地球温暖化と熱帯夜
人間は「体験」に敏感なのだが
人間は知識を書物等で継承できる唯一の動物と言える。がしかし、自分の体験は知識に勝る記憶として残る。これは最近の心理学で説明されているのだが、人間の記憶メカニズムは以下のように分けられるそうだ。(あくまで、ひとつの考え方としてだが)
1)知識記憶
上記の書物等でのいわゆる「勉強」によって得られる知識。学校教育の目指しているのは教える側から教わる側への知識の伝達。これは「丸暗記」って方法がある。加えて、インタネで何時でも情報が検索できれば記憶しておく必要があるのか? と疑問になる記憶。
2)エピソード記憶
「体験」によって得られる記憶。まさに個々の人間の環境によって得られる記憶は千差万別になる。ただ、「毒薬は飲むと死ぬ」なんてのは上記の知識記憶によるしか無い。体験した人間は死んでしまうのだから。
ある程度の「知識記憶」は個々人によってはエピソード記憶として記憶される。例えば、2+2=4の「知識記憶」を元に、2×2=4を推論できる。このあたりも学校教育に若干含まれているが、この分野の強化が昨今叫ばれてる「考える教育、生きる力を育む」なんてのが教育のこの分野への進出なのだ。
3)手順記憶
自転車に何故乗れるのだろう。マイケルジョーダンは何故あんなにシュートを決められるのだろう。このあたりが日本語で「職人芸」と呼ばれる「身体が憶える」って記憶だ。
この3分類は面白いと思う。何故なら、かなりの事象を説明可能だから。
医者にかかる時に「経験豊かな人」と望むのは「知識記憶」が多い人では無くて「エピソード記憶」が多い人を求めているから。もっとも「エピソード記憶が多い医者」ってのは目の前で死亡した患者を多く知っているってことでもあるのだが。
甲子園を目指して過酷な練習を行うのは「手順記憶」を形成するため。反復練習はやがて「手順記憶」として身に付く。
さて、なんでこんな話しをするかと言えば「地球温暖化」については事象を説明できなくて「最近、冬が寒くないと思いませんか」なんて会話から始まることが全然間違っているってことを言いたいから。
前に書いたと記憶しているのだが、大橋巨泉が国会の一般質問で温暖化に関して総理の小泉に「最近、凍っていない湖が多いと思いませんか」なんて質問をしていたのだ。「温暖化=暑くなる」って短絡的発想を国会の場に持ち込んで議論する大橋巨泉の知識の無さ、民主党の勉強不足を露呈した質問だった。
前置きが長すぎた
学校教育ってのは具体性が無いと思うのは地球温暖化は「社会」の教科で扱うらしいってことに象徴される。どの教科で扱うかが問題では無く「いかにして伝えるか」が大事なのだが、縦割制度ではまず「何処が扱うか」あたりから議論が始まるらしい。
地球温暖化をかたる時に必要な事前情報が「最近..」では子供に解るはずが無い。このあたりが「前説」のエピソード記憶で地球温暖化を語ろうとする姿勢に現れている。これは「戦争を語り継ぐ」って運動にも言える。エピソード記憶を語り継いでも当時の様子は解るが未来に向けて「どうしたら戦争を防げるのか」にはまったくつながらない。このことに気が付いたのか最近のNHKでは終戦記念日(敗戦の日)が近づいても「語り継ぐ」を放映しなくなった。このあたりの話しは別途「敗戦の日」のタイトルで書く事にする。
で、地球温暖化なのだが、子供にも解る説明方法が有るのだが、まったく馬鹿なんだからぁって会話しか報道されていない。
まず、算数で地球を知る教育をせよ
大学で教えているので、その時の講義内容を再現してみる。内容は「算数」である。一部「社会」の地理も入るが。
「地球の大きさをどうしたら現せるだろうか。数字で現すと半径約6500kmと言える」
「では、この黒板に半径65cmの円を書いてみよう」
「直径で130cmだから、これくらいの丸かな」
「これって、実際の地球の何分の1だろうか。計算してみてください」
「そう、一千万分の一になります。この黒板の1cmは実際には100kmになります。チョークの幅だけで100kmも有ることになります」
「さて、空気はどれくらい上空まで有るのでしょう。世界最高峰のチョモランマには酸素ボンベ無くて頂上まで登るのはきわめて難しい。この高さが8488m。このあたりで空気は無くなるかもしれない。皆さんが飛行機で旅行する時に飛行機が飛ぶ高さは3万フィート。メートルに直すと10000m程になります。これは10km」
「10kmを歩けと言われたら、やだなぁ、2時間以上かかると思うでしょう。10kmって歩いて歩けない距離では無い。これを垂直に立てると10km。そこでは酸素ボンベが無ければ生きて行けない程の世界」
「さて、さっき書いた直径130cmの円の中で空気の層はそれくらいなんでしょう。10kmはさっきの一千万分の一ですから1cmですね。このチョークの線の厚さなんです。この薄い大気に沢山エネルギーを与えているのが今の工業化社会で、この薄い層にガンガンエネルギーを注ぎ込んでいるのが今の温暖化です」
熱くなった大気はどのように感じられる
熱くなったのだから熱くなるってのは当然なのだが、基本的にブラウン運動の原理から大気は運動量あ増えた、つまり、変化が激しくなるのだ。専門用語では「ダイナミックレンジが広くなる」と言えるだろう。つまり、現在の気象現象がより幅広くなるのだ。
具体的には「熱くなる」だけでは表現できなくて「寒くなる」ってのも地球温暖化の結果なのだ。「雨が多くなる」も言える。
とにかく、大気のメカニズムがダイナミックになるのだ。
極論すれば「何時も台風の中にいる」くらいになるのだ。
で、最初の話しに戻るがいちばん感じるのは「最近、風が強い日が多くなった」ではないだろうか。非力な電動ラジコン飛行機を趣味にしてるとほとんど飛ばす日が無い。何時も風が強すぎるのだ。昔はこんな事は無かった。
地球温暖化調査で二酸化炭素の量を計ってもしょうがない。全国の気象台で観測される風速の総量がここ数年でどのように変化したかを調べたら良いと思う。これそこが「大気のダイナミックレンジが増加している印」なのだ。数値で現すことが出来るのだ。気象庁はこの数値を「地球温暖化」の指標として採用すべきだ。
「暖冬だなぁ」なんて感覚で地球温暖化を人類がコントロールできる指標にはならないのだよ。