長崎原爆慰霊の日に美浜原発事故

美浜原発3号機の二次冷却水管破断
 偶然の一致だが、美浜原発3号機の二次冷却水復水管の細管破断で現時点で4名の作業員が亡くなった。しかもこの美浜原発3号機は8月14日から定期点検を始める直前の事故である。沸騰水型から見れば安全性は高いと僕は思うので加圧水型は管理を十分に行えば十分安全に運転出来ると思っていたが、今回の事故は管理の隙で起こった事故(もちろん、事故はこうして安全管理の隙を縫うように起こるのだが)であった。
 加圧水型の場合、一番神経を使うのが蒸気発生器で、過去何回も一次冷却水が蒸気発生器の細管の亀裂により二次冷却水側に漏れだしている。これを蒸気発生器の細管に蓋をする(詰める)方法で回避しているのだが、蒸気発生器を交換する方式に改めるべきだろう。それが、危機管理を含む安全管理の鉄則だ。
 今回の美浜3号機の事故は一般の火力発電所でも使用経験が積み重なった2次冷却水側の事故。稼働から27年間、一回も検査をしていなかった。その経緯は
1)三菱重工89年から96年の間に点検台帳作成時に漏れていた。
2)昨年4月に関西電力関連会社の「日本アーム」が点検漏れを発見した。
3)関西電力側は11月にその報告を受けたが本年8月14日の定期点検まで放置した。
となる。
 原発に固有の問題では無く、火力発電所に共通するタービンからの戻りパイプの破断って信じられない事故だったのだ。

関西電力の返答は矛盾する
 朝日新聞のインタネ報道によると、関西電力は美浜1、2号機を含む8基の原子力発電所で二次冷却水系の詳細検査を00年〜03年に行っている。何故か美浜3号機は漏れたのだが関西電力の説明は「3号機より古い1、2号機の配管には厚みの異常が出なかった」とのこと。本当に、こう答えたのだろうか。
1)美浜原発1号機(出力34万kW)
2)美浜発電所2号機(加圧水型、定格電気出力50万キロワット)
3)美浜原発3号機(加圧水型軽水炉、出力82万6000キロワット)
この3機の中で出力が一番大きい3号機の点検を省略する理由がこれより出力の小さい原発が異常なかったからとは、技術のイロハも知らない管理体制なのか、マスコミが間違って伝えているのかのどちらかだろう。
 通常、まったく出力の違う機械を「古い方に異常が無かったから新しい方も異常が無いだろう」とは考えない。別な機械であり、しかも新しいほうが新しい技術(未知の技術)を使っているのだからより慎重になるべきだ。
 現時点ではマスコミのミスリードのような気がするのだが、この感覚は絶対におかしい。
また、配管が炭素鋼製配管と報道されているが、通常この部分は強度の強いステンレス製配管に変わっているべきではないか。何故、古い炭素鋼製の配管を使い続けたのだろうか。特に危険を感じなかったのか単純な経済的理由だろうか。10気圧142℃の復水器からの高温高圧な水が通る部分なのだから慎重に対処する必要があったのではないか。
 また、一部のマスコミで「火力発電でも使われている技術」って指摘があるが、これは間違っている。火力発電所の蒸気タービンの出力は原発から見ると1桁小さい。正確な数値は憶えていないが2万5千キロワットくらいじゃないだろうか。北海道電力の厚真火力で4基で175万だから原発の半分程度だ。

原発の是非とは一線を画して欲しい
 二次冷却水だから放射能漏れは無いので安心するのは解るが、原発での最大の安全管理は主冷却水パイプの破断への対応だ。美浜3号機なら一次系となるが、必ずしも事故は二次系で起こるとは限らない。同じ技術なのだから常にパイプ破断による冷却水喪失には備えなくてはいけない。
前にもここで書いたが91年2月に同じ美浜原発の2号機で蒸気発生器の細管が破断し、日本で始めて緊急炉心停止装置(ECCS)が作動した大惨事一歩手前の事故も起きている。ECCSとはエマージェンシー・コア・クールダウン・システムの略称で緊急炉心停止装置なんてもんで無く「何が何でも原子炉の暴走を避けるために、壊れても良いから核反応を止めさせる」って最後の砦だ。これによる熱ストレスで原子炉が壊れることもあるし、再使用出来なくなることもある。
 最初は寿命30年と言っていた原子力発電設備を騙し騙し30年を越えて使うのだから、それなりにナーバスになって安全点検を慎重に行う必要があるし、決してローコストな発電では無いことを肝に銘じて必要な安全体策のコストを省略してはいけない。
 技術的には大事故一歩手前だが、感情的に「原発いらない!」ではなくて、我々はいかに緩やかに原発から他の発電に移行するか考えなら、なおかつ出来てしまった電発を安全に管理するか考えていかなければならない。もちろん、大惨事が起きてから「原発はやめよう」ではなくて、ゆるやかに原発を安全に管理しながら終息を迎える方法を考えて行かねばならない。テレビのコメンテータの無責任な「だから原発はいらない」なんて風潮に流されてはいけない。

何故、美浜に集中
 美浜原発は関西電力が最初に原子力発電を始めた所。現在1〜3号機が稼働している。1号機は70年11月運転開始、2号機は72年7月、3号機は76年12月それぞれ運転開始。91年2月に2号機が先のECCS作動。3号機は00年と02年に放射能漏れを起こしている。特に02年は一次冷却水14.3トンが漏れたが最初は少量が吹き出した程度だったのでビニールシートを掛けて発電は続けていた。漏れが一時間当たり400リットルに達して始めて原子炉の停止を決断している。
 30年を経て古くなったのと、古くなったから多少の漏れは日常化していたのではないだろうか。まったくの邪推だが古い機械は上手に手なずけて使う。車ならブレーキの効きが悪くなったのでスピードを出さないとか、手間で早めに減速するとか。しかし、原子力発電については上手に使うよりも、正しく管理して異常があれば使わないに徹してもらいたい。
 電力により生活が便利になる反面、原子力の危険とも背中合わせなのだ。便利な電力の供給が絶たれないように多少の危険は犯すってことはあってはならないのだ。それが、先の東京電力原子力発電17基停止、安全点検の教訓だ。その教訓が生かされない、それも定期点検の5日前、しかも長崎原爆被災者慰霊祭の日に事故が起こるのは因縁めいている。
 東電検査隠し、関電美浜3号機事故、次の事故を防ぐためにも原因究明(だいたい見えてる)と教訓を生かさなくてはならない。次は何処かで管理の弱い原発が何処に有るのか解るのだから。

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2004.08.05 Mint