耐震偽装事件を別件逮捕で解決できるのか

めちゃくちゃな別件逮捕劇
 法律の拡大解釈を法律の乱用と呼ぶ。今回の逮捕劇は共通項は「耐震偽装事件関係者」なのだが、逮捕容疑は、バラバラ。とりあえず引っ張る詭弁としか感じない。
木村盛好社長(熊本:木村建設)は建設業法違反(虚偽申告)容疑、国土交通省に提出した決算書類の営業利益を粉飾していたという。
姉歯秀次・元1級建築士は建築士法違反(名義貸し)容疑、知人の建築設計業者が自治体に出した建築確認申請書に自分の名義を貸した疑い。
「イーホームズ」は公正証書原本不実記載(虚偽登記)容疑、架空増資を行ったとして強制捜査。
 こんな段取りで何が明らかになるのか。最大公約数は限りなく耐震偽装関連なのだか全部、別件逮捕になっている。別件であるからそれぞれを送検しても耐震偽装に関係する罪は問えない。
 とにかく引っ張ってしまえって法律の乱用が懸念される捜査方法になっている。m世間体が悪いので件名は別にして逮捕しておけば警察は責められないとでも考えているのだろうか。
泥棒が捕まって、警察に尋ねたら、速度違反で捕まえたので泥棒の件は感知しないって感じだ。そんな捜査方法ではゴールは見えないだろう。ホリエモン事件も結局、粉飾決済問題だけで終わるのではないか。特捜部の恥の上塗りにならないよう願う。

そもそも耐震偽装を裁く法律が未整備
 基本はチェックにより正しい建物しか施工されないって体制整備。その基本は幾つもの関所を設ければ江戸まで兵士はたどり着かないって江戸時代の発想と同じ。関所が間違って通したらって危機管理が無い安全管理の発想。それ自体、低コストで効率的な仕組みで代々受け継がれて何も問題が起きなかった。
 その仕組みの中には国が検査するので最後は国の責任で対応するって暗黙の危機管理があった。ところが検査機関を民間に移すときに、この危機管理の法案整備がなされなかた。国が補償しないまでも建築申請許可保険とか、事業者を指導して万が一への対応を考えておくべきだったろう。このあたり、日本には洞察力のある政治家が居ないと思う。民間に移すときの利権ばかり考えて立法府の責務をないがしろにしていたのだから。
 民間が行えるものは民間に開放するのは筋だろう。しかし、国民に同じ水準のサービスが維持されることを担保する法整備は必要だ。また、実効ある制度になるために国が担う責任は別途新たに発生する。環境を整えてから委譲すべきであった。

国の責任をうやむやにするな
 事件の当事者を市中引き回しにして耐震偽装事件は終了って筋書きじゃないのかと疑ってしまう。そもそも先の地震で震度5を経験して建物はまったく問題なかった事実から耐震計算自体に疑問も出ている。科学的な根拠が本当にあるのか、また、2方式の計算方法があって、一方で1.0以上でも他方で1.0以下になる矛盾は放置するのか。
 先の危機管理である保険制度もしくは国の担保はどのように整備するのか。
課題が山ほどあるのに当事者の市中引き回しでは何も課題が解決しない。国会も証人喚問なんかで政治ショーをやってるのでは無く、不備な部分を立法してカバーするって行動をとらなければならない。
 特定の悪人によって引き起こされた事件では無く、構造整備が不備だって事実を踏まえて、より合理的な構造を構築する責務は立法府にある。特捜部が出来るのは責任者を市中引き回しするだけで、根本的解決には結びつかない。

やはり別件逮捕は法の乱用だ
 特に今回の耐震偽装での別件逮捕には疑問が残る。木村建設については証拠隠滅の危険性は認めるが、これは強制捜査で十分だろう。嫌疑から見たら逮捕までする必要があるかどうか疑問だ。姉歯氏については嫌疑を認めているわけで、逮捕してまで調べる必要性を感じない。
 ホリエモンを逮捕して沖縄をめぐる不正土地取引と裏社会の部分も炙り出せないでいる今の東京地検のあせりが今回の勇み足の原因ではないのか。
 法整備の欠陥もあって、動きづらい面はあるだろうが、今回の嫌疑はばらばらで目的の本丸に近づけるとは思えない。

button 耐震強度不足で建設は立法府の構造的問題