昨今のアマチュア無線動向

払っていたのねJARL会費
 毎年10月になるとアマチュア無線局には「電波利用料」の納付書が電監(現在の総務省管轄)から届く。年間500円也。今年はだらだらと振り込みを伸ばしていたら督促状まで届いてしまった。同じようにJARLの年会費の振り込み用紙も10月に届く。
もちろんアマチュア無線局を開局したのが10月8日なので毎年この時期に「ものいり」となる訳だ。
 しかし、この3年間は殆どママチュア無線の電波を出していない。電波を出して交信すると必ず「交信記録簿」(通称ログブック)に記入しているのだが3年前の夏の交信記録が最後のもの。
そろそろ引退かななんって思っていたので督促状は恐いので電波利用料は支払ったがJARLの年会費は振り込んだかどうか記憶すら無い。
 ところが、2月に入ってJARLの機関誌が自宅に届いた。もしかして年会費は振り込んだのだろうかと書類箱を捜してみると年末に会員証が届いているではないか。ま、こんな感じですっかりアマチュア無線から遠ざかっていたのだった。
 実は高校生の頃からアマチュア無線をやってみたいと思っていたのだが、実際に免許(従事者免許、無線機を操作できる免許)試験を受けたのは昭和56年(1981年)結婚してなんか趣味でもと思っていた頃。この試験には合格してJAFN4780の免許証は手にしたのだが、アマチュア無線局として無線局を開設するにはまだまま時間がかかる。
昭和62年頃だろうか職場で従事者免許を持つ者が3名居たので通称「社団局」ってのを作ろうってことになった他の2名は自分の無線局を開設しているのでこの社団局を預かるのは僕になった。やがて開局した無線局はコールサイン「JH8YNG」。アマチュア無線の無線局にはコーリサインが割り振られて、後ろ3文字の頭が「Y」ってことはグループで運営する「社団局」になる。このコールサインで登録した唯一の無線機で実は5年間このコールサインで電波を出し続けたのだった。
 当時、パソコンの世界は電気通信事業法(これも今の総務省扱いだなぁ)の改正でパソコン通信なんてのが出始めていた。これにはまったので電波を出すのに遠ざかっていく。
社団局の免許が切れたので(有効期間5年間)個人局として申請して個人局を開局したのは1992年。開局当時は2m(144MHz)の社団局の無線機で結構電波を出していた。やがて意欲を失う頃に新しい周波数の無線機を入手してアンテナの自作に向かう。もう一つの趣味の自転車がドクターストップになった時期だった。ここで50MHzの夏場の特殊伝搬のEスポに出会う。今まで津軽海峡を越えていない交信が一気に四国、九州とつながる事になった。自作のアンテナも性能を試したくて札幌の友人に向けて積丹半島とか十勝とかから電波を出す事になる。で、ある日新冠で運用しているとマカオのアマチュア無線局の声が聞こえる。早速応答すると交信が成立。しかも半年後にこのマカオの局から交信の記録としてのQSLカードが届いた。実はこの交信で「より遠くとの交信」って憑き物がとれてしまったのだった。海外と交信出来たってことの満足感で以後電波を出すのが少なくなる。
がぁ!、数年後にインターネットに似たパケット通信ってのに出会う。パソコン通信で情報を集めていると必要な機材を只で譲ってくれる人と出会ったりしてパケット通信を始める。ここで得られた情報からGPSを利用した「ナビゲーション」ってのが有るのを知る。早速アマチュア無線とGPSを両立する無線機とGPSアンテナを購入して「ナビトラ」ってのに挑戦する。結局これは北海道では3人しかやってないって悲惨な結果だったのだけれど札幌の1局と愛別の1局と友達になれた。
この頃に430MHzのアンテナを14エレメントの八木・宇田アンテナにして5Wの電力でも100kmを越えて交信出来ることを体験したのだけれど、この後に電波を出す機会は薄れていく。
とまぁ、いろいろ有って(随分長い前振りなんだけど)アマチュア無線は趣味のランクで言えば5番目くらいにランクダウンって状態だった。でも2月に届いたJARLの機関誌に劇的な展開を示す重要な情報が記載されていたのだぁ。

ここまで利用者が激減したいたとは
 会費を払ったことすら忘れていたのでJARLの機関誌もいつもは袋に入ったままに本棚に置いて有るのだけれど、たまたま開いて読んでみた。その中に「電子qso」って実験が始まっているのを発見した。
 先に書いたようにアマチュア無線の世界では交信した記念にQSLカードってのを交換する。これは葉書の形態で直接の郵便でも良いのだけれどJARLは世界に向けて日本の代表としてカードの配布業務も行ってる。JARLにQSLカードを送ると該当する無線局にカードを送付してくれる。それが海外の無線局でも。このカードを郵便で送るより廉価なのでJARLの会員になってる人も多い。年間7200円。1000枚以上送る人には格安なのだ。
そのカード交換をインターネットを利用して行おうってゲリラが居るらしい。早速機関誌に記載されてるホームページをアクセスして登録する。今までの交信記録はパソコンに入っているのでこのデータを指定のxmlに変換するプログラムを作ってデータを整備してこのサーバに登録する。過去の交信記録は1300局強、で電子的にQSOが出来たのは10局程度。おやおや、これでは少なすぎる交信記録の10%にも満たないじゃないか。
そこで、無線機を引っ張り出して交信記録を(運用記録を)集めようと再度アマチュア無線の世界に電波を出す事になったのが2002年3月の時点。

何が技術の伝承の環を切ったのか
 実は僕は「電気工学科」出身なのだが今の大学に電気工学化は少ない。加えて機械工学なんかも少ない、いわゆる理工離れが言われて久しいが工学離れも相当なハイテンポで進んでいる。受験一辺倒が悪いとも言い切れないが、現在の教育が学ぶ意欲を惹起していないのが原因だろう。現在の教える側が受験戦争の第一世代で教えるってことは進学のためと肌に染み着いている。だから「興味を持たせる事」に努力を払わない。
 大学で非常勤講師をしていて気が付くのは大学になってまで退屈な座学授業と定期試験で単位獲得する制度を続けていること。僕の講義はパソコンを利用しながら「情報」ってなんだろうって講義なので前半は「Curiousty(好奇心)」を持つ事、後半は「Smart(賢く)」をスローガンに実際に自分で答を見つけてくる事を主眼にしている。例えば「人に自慢できるレア物をYAHOOオークションで捜すとか。
 アマチュア無線は学校のクラブ運営に依存し過ぎた。そのために学校が受験授業しかしなくなった実態を知らず、あいかわらず「社団局」とその構成委員って構造で物を考えてる。昔は無線機は自作するか高価なメーカー品の購入しか無かったから共同で無線機を使う「社団局」の意味はあった。今は「無線機は買う」時代である。
昔のように従事者免許(無線機を操作して電波を出す資格)と局免許(無線機を保持して電波を出せる無線局を開局する)が別れてる必要は無いのだ。そもそもアマチュア無線に限って言えば従事者免許所有者のほとんどが局免許も取得しているのだから。
 理工離れ、工学離れは要は「伝承の技」って世界が軽んじられた流れと同一だろう。大量消費のみで伝統工芸が衰退したのは「直して使うよりは買い替え」って経済的側面と、そもそも機器が高度にアッセンブルされて修理と言いながらユニット交換するように始めから設計されてるのが原因である。
 しかし、「修理して使う」って技術を日本から追い出してしまってはメーカーの思う壷だろう。もしメーカーが共有を辞めれば買い替えは出来なくなる。すると価格決定権はメーカに委ねることになる。そんな社会で良いのだろうか。僕はソニーのやりかたがこのパターンだと思う。だからソニーは好きでは無い。
 自分で家の修繕をするDIYが昔からアメリカでブームだが、今の工学製品は自らの手で修理出来ないように設計されてる。そもそもここが問題だと思う。アマチュア無線の世界でもコンパクトに基盤一枚に何でも詰め込んだ機器が評判が良いが「自ら工学的興味により..」ってアマチュア無線の世界にそこまでの無線機が必要なのか。モジュール単位に交換のきく無線機は殆ど無い。そんな事で技術が伝承出来るとは思わない。そこに我々アマチュア無線家の代表組織であるJARLが意見を述べないのが気に喰わないんだ。

本当に量より質になったのかなぁ
 JARLの選挙広報を見ながら感じたのはアマチュア無線愛好家が激減し、JARLの会員も激減してる現在の状態を「量から質への変遷」と捉えているノー天気な人間が立候補(継続立候補)していること。頭おかしいんじゃないの。結局最後の一人になった者が一番質が良い訳?
 昔、札幌の2mのFMでは放送事業じゃないのかって無法局が居たのだけれど、これって結構「聴取率」(笑い)高かったみたい。松田聖子のカラオケ流して歌うのだけれど、連絡専用周波数(いわゆるメイン・チャネル)で「聖子出たぞおぉ」って誰かが知らせるとみんなで聞きに行った。
 「古き良き時代?」いえいえ、国民の資源である電波を確信犯的に利用したのですよ。そんな輩もアマチュア無線に魅力を感じないほど社会的に安楽死させられようとしているのが今のアマチュア無線では無いだろう。残った者が「質」なんて言ってる場合では無いのだ。自分が考える「自分による、自分の為の、自分しか居ないアマチュア無線」の中で生きていたのならそうすれば良い。
 しかし、今のアマチュア無線界隈の苦悩は、実は日本が「技術」に無関心な「一億総消費者」になった危うさの現れなのだよ。かつてアメリカが陥った「総消費者」になったら、日本は何で生きていくの?
 免許取得が必要な趣味は少ない。でも電波が出せるってのはインターネットで「2チャンネル」やってるとは違う世界が開ける。僕が言うのはお門違いかもしれないが、電波を出せる権利を持っているってのはこれからの情報化社会で実は結面白かったりするのだよね。

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2002.04.05 Mint