民主党代表選挙に隠れる小沢戦略

両者とも「挙党一致」を叫んでいるが
 民主党の代表選挙は明日(4/7)開催されるが、その直前に書いておいたほうが良いだろう。よほどの事が無ければほおって置いても小沢一郎代表で決まりだ。そして鳩山由紀夫幹事長だろう。非常に自民党よりな野党が成立することになる(なんせ、両者元自民党議員)。
 菅直人氏が代表選に出馬するのは若手のガス抜きのようなもの、それを「売られた喧嘩は買う」みたいな事を言っている小沢一郎氏は洞察力が無い。相手を刺激してはガス抜き効果が半減するのだから。そもそも、挙党一致で話し合いで代表に選出される道を選んだのに一転して選挙って事態に狼狽したのか、ちょっと小沢一郎氏らしからぬ反応を見せた。
 選挙を行えば鳩山由紀夫氏を幹事長にしずらくなるって読みも働いたのだろうか。なり手の無い国会対策委員長を引き受けた渡部恒三氏の「選挙で勝ったら代表、次点が幹事長」ってのは単純すぎて、それで挙党一致が出来るのであれば誰も苦労はしない。そもそも、挙党一致で無かったから旧代表の前原誠司代表を支え切れなかったのではないか。党の顧問弁護士から「偽メールの可能性が高い」を言われていたにも関わらず2日後の党首討論で電子メール問題を持ち出すのを誰も諌めなかった。
結果論だが、党首討論で電子メール問題を取り上げなければ前原誠司体制は続いただろう。前原誠司体制が崩壊するのを他人顔で見ていたのが今回の代表選挙に立候補する両者であった。

野党の党首か、政権政党の党首か
 残念ながら菅直人氏には野党の党首しか務まらない。厚生労働大臣を務めていたときにも市民運動的行動ばかりで天下国家の政策立案には疎い所がある。致命傷だった年金未納問題も人に任せっぱなしで自身の問題としてチェックしていなかった。これが民主党のゴタゴタに拍車をかけ、最後は代表辞任につながった。
 では小沢一郎氏はどうかと言うと、これまた逆に野党の党首が務まる器では無い。与党に居なければ力を発揮できないタイプの「自民党的な」政治家だ。そのためには民主党を利用して与党奪還を目指すのは小沢一郎氏にとって正しい選択だろう。
小沢一郎氏の方針は挙党一致で無くても良いのだ、いかに自民党の一部を取り込める政党に民主党がなるかが最大の方針だろう。そのために追い出す者の選別に選挙があっても良いと考えてるかもしれない。
問題は、菅直人氏との票差だろう。197人の両議院投票でダブルスコアーの130対67以上が小沢一郎氏の方針に合致するだろう。これより票差が接近すれば第二の前原誠司氏になってしまう。前回は前原誠司氏と菅直人氏は2票差。つまり、半分弱が前原誠司支持では無かった。その代表が民主党を引っ張れる訳も無く、長老の総スカンで若さを露呈してしまった。
 「若さが出たなぁ」なんて平気で話してる民主党の長老には当事者意識が無いのだから引退してもらえば良いのだが。

小沢一郎体制はこう突き進む
 先の票差に加えて、選挙後直ぐに決まるかどうか別にして、鳩山由紀夫幹事長が継続するかどうかが焦点になる。菅直人氏は国会対策委員長どまりだろう。逆にそのポストならやらんと菅直人氏が席を蹴るかもしれないが、その場合は思い切って若手にすることも可能だ。馬淵澄夫氏みたいな筋の良い国会対応可能な若手が居るし。
 先に書いたように小沢一郎氏の方針は選挙大勝し自民党をひっくり返して民主党が政権政党になるのでは無い。
常日頃「数の論理」と言っているように、小沢一郎氏には「質の論理」を超えて「数の論理」が優先する。民主党はイデオロギーの違いで確執し質を高めたいと考えているが、話し合いもほとんど持たれない。小沢一郎氏が自由党と民主党とお合併後、民主党内に議論が無いのに驚いたと語っているが、まさに、「数の論理」のためには大同団結のための駆け引きの話し合い(互いの利権の調整)が必要なのだが、そもそも万年野党では「互いの利権」も無く、調整する必要性が無いのかもしれない。
 公明党や共産党は視野に無いだろうが、綿貫民輔氏の国民新党、一人しか居ないが鈴木宗雄氏、そして、先の選挙で大勝して数だけは多い自民党あたりを狩場と見て攻勢をかけてくるのではないか。
 ある種、民主党に見切りを付けていると思われる小沢一郎氏だから、言葉には出さないが小泉純一郎首相と同様に「民主党をブッツブス」が裏の公約だろう。

小沢一郎氏を担ぐには時代が遅い
 話は逸れるが、田原総一郎氏の書いた「日本コンピュータの黎明」に富士通のコンピュータ事業への取り組みの歴史が書かれてる。当時NTT(当時、電電公社)の受注が総売り上げの80%もあった次期に、IBM互換のコンピュータ事業を会社の柱にしようとした時期を書き出してる。その中で当時の富士通の役員会は「10人役員が居て3人がよしならゴーサイン、5人がよしなら、その事業は手遅れ」ってくらい小回りの効いた意思決定を行った。
 小沢一郎氏にオーバーラップさせてみると、民主党と自由党が合流した時に政権が獲れなければ小沢一郎氏の時代は無いと考えただろう。その時に動いていれば別な展開もあったが、時期を逸して、やはり、民主党の人材不足の風に乗って代表の座がころがりこんできただけ。
 さらに狩場と考える自民党には小沢一郎幹事長時代の人脈は残っていない。
昔、自民党の宮澤喜一総理大臣が問題が起きると「なりたくてなった総理大臣じゃないもんね」みたな様子が見え隠れした。今度の小沢一郎民主党代表もその轍を踏まないとも限らない。

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