趣味の王様、アマチュア無線

ここの一部はアマチュア無線情報
 ホームページによる情報発信がマイナーならば、それに輪をかけてマイナーな趣味になっているのがアマチュア無線。最近は「ちびまるこ」の友達の野口君だかが登場して少しは社会的認知が広がるかと思ったら、既に「古き良き時代」を著す道具になっているらしい。
 趣味の世界で国家試験で取得する免許を必要とするのはアマチュア無線くらいかもしれない。そもそも国家試験は産業や社会に必要な機能を最低限のレベルまでは国が保証しようと始まったのだから趣味にまで国家が口を挟むのはいかがなことかと思う。完全に時代遅れの仕組みがアマチュア無線の個人に与えられる無線従事者免許と無線器の運用を行う無線局に与えられる局免許、2つの免許証があってはじめて電波を発射できる仕組みである。
この世界で交信した無線局から「QSLカードについて意見が欲しい」と郵送で連絡が来たので、この機会に取りまとめて見たいと思う。ちなみに、QSLカードとは、無線で交信した同士が双方、電波の受信を確認しあうためのカードで、JARL((財)日本アマチュア無線連盟)の会員であれば、JARLに一括郵送すれば、これを個々の局に振り分けてくれる。また、アワードとはこの交信証明書とも言えるQSLカードを利用して、例えば北海道212市町村の個々の無線局と交信したら212アワードとか、QSLカードを元に、該当するQSLカードを入手していれば発行される「賞状」である。
当局(あ、アマチュア無線と言えど無線局なので一般的にこのように表記する)の送ったQSLカードを利用して郵政省発行のアワードを申請したら当局のQSLカードの記載に不備があると帰されてので、「貴局(相手から見た当局のことです)はQSLカードをどのように考えているのか」との八つ当たり的な話なんですが、これを郵便で送り付けて来たってのが発端です。ま、この局のコールサイン(無線局識別番号)はJ○○UWRと言うのだが。

既製品のQSLカード記載に意見は何も無い
 当局は現在のコールサイン、J○○OWCにて電波を出してからそろそろ8年になるが、この間にQSLカードは1回1000枚単位に2回印刷している。どちらも交信状況の記載欄はオノウエ印刷の既製品を利用し、当局が撮影した写真をあしらったデザインである。交信時間の欄に時間が日本標準時であるか世界標準時であるかの区別は無い。これが無いからアワード申請で不備と指摘されたのは当局の不備では無い。当局のQSLカードを利用した局の不備である。当局に責任を転化するような言動は困りものである。
これがまず1点。加えて当局の交信年月日の年に「98」と書かれているのは元号表記か西暦表記か判断が付かないからアワード申請QSLカードとして不的確との物言いには唖然としてしまう。これはアワード申請者と発行者の問題である。当局は日本の常置場所からの運営を行っていることはQSLカードに記載されている。その時間は世界標準時か日本標準時かのどちらかである。アフリカ標準時ではないことは確かであろう。また、年については各国の元号で表記する場合にのみコメントが必要であり、コメントの付記が無ければ西暦と考えるのが合理的であろう。で、時間を世界標準時で明記しなければならないとか、年も元号を明記しなければならないとかアワードを発行する基準であって、アマチュア無線に普遍的話では無い。そこを先のJ○○UWR局は勘違いされているようだ。

アマチュア無線にはびこる仲間意識
 とまぁ、はなから極小数(Smile)の趣味の世界の話に聞こえるだろうが、実はこのアマチュア無線のマイナーな世界を通して見えてくる様々な事柄がある。
アマチュア無線家は共通して先の国家資格である「無線従事者免許」と自らの無線局の「無線局免許」を有している。
免許故に、この2つ(世界では従事者免許のみで良い例もあるのだが)の免許を持っていれば全て自分の仲間であり共通の価値観を持った者であるとの勘違いがはなはだしい世界でもある。
実は同じ資格の免許を有していることと、個々人の「志」とはまったく別次元のものである。あたりまえな話なのだが、自動車の運転免許を有している者同士が集まって共通の価値観でなにかを行う集団たりえないのと同様に、無線従事者免許をよりどころに、免許を保持している人間は同じ価値観であるとの幻想は辞めた方が良い。
まして、アマチュア無線は実利を求めない趣味の世界である。仲間で利益集団を形成することもままならない。
一番分かりやすい例では参政権がある。昨今選挙の投票率の低下を指して「政治離れ」などとマスコミは称しているが、投票権有るものが全て同じ価値観に有るのではない。投票権があれば行使しなければならないと言うのは投票権を行使した人の論理であり、その前に投票権は行使の義務があるのか、の議論が抜けている。まして、20歳以上の全国民に付与されたことの意義を再度考えるためにも「投票権を行使すべき」と選挙権を有する者に言うのではなく、「投票権が行使されない現状」を捕らえ論議すべきであろう。根本を見据えないで、対処療法を行っても解決の道が遠くなることが解らない議論になっている。

自己責任社会は自己満足社会でもありえる
 自分が無線局を構え、誰それと電波を通じてコンタクト出来たことを他人に証明してもらう必要は無い。いや、アワードを否定するような論旨は本意ではないので、「好きでは無い」とことわっておく。そのような行為が好きな人を否定するものでは無い。
 昨年の5月末に返還間近のマカオと交信ができた。普段は海外との交信が難しい周波数帯であったので大変うれしかった。しかし、マカオのこの局はQSLカードの発行準備が(当時)出来ていないとのことで、QSLカードの入手は不可能と思われた。
しかし、自己責任の範疇で自ら作成したアンテナで北海道・マカオ間の無線による通信が出来たことは誰に証明される必要も無く事実である。それを、事実として公表する事(何の証明資料も無いのだから)への責任も当局に既存する。
でも、みずから客観的証拠を持って証明できないにも係わらず、僕は「マカオと交信した」と自己の責任で述べてきた。(後日談だが、QSLカードの発行準備が完了したようで、昨年の暮れにQSLカードが届いている)
趣味のアマチュア無線は自己満足の範疇で楽しむのが良いであろう。自分が申請したアワードが突き返されて、使用したQSLカード発行者に文句言うのは筋が違う。交信した時点でなにも言わず、アワードで使ったら不備と言われたのならそれはそれで「しょいうがない」のである。「自分は全てのQSLカードをアワードの申請に利用可能としたいので、下記の部分には明確な表記をお願いしたい」と交信時に述べるべきである。
ま、そんな人間に合わせてQSLカードを書く局も多いと思えないが。

多様な相手を認めるところから始まる
 「仕事」は別にして「趣味」は「道楽」である。その「道楽」に「貴局はQSLカードの交換は名刺交換レベル。名刺のデザインは個々人の自由と言われるが、その真意は」なんて郵便をもらっては疲れる。そのような疲れる相手とは基本的にお付き合いする義務は感じない。趣味の世界なのだからこちらの我が侭は100%発揮させてもらう。もちろん、相手の我が侭も100%認めた上でのことである。
アマチュア無線は「King of Hobby」と言われる。直訳すれば「趣味の王様」である。がしかし日本人の島国根性は「王様の趣味」(だったら、The King’S Hobby」なのだが!)と誤訳し、だったら「王様」は誰だなんて議論をしている。
実は、「自由で民主的で経済的で自己責任」なのがアマチュア無線の世界であらればならず、自己の趣味を押し付ける世界では健全では無い。ただし、現在の日本アマチュマ無線連盟(JARL)に代表されるように、「王様のアマチュア無線」の世界が戦後続いて来たのです。そして、本質を見失い上記のような話が出て来るのです。
いま一度原点に戻れば、今まで間違っていたことが見えてくるのです。

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1999.03.13 Mint