debate(ディベート)について

補足説明
 ある所で、ディベートの事を書いたし、先の街宣でも書いてしまったので、経験を含めたその方法を補足説明しておくことにします。
 そうとうな高学歴な人でもディベートは議論で相手を打ち負かすゲームって感覚があるのが悲しいのです。これはたぶん日本能率協会なんかがもっと啓蒙してもらわないとならないのでしょうが、マスコミでショー化する傾向が悪いのでしょう。また、日本人の文化に他人を立てるのが徳って下地もいなめません。僕は最初にディベートを知った時に同じ感覚を持ちましたが、実際には民主主義を支える重要な訓練であるとの認識に至ったのです。
 民主主義を支える根底は何かと一言で表すことが出来ないけれど、言論の自由と言えるかもしれない。ここから難しくなるのだけれど、言論の自由てのは、自らの権利として存在するもので無く、相手の言論の自由を保証する意味なんです。ここも誤解が多くて何を言っても良いだろう、言論の自由なんだからって論旨で反論するのは稚拙なんです。お前は何を言おうと自由だ、言論の自由があるのだから、但し馬鹿な意見は馬鹿にされるぞ、ってあたりがこの用語の適正使用と言えるでしょう。
 また、「言論の自由の保証」は裏替えって「言論を聞く義務は無い」って面も保証している(保証で適語かなぁ)訳です。で、なんとしても聞いて貰いたい人はそれなりの訓練を重ねなければならないのです

オルタネィティブ
 民主主義のもう一つの側面が、オルタネイティブ(代替案)の提示であると言えるでしょう。社会党が社民党になって、党首の成り手が無い状況にまで落ち込んだのは、オルタネイティブな政策や方法論を提示すること無く、反対・反対を叫び続けたからです。社会には解決を計らなければならない課題は山積しています。これは、誰かが最近の流行語では「苦渋の選択」をしなければならないのです。ある意味では代表制によってここをクリアしてるのですが、最近は住民投票ってのが有ってこれの弊害については別項で書いて有りますからそちらを参照して下さい。
で、かの日本サッカーがw杯出場を対イラン戦で決めたジョホーバハル(だったっけ)で第二次世界対戦の頃マレーの虎、山下奉文が「イエスかノーか」と迫ったのですが、あちら側には「イエス、バット」って表現があって、実際はどう交渉が進んだのでしょうね。
 一つの案に賛成か反対か問うのは民主主義としては大変稚拙な解決策で、実は民衆てのは十人十色であって、せめて複数の選択肢から選べる決裁方法が必要なのです。そこで現存の案に不満があるのあら、同じく解決しなければならない課題への新たな解決策を提示しなければならないのです。
 反対を叫んで解決を先延ばししては駄目なのです。これでは子孫にツケを回してるだけなのですから。このために、一つの課題に沢山の解決策を提示し、その是非を問う必要が出てくるのです。そして、自分の案がいかに優れているかアピールするテクニックが必要とされるのです。

その訓練方法
 本を読んだだけではノウハウは蓄積されないので、先に書いたように実践してみたのです。集団で行う場合は、あらかじめチーム編成して事前に資料をあたり相手の出方に備えるのですが、これだと準備に時間もかかりとても会社の社員教育としてはコストがかかるので、一発本番方式にしました。あの時のテーマは「動物園の是非」だったと思います。コメンテーターには僕があたり、判定者は3名、発言者は各1名にしました。
 結果は動物園は自然破壊の象徴であるって展開で非とした側が支持を得ました。もちろん是側にも十分支持を得られる展開のチャンスが有ったのですが、このあたりは素養の問題もあって駄目でした。
 コメンテーターとして禁止したのは以下の事柄です。人格攻撃をしない、一般論に普遍化しない、仮定の論議をしない、判定者に訴えないあたりです。
「そんな事言うの馬鹿じゃないの」とか「動物は自然に帰りたがっている」とか「それでは、自分が檻に入れられたらどう感じますか」とか「みなさんは、どう思いますか」なんかです。また、表現手法には制限を加えないってのもありました。泣いて訴えるのも可です(笑い)。
 最後は結果によらず握手で修了です。ま、これあたり柔道の礼に始まり礼に終わるってはなはだ日本的な部分でしょうか。
 やってみて解ったのは、結局表現力を磨くって訓練になるってことでしょうか。事前に資料を集めたりすると物事の洞察力が付くのでしょうが、このあたりは教育の現場では出来ても社員教育では無理です。また、同時に日本能率協会が権利を持っているパイロット訓練のCRP(コックピット・リソース・マネージメント)の資料を全日空のパイロットから入手して、これも試行してみたのですが、こちらは版権の問題がクリアできないので省略します。こちらは、チームリーダーを育てるのに有意義な手法であることが確認できました。
 社員教育としてのディベートに興味が有れば呼んで下さい(有償(笑い))。

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1997.12.28 Mint