参議院49議席は秋の日のつるべ落とし
非常に微妙な数の49議席だが
民主党が比例区で37%も集めて第1党になり、改選議席の51を割り込み、公明党頼みの選挙を終えて、もはや小泉首相は「死に体」との表現が多い。さしあたり参議院の役員人事だが、ここで強いリーダーシップを発揮することは無いだろう。青木氏が続投すれば、何の責任も取らない現状継続型の自民党が露呈されるだけだ。
もし金丸信氏が現役なら「公明党の言うこと聞いて、坂口の顔を立てて年金法を通したのに、選挙協力の結果が出てない」とか怒鳴りちらすだろう。が、今の自民党にはそのような勢いのある政治家は居ない。
金丸信氏が大型間接税だとか消費税だとかもめにもめて消費税制度をスタートさせた時の参議院選挙では大敗して、当時の大蔵相に「おまえら役人の言葉を聞いて消費税通したらこのザマだ!」と恫喝し、山梨にリニアモーター実験線を決定させたのは有名な話だ。
小泉純一郎首相は9月に内閣の改造を行うつもりらしいが、この内閣人事が党の都合の人事に陥りますます小泉人気が低下すればもはや完全な「死に体」になってしまう。何も決められず時間だけ浪費して、結局派閥の長だった森前首相のように、解散しか選択肢が無い状況に陥る。
改選数51議席から2議席減った49議席だが、民主党には上向きのベクトル、自民党には下向きのベクトルが明らかになった今回の参議委員議員選挙だった。
小泉人気凋落の原因は様々だが
「人生いろいろ」発言が開き直りに見えるのは、党首討論で「そんな、公約は守らんくても良い」と言った1年前と背景が大きく変わってきているから。後者は当時は強気の発言と好感視する向きもあったのだから。
曽我さんのジェンキンスさんとの再会も早急すぎて外向的には大きく北朝鮮に借りを作る結果になった。国際犯罪の拉致の被害者である日本が加害者である北朝鮮に頭を下げて選挙前にお膳立てする必要は無い。国民は曽我さんの母親も含めて未帰還者10名の情報がまったく出てこない状況で、スタンドプレーに走った小泉純一郎首相を見抜いていた。
最大の問題は質問に対する説明責任の無さだろう。年金問題も50%問題、出生率問題、議員年金問題と質問が浴びせられても説明責任を果たさない。これでは国民は見放してしまう。やはり、首相官邸で立ち番記者にそっけない返答を繰り返してるのが裏目にでたのだ。
しかも、年金問題では「何も考えてないから返答できない」状況に陥っているのが国民にも見える。国会答弁もはぐらかしの詭弁と「人生いろいろ。なにも30年も前のことを言われる筋合いは無い」と答弁にもなんにもなっていない。
来年にも政界再編、新自由民主党旗揚げか
今の民主党の先に政権があるとは思えない。もう一回政界再編成が有って、自民党も割れて新しい政党による政権運営が始まるだろう。その時期は小泉純一郎首相の「つるべ落とし」のスピードによるが、最も早いのは9月の内閣改造、その中で新たに着任した大臣に不祥事発覚(複数)の場合だろう。通常国会にも入れず大混乱のすえの五月雨解散。
次は予算成立後の来年の春。不良債権処理が進まず大手銀行の国有化、ペイオフ解禁の再度の延長で政権政党の体をなさなくなったとき。
そして民主党が仕掛けるなら臨時国会での年金法廃案に向けた抵抗に内閣がにっちもさっちも行かなくなった時。官僚の無駄使いのネガティブキャンペーンを週刊誌が執ように繰り返してるが、これが国会の土俵に登った時。とにかく、首相は常にダモクレスの剣の下に自ら飛び込む迂闊さを持っているので、トリガーには事を欠かない。
せめて51議席あれば、が本音だろう
安倍晋三幹事長が月曜日のNHKで選挙結果の感想を聞かれたときに、思わず本音で「せめて、あと2議席あればと思います」と語ったのは象徴的だった。青木参議院党幹事長と自分の首が切られるかどうかの危険地帯が49議席なのだから。51議席あれば安全地帯に飛び込めるきわどい議席数だったのだ。
一方民主党の躍進は自民党を食ったのでは無く、他の少数野党を食った結果だ。もともとこの国では消費税や医療費負担増などの短期的な争点で野党が与党の票を食い、次回の選挙で揺り戻しが起きることを繰り返してきた。社会党の躍進で「山が動いた」って言っていたのは今では懐かしい。
今回の選挙を2大政党制と称する向きが多いが、実は与野党対立が明確化してくる時代の流れと読んだ方が正確だろう。つまり、野党で良い野党にはお引き取り願うってことだ。そもそも野党で良い野党にはマニフェストが書けないだろう。国民に責任を負っているのか、イデオロギーで政治遊技してるだけじゃないか。様々な行動から国民は純粋野党を見透かしてしまった。
様々な政党があるよりも、様々な考え方を持った人々が集う大きな野党こそ政治を変えていける。そう訴え続けた小沢一郎氏の考え方に国民は共鳴している。だから、結果として2大政党化の方向に進む。小沢一郎氏の名言に「自民党は180度意見が違う、民主党は60度くらい意見が違う。どちらが前に進めるか考えてみたら良い」。
政界再編成の目は時期を計って水面かで動き始めてる。