若干の違和感で終わった札幌市長選挙
やっと、本名で書ける
前回の予想に反して上田文雄氏が石崎岳氏を押さえて新札幌市長に当選した。投票率が46.38%と有権者の半数を割り、盛り上がりに欠ける選挙であったが、この低当票率にも関わらず自民党、公明党、保守党の組織票がまとまらなかったのが石崎氏敗戦の要因だろう。ここまで組織票を動員できないのも不思議な現象と言わざるを得ない。北海道は公明党票の恩恵はさほど無いのだろうか。
3位に終わったが中尾則幸氏も法定得票を越えて一安心だろう。選挙戦を放棄した共産党の青山慶二氏に12、000票も入ったのは不思議な現象だ、また、無効票が6、000票近く有ったので全体の3%程度が確信犯的な選挙にNoな人々と読むことも出来る。
最大の僕の誤算は前回3位の自民党市議であった道見氏が事も有ろうに民主党側の上田氏の支持に回ったことだ、なだれを打つように山口たか子氏も支持を表明、秋山こうじ氏も北海道新聞の記事によれば、同じく上田氏支持(それも新聞報道は直前の6日)を表明した事。本来「市民派」連合を目指していた各氏が衣の下から民主党の鎧が見え隠れする上田氏を支持するのは意外な展開と言わざるを得ない。ここが実は読めなかったのだ。
ま、それほどまで中尾則幸氏に魅力を感じなかったって証左でもあるのだが。各3氏の支持表明はギリギリのタイミングであった。4者協議での合意を尊重する形で中尾氏のアプローチを待ったが中尾氏は孤高を守ったってことだろうか。どうせ負けるなら潔く負けてやる、そんな思いが中尾氏に有ったかどうか、どちらにしても上田氏から5万票中尾氏に流れれると、結果として石崎岳氏の当選になるので、元民主党の中尾氏としては、出来れば再選挙に出たくなかったのではと憶測する。
そのために選挙に全力投球しなかったのではと思われる。
選挙功労賞のドタバタ劇
が有るかどうかは解らないが、支持に回った道見氏への去就が気になる。自民党に降ろされ民主党側に寝返った訳だからその功罪は民主党側の上田氏側から見たら勝利への貢献、自民党側から見たら八つ裂きにしてもあきたらないと言う場面だろう。
ここで上田氏が功労賞的な人事配置での配慮を行えば、まさに「民主党的な」側面が出ることになる。道見氏のみでなく山口たか子氏にまで話が飛べば、これは市政の私物化であり大問題になるだろう。その意味で、まず功労者と思われる道見氏に何を示すかで、上田氏の力量が解るというものだ。
また「私には何も無しか!」と道見氏が叫べばこれまた「自民党的な」ってことで顰蹙を買うだろう。
選挙後の後始末をどのように行うか。すでに問題の土俵に乗っているのだ。そして正論で破れた中尾氏の「バックにしがらみが有っては改革は出来ない。組織票で当選すれば組織に縛られる」って主張の正しさ(ま、正論なのだがから当然正しいのだが)が見えてくるだろう。
改革は結局先送りされた
自民党が勝つと「税金バラマキ政策により財政の悪化」、民主党が勝つと「労組懐柔の職員優遇政策」と、どちらに転んでも市民に良い事は無いのだ。市議会と市長ってのはそれぞれ市民から選ばれ一方は立法の代表として、一方は行政の代表として互いに睨み合いながら施策を練っていくのが理想だが、現実には相手の利権を認める代わりに当方の利権も認めて貰うって相乗悪効果が発揮されるのだ。結局、市役所を食い物にする施策がまかり通る、これはとりも直さず市民を食い物にしていることと同じなのだが。
上田氏のかけ声(政策)を見る限り「自民党的な」政策案に見えるのだが、これは選挙受けを狙ったものでとても政策とは呼べない。弁護士の上田氏に産業や経済興しが出来るかどうかは未知数だ。ブレインの作文の域を出ていない。その政策に縛られて訳が分からないままバラマキを行う可能性は高いと言わざるを得ない。これなんかも自分の政策に自分が縛られて何も出来ない典型になるだろう。
結局、4年間の市長の期間が有るにも関わらず、短期的な戦術のみで当選してしまったのだから、これからじっくり勉強するってことなのか。だとしたら、市政に空白を持ち込んでいるだけなのだが。
石崎岳氏には功労賞は有るのか
一番敗戦が辛いのが石崎陣営だろう。衆議院選挙には残り1年も無い、このタイミングで体制を建て直し同じ選挙区の民主党の荒井さとし氏と互角に戦えるまでの体力回復が出来るだろうか。事実上無理だと思われる。
衆参同時選挙ならば別な人間を立てて石崎氏を参議院のブロックに回して選挙戦を戦うこともあり得るが、衆議院単独でしかも今の小選挙区制では勝つのは難しい。
同様に中尾則幸氏も政治の舞台から引退だろうか。唯一起死回生の場面が登場するとしたら、小沢・鳩山新党しか無いだろう。現実に鳩山由紀夫氏も今度の衆議院選挙では当選は難しい状況になって来た。苫小牧市長選挙で鳩山氏の息の掛かった候補者が落選し、鳩山包囲網がいよいよ迫ってきているのだ。
「強者どもの夢の跡」は既に次の選挙に向けて動き出している。