テクノスーパーライナーを北海道苫小牧港に誘致せよ!
船体まで完成したのに
テクノスーパーライナーとは何かあたりからの説明が必要だろう。
日本の造船技術の粋を集めて高速フェリーを建造し世界にアピールしようって若干バブルっぽい計画がバブルもはじけた1990年代に国土交通省(当時の運輸省)の予算化によって研究会がスタートした。テクノスーパーライナー実用船に至る細かい経緯は1998年(平成元年)から実用化研究を行い、1997年には省内研究会を発足させて、実用化には多額のコストがかかり、民間育成の見地から国の事業育成補助が必要との結論(ま、既成シナリオの匂いもするが)となった。実際の行動計画は、テクノスーパーライナー保有会社を設立し、ここに国の関係機関の出資や補助を集めて2002年(平成14年)に実用就航させようって計画だった。このあたりYS-11の開発とその後を見るようで「いつか来た道」と感じないでもないが。
その結果できた会社が(株)TSLシステムズ→(株)テクノ・シーウエィズ(現在は不掲載)となる。ここがテクノスーパーライナーの保有会社となる。
全国でテクノスーパーライナーの就航誘致合戦が行われたが東京との小笠島(父島)を結ぶ航路が最終決定された。前述の会社がテクノスーパーライナーを小笠原海運にリースし、東京−小笠原父島に就航させようとしたが、原油の高騰や利用客の当初見通しより減少等の背景から事業に年間23億円(小笠原海運試算)〜21億円(東京都試算)の赤字が見込まれ、テクノスーパーライナー就航計画が宙に浮いた格好になっている。
何故、テクノスーパーライナーに関心があるかと言えば、1990年当事に今回の建造元である三井造船と付き合いがあり「どうですMintさん、こんな先端事業もやってるんですよ」って言われて『バブルっぽいなぁ』と思ったことがある。その後、機会があるごとにテクノスーパーライナーの情報を得てたのだが、これはやはり海上輸送の革命だなと思った。大型トラックの最高速度制限によって各社のフェリーが昨今速度アップを余儀なくされ、海上輸送復活の兆しが見えてきたときに今回のテクノスーパーライナー計画の白紙撤回とは時代の流れに逆行する計画の行き詰まりと感じる。
もうもう、知恵が無い。早速、北海道庁はテクノスーパーライナーの苫小牧港への誘致に動くべきだ。東京都の小笠原航路では採算が取れないかもしれないが、千歳−羽田間が航空路線のドル箱であるように、東京−北海道にもうひとつの高速海路を引くのだ。そもそもテクノスーパーライナーのキャッチコピーは「ジェット機がライバル」なのだから。
観光資源としてのテクノスーパーライナー
テクノスーパーライナーの誘致に横須賀市が立候補している。北海道の苫小牧市も誘致に動いたが小笠原航路が選定さふれるに及んでテクノスーパーライナーの2船目の建造が見えない状況で発展的に解散してしまった。実はテクノスーパーライナーの運行には現在の港湾では水深が不足する。運行に適した港湾を持つ所が限られるのが現状だ。
苫小牧港はテクノスーパーライナーの運行を前提に港湾の整備を進めて来た。新たな港湾整備を行わなくても運行が可能である。横須賀−苫小牧間に就航するとして、時速90km運転が可能であれば10時間で結ぶ高速航路となる。テクノスーパーライナーなら現在のフェリーの半分の時間で貨物を運ぶことが可能になる。苫小牧を夕方出ると翌朝の青果市場に間に合う。トラック便より数段早く農産品を関東に運ぶことができる。
一方では高速、ハイテクなテクノスーパーライナーを観光資源に利用する手もある。ハイテク造船の粋の見学者は首都圏からテクノスーパーライナーに乗船し、船内を見学して苫小牧到着。ここからJRで千歳空港に入り、帰りは航空機で首都圏に戻る。船内1泊見学会で翌日の午後には東京に戻れる。
北海道観光の入り口として首都圏からの折り返し便で朝出発し夕方には洞爺温泉に入ることもできる。それから先はバスで北海道各地を観光し、帰りも船中泊で首都圏に戻る。宿泊を船中にすることにより費用を安く抑えた北海道観光が可能になる。
要は北海道観光とハイテクを結びつけて、宙に浮いたテクノスーパーライナーを走らせるビジネスモデルを北海道庁が提言すること。そこから開けてくるものは大きい。
また、北海道の農産品の輸送の問題がある。現在のJR貨物の輸送は青函トンネル経由だが、新幹線が延びてくると現在の路線は並行在来線ってことでJR東日本は地元での第三セクタ鉄道として切り離したい意向だ。これも無茶な話だがJR貨物が在来線の使用料を第三セクタに払って貨物輸送を続けるのはコスト的にきつい。かと言って全面的にトラック便に替えるには北海道と首都圏は距離がありすぎる。そのためのテクsノスーパーライナーによるフェリー便の拡充が新幹線整備の逆な効果として検討する必要があるのだ。
実証実験としてのテクノスーパーライナー
どうも聞くところによると運営コスト、特に燃料代が通常のフェリーに比べて割高で小笠原での就航では主に燃料費の問題で大幅な赤字が出る試算になったようだ。
実用一歩手前は下田港−清水港を結ぶ「災害時緊急船」としてのテクノスーパーライナー「希望」があるが、燃料代の高騰で実験は早急に店じまいしてしまった。
コンコルドのマッハ2に比べれば時速90km程度の速度でさほど抵抗が増えるとも思えない。水の抵抗は水中翼船に代表されるように船体設計手法で軽減可能だ。三井造船が作ったテクノスーパーライナーも海面からホバークラフトのように浮いて走行する。この浮上にエネルギーが使われるのか、高速を出すために推進力にエネルギーが使われるのか。どちらにしても海上輸送は本来、帆掛け舟で始まったようにローコスト運行の研究の余地は大きいはずだ。
また他の船舶と比べて格段に高速の船が衝突を回避しながら高速を保ったまま運行するにはどうすれば良いか。現在の航空路のような考え方を適用するのか、テクノスーパーライナーの自動制御の世界で安全運行を自律的に確保するのか、これも研究課題だろう。
現在のフェリーは先に述べたトラックの速度規制から時間短縮のために高速運航を余儀なくされ、小樽−舞鶴間のフェリーでは本来接岸用に使う舵と一体になった電動スクリューを通常運行時にも稼動させ30%以上の時間短縮を行っている。今まで30時間かかっていたのが20時間に短縮している平均速度は30ノットにも及ぶ(約50km/h)。テクノスーパーライナが50ノット(80km/h)を目指してるのに比べて既に30ノット就航は現実のものになっている。
それほどずば抜けた性能で無く、せいぜい10年先を目指したテクノスーパーライナーの実証実験は実用試験に近い成果を早急に出せる研究課題でもある。
既に船が完成してるのだから、これを実際にフィールド(長距離運行)で試さなくては宝の持ち腐れになってしまう。経済性も大きな研究課題だろう。そもそも省エネが進んだ日本で何故、小笠原に行くと片道で2000万円も燃料代を食う船を研究したのか。燃料もジェットタービン用に航空燃料(灯油)と同等では運行コスト面での優位性が発揮できない。
もうちょっと我慢すればテクノスーパーライナーよりも既存のフェリーで十分ってのでは世界に誇る技術とは呼べないだろう。
「過疎地だから」の論理は通用しない
北海道をITの実証実験の場にするときに、常套句として使われるのが「広域遠隔過疎地の北海道において」って言葉。もう、これをキャッチコピーにするのはやめよう。「広域な北海道を利用して」とか「高速交通の必要なモデル地域として」とかプラス志向のキャッチコピーを使おう。
テクノスーパーライナーが就航するってことは千歳−羽田の航空ドル箱路線、JR北海道の青函トンネルの2つに加えて海路が開けるわけで、陸海空3拍子そろった交通体系の中で遠距離輸送のモーダルシフトを実験できる。
ホクレンも牛乳専用運搬船まで作って生乳の本州送りを行っている。北海道の農産品を中心にした輸送手段がさらに一手増えることになる。ま、生乳輸送は現在需要低迷で苦戦してるが。
「高速道路の妄想」って矛盾がある。先の例と同じように地方に高速道路を敷設して都市住民の流入をはかろう、地方の利便性をあげようって発想が50年も続いてきた。その結果、交通が便利になれば、なにも田舎に住まなくても便利な都会に住めば良い。必要があれば短時間で田舎に戻ってこれるってことで過疎促進機能として作用してきた。人を運ぶから過疎になる物を運べば地元に積送等の仕事が残る。地域の雇用の確保の面からも港をテクノスーパーライナによるハブにした物流は効果的だ。
昨今、開発局が行っている利雪計画で、苫小牧港に近いウトナイ湖の氷を保存し夏場に首都圏の冷房の資源として輸送するって実験が行われてる。これもテクノスーパーライナーを利用すれば歩留まり良く輸送でできるはずだ。
高速のフェリーが安全に運行するための航路の管理、船体の航路選択の自動制御。コンコルド就航に向けてイギリス・フランスが先端的役割を担ったように、北海道を舞台に世界の先端技術を実証実験する。是非ともテクノスーパーライナーの就航に向けて関係各方面への働きかけを始めてもらいたい。
苫小牧、室蘭でのテクノスーパーライナの誘致期成会を再度活発な活動を再会してもらいたい。