耐震強度不足で建設は立法府の構造的問題

建ってみなけりゃ解らない
 住民自身が部屋の壁を剥がして耐震構造不足に加えて施工の手抜きも暴かれようとしている。そもそも設計図のとおりに施工しないのだから、設計段階で強度不足が無くても施工段階で耐震強度は落ちるわけで、もはや耐震強度については誰もチェックの方法を持たないって根本的問題が明らかになってきている。
 国会での証人喚問も議員の決め付け演説会に終始し、あいかわらずの国会劇場だった。捜査が始まった段階で(捜査開始が、何故か遅いのが裏で何かが動いて証左と感じて不気味だが)証人は「自らの罪になるのでお答えできない」と証言拒否が可能になるので、年空けに証人喚問が国会で行われたとしても国会劇場第二幕でしか無いだろう。
ま、流行語大賞の時期を逸したが民主党の「一気通貫(いっきつうかん)」がアピールした、これは全然本来の意味と違う用法で「一基通関」との意味で使ったのだろう。もっともマージャン用語としての一気通貫以外にゴルフのルールにもこの一気通貫があることを民主党は知らなかったようだ。
 4人でラウンドして時に4人のスコアが仮に4打、5打、6打、7打と並んだ時に7打打った人間が4打、5打、6打の人間に1ポイントつづペナルティを払う遊び(賭け事)のルールにも使われる。これなんかまったく賭ゴルフ容認な訳で、国会の場で使う用語としては不適格だろうに、民主党も常識の無さをひけらかしてしまった。
 通常、意匠設計が行われて、これを強度計算して鉄筋や鉄骨の妥当性を設計するのが強度計算になる。この段階で設計図として検査を受ける(建築確認検査業務)のだが設計図面通りに施工されなければ、これまた形骸化した制度を「お約束」で通しただけになる。
 その原理原則に合わせて強度計算書の検査を行わなくても、たいいして影響は無いって風潮がまかり通ったのだろう。
 民間は無駄なことは省略して経費を浮かそうとするだろうし、強度計算をいかに正確に行っても、本来建物の強度は施工が決めるのであれば、設計図面段階での建築確認検査は、そもそも合理的では無いって本質があるのだろう。それについては国会では何も出なかった。本来、犯人探しでは無く、立法によって構造的欠陥を正す目的での国会で証人喚問を行うのだから、犯人探し、もしくは犯人と決めつける演説がいかに立法府の責務として場違いか、少し考えたら解りそうなものだと思うが。
 お涙頂戴の問責演説に至っては国会議員の人格すら疑ってしまう。

デフレ時代の建築業が陥った構造問題
 日本の経済が上向き加減な事に水を差す結果になった今回の事件だが、建築業界はバブルがはじけてから15年、構造的不況業種になっていた。公共事業の縮小により全体のパイが小さくなり、事業者過剰の状態で建て主側が主導の中で価格競争と少ない仕事の取り合いになるほは当然の構造である。
 総研が台頭したのもフューザが台頭したのも建て主が主導権を持って業者を選別する中で建築には素人の建て主に取り入った業者が業績を伸ばせる。だから、木村設計、木村建設はまさに地図に残る仕事としての建築の誇りを捨てて建て主優先の営業姿勢を貫き、結果として狭義な顧客重視で広義な顧客を裏切ったことになる。
 コストダウンが出来て同じ物が作れるには技術革新が必要だが、手抜きでコストダウンを計るには何の技術もいらない。本来、コストダウンは技術革新の裏打ちがあってこそ評価されるが、安い建材、手抜きで工期短縮、はては設計段階から耐震構造を低く設計では、コストダウンの本来の意味と違い「手抜き」としかならない。それを総研の詭弁をもって取り繕った構造が、ま、民主党の言う「一気通貫」なのだが、国会の場では「指示してるだろう」だけで背景を推論する所までは気が付いていない。
 インフレの時代にはマンションを買えば転売してさらに大きなマンションへ引っ越すなんて芸当が出来たが、今のデフレの時代に不動産を取得しても右肩上がりに資産価値が増える構造には無い。だから安くて広いってセールスポイントが100年マンションなんて質の論議よりも営業力を持つ。ただしこれは賃貸なら通用するが、分譲マンションでは眉唾ものだ。現に阪神大震災で一軒家は建物が壊れても土地が残るが倒壊マンションは何も残らなかった。
 ま、地震国では無いので比較は出来ないが、ヨーロッパでは100年前の建物でも立派にリフォームして賃貸マンションにしている。日本では「30年持ては良いですから」なんて建て主のオーダーで分譲マンションが作られている。

都市計画はいわゆる「市営住宅」型でどうだろう
 大きな発想の転換を行って、都市部もしくは人口の集中する地域では土地の私有を認めず、現状の私有地は信託形式で地方自治体が借り上げるってのはどうだろう。
 そこの用地を利用して何を作っていくかは地方自治体の裁量となり個々人の自由は認めない。但し、指定郊外地域では自由に個人住宅や集合住宅を建設できる。そんな制度を整備し都市計画を進める地方自治があっても良いのではないか。
 都心部の商業地域には高層住宅マンションを主に建築し、市営住宅方式で賃貸マンションとする。郊外は民間も含めて宅地造成を行い、こちらは土地も含めて販売する。
 実は日本は国債発行残高が700兆円にもなろうとしているのに国有財産が同額程度ある。「母屋でおかゆ食ってるのに離れですき焼き食ってる」(c)塩川財務大臣(当事)の状況だがしっかり財産も積みあがっているのだ。
 消費税の話に必ず出てくるのが「先進諸外国と比べて日本は消費税率が低い」って意見だが、先進諸外国と比べて財務体質も財務運営も大きく違うのだから一部分だけを比較して述べるのはおかしな話だ。
そもそも、先進諸外国に比べて国債発行残高は壊滅的な借金財政を招いている。赤字国債を止めて、消費税を先進諸外国並みにするのあら話は合理的だが、一方を放置して消費税率論議だけしてお意味が無い。
 で、国有財産の処分が財政赤字解消の一つの手法として考えられる。昨今も贅沢な公務員住宅にマスコミが着目してるが、そもそも遷都が進まないのは国有財産処分の大方針が無いからだ。国有財産の中で土地については地方自治体や民間に販売し、民間は自治体に信託する方向で現在の都心部の土地を処分する。
 その土地を地方自治体が前述のように都市計画にのっとって利用する。そんな制度を作って民間投資による都市高層マンション整備を抑制するしか無い。
 それによって住民主導(地方自治主導)の都市計画、街づくりが始めて現実のものになるのだ。

都市集中の是正こそが国政の場で語るテーマ
 国会で証人喚問する「目的」を明確にしてもらいたい。目的無くてパフォーマンスなら税金の無駄使い。まして、自分の感情を押し付ける演説をNHKに放映させるなんてのは放送法にすら抵触する電波の私物化。
 国会議員は犯人探しを国民から預託されてるのでは無い。あくまで立法の府として立法によって国民の生命、財産、文化、経済、技術革新、歴史を守ることを預託されている。証人喚問で何をしたいのか、まず、それがありきだろう。
 デフレ経済が長く続いたことに対して政治は傍観者だった。そして、その背景を受けてホテル経営やマンション建築がどのように推移してきたか、そして、建築基準緩和により商業地への住宅の進出をどのように考えるのか。そのような一連の歴史観ある政策を立案してもらいたい。
 地方都市である札幌でも最近、商業地におけるマンション建設を規制する動きがある。現在の商業地における日照権は冬至において3時間以上、だけではどんどん高層ビルが建ってしまう。細く高いビル程日照権条例には有利でしかも周辺に住民の駐車スペースの確保もできる。そこでマンションの15階規制を行おうとしてるのだ。
 でも、都市計画から見たら基本的命題が隠れいてる。商業地域にマンションが建つことにより住民の都市中心部への回帰が始まっている。都市中心部の住宅が減って商業施設が整備された所へ住民が回帰してるのだ。これが今後何につながるかと言うと郊外の空洞化と更なる交通問題を引き起こす。
 公共交通機関が赤字で撤退してしまった後、都市中心部の人口が増えることにより個人所有の車が益々増えて都市中心部の交通渋滞を引き起こす。これが、数年先の札幌の社会問題になるだろう。
 国政の場で言えば、都市集中を抑制する政策が国土の均衡ある発展につながり、都市部の高層マンション自体が政治の負けなのだってスタンスで今回の問題を語る政治家が....居ないよなぁ。

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2005.12.22 Mint