中国路線は日航に取られて意味が無かったのだが)。現在で言えば、若狭得治氏が株主代表訴訟されてもしかたがない、会社の金を的外れに使った政治献金だったのだ。
 天皇と呼ばれた運輸省の官僚であった若狭得治氏が、民間の会社である全日空をバックボーンに、運輸省流を行使して、たまたま青空天井の防衛施設庁の不正隠しに利用された。若狭得治氏も了承の茶番劇、それがロッキード事件ではなかったのか。裏に田中角栄総理失脚までのシナリオが書かれていたのは若狹得治氏も知らなかっただろう。
 好きなタイプでは無いが、当時の航空行政の改革を行った(その、腹の中に何があったか解らないが)佐藤孝行氏は、決してマスコミの馬鹿が書いているような私利私欲の人では無い。肩を持つわけでは無いが、日本が航空に手を出さないようにアメリカが叩き潰そうとした時に運輸政務次官を務めたという因縁かもしれない。それがロッキード事件の陰謀に巻き込まれたのが不幸だった。
 その後、保身の国会議員たちは、ロッキード事件恐さに、航空行政には手を出していない。勉強もしないし関心も無い。そして、アメリカとエアバスインダストリーによる世界制覇は完結した。唯一たてつく日本を潰したのだから。日本はカナダのボンバルディア社のような産業を興す機会を失ったのだ。
 2012年加筆:強烈なダウンから立ち直りMRJを始めるまでに30年を要した。

  天皇と呼ばれた若狭得治氏

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2000.02.09 Mint