昭和天皇の「私の心だ」で小泉首相は花道を失った

織田信長になれるのか
 織田信長すら実現出来なかった皇室典範に手を付けて、結局、次期尚早と言うか、状況が変わって自分の在任中には手を付けることができなくなった。皇室典範って尻尾を踏まなくて済んだのだからある意味幸運だったのかも知れない。
 今回の日本経済新聞のスクープは実はスクープでもなんでも無くて、旧来から言われてきた事実を改めて裏付ける資料が出てきたってことだ。ただ、この時期に詳細を知らない国民に再度印象付けたって点で影響は大きいだろう。
 昭和天皇の感覚は、東京裁判肯定派にならざるを得ない。アメリカの対日駐留政策は「日本人は悪くない、全部軍部が悪い」とのシナリオに則っている。そのため、最初は無条件降伏を求め、国体護持を認めなかったのだが、結局、アメリカの都合で国体護持の方針が固まった。
 そのためには、日本を戦争に導いたのは昭和天皇では無くて軍人や政治家を特定する必要がアメリカ側にあった。そのための極東軍事裁判であり、結果なのだ。大事なことは「アメリカの占領政策の一部としての軍事裁判」だったって点。だから、実は僕は認めてないのだけれど。
 今回の報道も含めて、あくまで、14人の中の特定の人間の合祀に昭和天皇は気分を害されたのだろう。そもそも、A級戦犯は自分の責を背負った身代わりなのだから。

言葉のアヤが小泉純一郎首相を躊躇させる
 個人の問題、心の問題と言ってきた小泉純一郎首相に対して今回見つかったメモは昭和天皇の「それが私の心だ」で終わっている。昭和天皇は個人的意見として靖国神社参拝を辞めた意思は「私の心だ」と言っている。
 当日の小泉純一郎首相の狼狽振りが良く解るのはやはり「ぶらさがり」会見での女性記者の突っ込みに対応できなかったことだろう。本来、朝夕2回の会見を夕方1回に変えたのだから、新聞で報道されてから十分準備する時間はあっただろう。にも係わらず昭和天皇が自らの意思として「それが私の心だ」と言ったと報道されているのに、「心の問題ですから」で「昭和天皇も心の問題ですが」との突っ込みに「昭和天皇と私の心が正反対ってこともあるでしょう。心の問題なんだから」と答えた(意訳)。
象徴天皇に対して国民の代表の総理大臣が左右されることは無いが、こと「心の問題」で天皇と総理大臣が正反対ってのは日本の文化風土から見たらおかしなことで、上下の別は無いにしても総理大臣は天皇の意思を尊重するべきとの考え方が一般的だろう。
 どうも、小泉純一郎首相は首相官邸からパレードで靖国神社にはせ参じるなんてパフォーマンスまで考えていると一部の週刊誌が書いているが、事がここに及んで「警備上の理由」で不可能になっただろう。それどころか、靖国神社参拝が在任中は出来ない事になった。

変人も度を過ぎれば総スカン
 はたして、終戦記念日に靖国神社を小泉純一郎首相が参拝するか。あと20日もすれば解ることだが、僕は参拝しないと予想する。終戦記念日以外はありえるが、これも難しいだろう。可能性としては10%程度の確率だと思う。
 たぶん、昔の江川卓の巨人入団の「空白の一日」のように、首相交代時に参拝に行くのが唯一小泉純一郎首相の意地が見せられるタイミングだろう。
昭和天皇の「心」に背いてまで靖国神社を参拝するメリットは無い。が、任期満了となるとメリットよりは意地を張りたいかもしれない。「暴走小泉靖国参拝」で恥をさらすだけなのだが、ま、変人のやることは解らない。
 ただ、日本人の心には「天皇の心」と違う行動を取れば総スカンって場面があるから、よほど慎重に行動しないと禍根を残すことになる。
 最近の小泉純一郎首相は「から回り」が多い。訪米してメンフィスでプレスリーの生家を訪ねた時ははしゃぎすぎでブッシュ大統領があきれていた。中東訪問も、特に中東の平和にサジェスチョンすることもなく「お忙しいでしょうから、早めに切り上げましょう」。サミットに至ってはブッシュ大統領からはしゃぎ過ぎをたしなめられる場面まであった。
 これで靖国神社の参拝でもしたら、から回りの極致で自民党総裁選挙早まるかもしれない。

総裁選挙への影響
 安倍氏は競争相手と目されていた福田氏が出馬しないとなったので、もう時期総理大臣に決まったようなものだが、やはり靖国神社参拝はトラの尻尾だろう。来年の参議院選挙に向けて惨敗必須の自民党総裁への就任なのだから、アブナイ事は少しでも避けておきたい。小泉純一郎首相が靖国神社を参拝したら、その尻拭いは自分がやらなければならない。それも来年の参議院選挙までに。
 一発勝負を掛けてくる民主党の小沢一郎氏に対抗するには中国、韓国訪問が是非とも参議院選挙前にやっておきたい。しかし、小泉純一郎首相が公式に靖国神社を参拝すると国内での支持低下に留まらず、外交面での支持稼ぎも出来なくなる。
 総裁選挙と言うよりも参議院選挙への影響が大きいだろう。自民党過半数割れまで見据えて小泉純一郎首相の去就には注目する必要がある。

button A級戦犯合祀の経緯と昭和天皇参拝見送りの真実

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2006.07.26 Mint