コンサドーレ札幌フアンが学ぶ阪神

北海道にようやくプロスポーツ集団
 北海道にプロ野球球団を呼ぼうって運動は20年程前からあった。ホワイトドームの事業計画なんか策定する時に、有りもしないイベントを作文しなければならないのに良く野球利用を粉飾した(笑い)。
 コンサドーレ札幌がJリーグ入りを決めて、以前の「プロ野球志向」が方向転換を余儀なくされているが、既存の案を撤回する勇気が組織に無いので政策に反映されるのは遅々として進まない。エアードゥ(北海道国際航空)が来年の4月には野田機長による一番機を飛ばそうとしているのに、北海道のホームページでは未だに「新幹線誘地」しか交通施策は無く、苦笑を通り越してアキレテしまう。
 コンサドーレ札幌の名称は札幌の主婦が道産子を逆にしてオーレを付けたものだが、東芝からJFLチームを譲り受けた時にチームのネーミングには相当悩まされた。それは「北海道」なのか「札幌」なのかである。Jリーグでは地元密着で都市名を付ける約束だが、本州で考えている郷土と北海道では感覚が違う。札幌は僅か40年前には人口30万人の地方都市であった。この札幌の今を支えている世代は北海道の他の地域からの移住者である。「札幌」の名称よりも「北海道」の名称により愛着を感じる。
 チーム名が札幌だけでなく北海道も包含したものでなければ、成功はおぼつかない。この意味でも「コンサドーレ札幌」は、素人の恐ろしさ、実に北海道民の心情に訴えるネーミングであった。命名式の時に、当時の社長が「これでホットした」と涙を流したのはこのネーミングの重荷を払拭した安堵感を含んでいたのだ。(と、読めた人間が何人居ただろうか)

北海道人の感覚
 吉本興業が札幌に支店を開設した時に思ったことがある。北海道は札幌を起点にした「支店経済」の延長で東京志向だと思っていたのがどうも違うようだ。農業がアメリカ的大規模のイメージを外部から持ち込まれているが、実は10年程前から北海道で農業に従事する関係者はヨーロッパ農業を志向し始めた。山林中心の土地でアメリカ的大平原大規模農業を実現するには大規模な自然開発(必ずしも「破壊」では無い)が必要になる。しかし、北海道農業はヨーロッパ的自然共生を志向することにより、地域全体の産業とバランスを取る方向に向かっている。
 大規模農業が誰も住まない過疎化と一対なのに気がついたのだ。足寄町を国が目指す大規模経営農家だけにすると人口は900人になる試算がある。これでは、地域社会は壊滅してしまう。また、富良野・美瑛をこれだけ観光客を受け入れる地域にしたのは、自然共生農業が生みだした景観である。土壌の流出を防ぐために「丘の頂上の木は残せ」って知恵がそのまま美瑛に活きている。また、リスク回避の多品種作付けが水田では得られない畑の美を生み出している。
 外から見られているような東京・アメリカ的な北海道人の意識は実は違う。しいて例を上げれば、上記のように関西的でありヨーロッパ的である。考えてみると歴史的背景は北前船によるコンブやニシンを中心にした関西との物流が北海道開発の原点であった。「北海道を駄目にした5悪」に挙げられる「北海道大学、北海道拓殖銀行、北海道新聞、北海道庁、北海道開発局」は、これみな東京志向、アメリカ志向故に、道民の意識との間に壁があるからと思えてならない(笑い)。

コンサドーレ札幌は阪神タイガース
 阪神フアンの驚異的なのは、9回裏1点差で勝っている試合で1アウトから「あとふたり、あとふたり」と連呼する。でヒット打たれて同点になっても「あとふたり、あとふたり」は終わらない。逆転サヨナラ負けしても「あと、ふたりまでこぎ着けたのになぁ」と納得してしまう。
 再来年から2部制になり、選手の給与水準の規制から外国人選手を補強するのが難しくなってくるJリーグで、コンサドーレ札幌は更成る試練に向かうことになる。実際の選手層の薄さから、来年10位以内に入って1部リーグに残るのは至難の技である。がしかし、北海道人に阪神フアンのしたたかさが有れば、結果は後から付いてくる。負けても負けてもフアンは離れない、映画「メイジャーリーグ」のようなシチュエーションは北海道人の感覚に合う。
 現在の政治不信から税制改革の失敗まで続く時代は江戸時代末期と類似している。政権が大きく変わる時代に公共事業依存から脱し「関西のしたたかさ」を北海道も持たないと生き残れない。北海道にプロスポーツが生まれ、これを育てていくことが出来るかどうかは、実はこれからの北海道を占うバロメーターであったりする。

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1997.11.16 Mint