札幌夏季オリンピック誘致運動を斬る
山崎広太郎福岡市長が暴論
札幌の夏季オリンピックを想定した試算が出来上がった。その内訳は1兆8000億円が先行して流れてるが、山崎広太郎福岡市長が「1兆8000億なんげ馬鹿げている。札幌はやる気が無い。わしは1000億円でやれと指示してる」と暴言を吐いている。
そもそも、試算根拠を知らないで「札幌はやるきが無い」と良くいえたものだが、ま、福岡、東京、札幌と動きがあるのだから牽制しておこうって発言が、これまた日本列島を北へ南へマスコミの手を経て情報が流れると面白おかしく編集されてしまうのであろう。
で、札幌市の試案が札幌市のホームページでも見つからない。地方議会の悪いところで「議員様」に見せてから市民に見せろってことなのだろうか。ま、しょうがないのでマスコミ情報から起こした札幌市の夏季オリンピック事業試算の試算額を表に整理してみた。
札幌夏季オリンピック開催費用試算。
財政構造の複雑さから単純に言って札幌市の夏季オリンピックへの費用負担は真水で2550億円。他は国や道、公団、公社の事業として負担してもらうって計画だ、総事業費1兆8328億円の中で14%だけ札幌市が負担し、残りは他人(たって、最後は税金になるのだが)担ってもらおうってのが札幌市の試算だ。
山崎広太郎福岡市長が言ってるのは市の負担と総事業費の違いに気が付かない(もっとも、福岡市で検討が進んでいれば、信じられない勘違いなのだが。後日の情報によると福岡市の担当部局では「試算もしていないので札幌市の額がどうこう言えない」と取材記者に答えている。ま、福岡市もぶち上げただけで本気でやるつもりは無いのだろう。)暴言なのだ。
夏季体育施設がそもそも少ない札幌で開催した場合と福岡市で開催した場合の差額は2.5倍程度、は、想定内ではないのだろうか。
試算表を見て最初に気が付くこと
やはり積雪寒冷地である札幌市で馴染みの無い施設が多い。馬術場、これって桑園の競馬場に作れないものだろうか。はたまた、日高の馬産地には無いのか? このあたりに試算の精度の問題を感じる。
水泳競技上はこれまた積雪寒冷地に不要な施設で現在国際規格のものは存在しないから新設となる。用地買収費も嵩む。アーチェリーはどうも西区の五天山公園の整備で作ることは可能なようだが、なんせ、積雪の多い山を利用した公園なのと、完全に午後は逆光になるので、別途必要かもしれない。
不思議なのは旭川総合体育館や小樽総合体育館を例に屋内競技を想定してる割に、国際バレーボール大会が可能な江別総合体育館が抜けている点。
真駒内屋外競技場を整備するのに屋内競技場(アイスアリーナ)は使わないのか?
1万7000人の選手村は、正直札幌市内には用地が無いだろう。1972年当時の札幌冬期オリンピックの時代は真駒内が開発途上だったが、今なら石山の奥、定山渓手前くらいにしか選手村用地は確保できないだろう。逆に石狩市との市街化調整区域を一気に開放する考えもあるが、この地帯は万が一の石狩湾地震で石狩湾津波が起こったらひとたまりも無い地域なので、やはり山に上げたほうが良いだろう。
結局のこ試算表からは予定を立てる以前の市民アンケートに向けた「やっつけ仕事」の匂いしか伝わってこないのだ。
そもそも、オリンピックを何故開催するか
サッカーのワールドカップで作られたサッカー専用競技場。これの維持管理はどのようになっているのだろうか。地域のインフラとして利用されているだろうか。そもそも、競技場は競技人口があっての施設で、北海道に7万人収容の屋外陸上競技場が必要なだけ競技人口があるかはなはだ疑問だ。
そもそもオリンピックは商業主義に押し切られ発展途上国には手が出せない世紀の祭典になってしまったが、本来は国際協調の元、発展途上国のインフラ整備を国際協力の元で実現する意味が大きいのではないか。例えば東京オリンピックで整備された東海道新幹線は世界銀行のローンによって整備されたのだ。
インフラ整備は整備が進んでいない地域にこそ効果があり、今の札幌で何に使うのか、たぶん、函館ー札幌の200kmの新幹線整備費が1兆8000億円くらいだから、これに使う予定なのだろうが、これは航空機にかなわないのだから、不要なインフラ整備だろう。
社会インフラ整備がオリンピックと対で行われる時代に今の日本は居ない。国家はそれぞれの時代背景を持って成長するが、日本のインフラ整備による発展の時代は終わった。中国がインフラ整備による発展に一番近く、今回の北京オリンピックはそれなりに国の発展の時代背景と合致している。
日本は、産業の転換に最も力を入れなければならない時代が長く続いているが、進捗は遅い。隣国の中国が工業化拡大で突っ走ってる間に、日本はアルビン・トフラーの「第三の波」の時代にいかに転換するか、産業構造を変えていくのか、そのための1兆8000億円なら説明も付くと思うのだが。旧来の技術の拡大だけの新幹線整備をオリンピックにかこつけてやってしまおうってのは、政策としては愚作である。
この試算表で市民アンケートを行うのか
正直、意図的な情報操作によってあたかも民主主義の基本のような「住民判断」を目指すのはいかがなものか。かつてアメリカのジェファーゾンは「情報は民主主義の糧である」と言っているが、まさに正しい情報では無くて意図的な情報が提供されては民主主義は成り立たない。
札幌で夏季オリンピックを行うのは施設面で不要である。札幌は冬季オリンピックがふさわしい地の利があり歴史がある。夏季オリンピックを行うのは不自然でとかく資源の浪費に繋がる。そのあたりを前面に出して議論するのが民主主義の鉄則だろう。
そもそも試算を見ると他人のフンドシで札幌一人勝ちみたいな試算だ。道費をあてにし、国費をあてにした札幌夏季オリンピックなんて発想そのものが20世紀型なのだ。そして、北海道はいつもジャンボの後輪よろしく時代に後れて最後に離陸する。
もちっと進歩的な金の使い方があるだろう。昨今の財政逼迫で支出削減ムードが蔓延してるが、一番大事なことは財政逼迫の原因を白日の下に情報提供するすること。そして、責任者を特定すること。別に責任者を今さらし死刑にしようってじゃない、二度と繰り返さないために責任が何処にあったか明らかにしておかないとまた繰り返す。だから、責任を明らかにすることで子孫に過ちを繰り返さないように、民主主義の糧である情報を残すのだ。
僕から見たら意図的に稚拙にでっち上げられたこの試算表を元に市民アンケートを行うって判断をする上田札幌市長は弁護士上がりなので詭弁が上手ってことだろう。自己に有利なように情報を操作するのが敏腕弁護士だ。だが、地方自治の現場では情報操作は民主主義にそむく最低の選択だってことを知らねばならない。