携帯の電源を切らなくても良い?

JR東日本等で禁止を解除
 正確な表現では無いが新聞報道によると関東近郊の電車では携帯電話の禁止(車内では電源断)が解除になったとか。有名無実だったのを容認したとも受け止められるが、この事象を3年も前からにがにがしく思っていた僕には、やっとまともなものの考え方が出来たかと安堵する。
 札幌の地下鉄では「心臓ペースメーカに影響する」って理由で電源を切れと広報している。赤字の地下鉄がこんな無意味な広報にコストを掛けているのだ。実効は無いのは明白なのだ。携帯電話の利便性は何時でも何処でも連絡がとれるって点にあるのだから電源断なんてのは言語同断な強権発動なのだ。
 そもそも、20cm以内に近づいた場合、一部の携帯電話がペースメーカーを誤作動させる実験結果は有る。しかしPHSではその恐れは無い。これは医療機関での実験結果である。ちなみにパソコン等で2G帯で使われてる無線LANについても医療機関で医療測定器に影響を及ぼさないことが実験で証明されている。
 何処に居るか解らない心臓ペースメーカ利用者に配慮して電源を切れってのはまったく乱暴な話なのだが、これが札幌の地下鉄では「表向きは」まかり通っている。まったく馬鹿げた話なのだ。
 もちろん、心臓ペースメーカーを利用している人は携帯電話が「恐れがある」だけでも大変な話なので、そこは「棲み分け」を明確にするのが良い。弱者の為に社会全体が利便性を捨てなければならないって訳では無いのだ。弱者に配慮して、しかも社会の利益を損なわない方法を考えるのが最も合理的な考え方なのだ。

日本的風土、携帯電源断
 そもそも携帯電話のマナーの悪さは目に余るものがあった。そのため電車の中での使用を禁止させるための方便として心臓ペースメーカーを引き合いに出したのだろう。が、これはまったく説得力無いのだ。ただ、都市部のラッシュでは体がくっつくので危険性がゼロでは無い。
しかし、電車を運行する側の責任としては、ペースメーカー・ゾーンを作って、ここから半径1mは携帯電話持ち込み禁止にするのが筋では無いのか。「恐れ」のために(それも根拠が薄いのだが)利用者に一律禁止を課すのはサービス提供者として考えが甘い。弱者を守るためにシルバーシートを設けたのだろう。それと同じ発想が何故出来ない。
 合理性が無いにも関わらず、それを強要し、誰も従わないまま続けられる。これって、まさに日本的風土では無いだろうか。不要な規則を維持するために組織や金が費やされても誰も「おかしい」と言い出さないのだ。米穀通帳に代表される食管制度と電車では携帯電話電源断は同じ土壌から発している。つまり、規則に合理性を突き詰める姿勢が薄いのだ。決まりは決まり、守るかどうか別問題なのだが、そこに決まりを守らせるための社会的コストが発生しており、公共団体が行っている(多くの場合そうだが)そのコストは税金の形で市民が負担しているのだ。そこまで考えたら合理的で無い規則は廃止すべきだと気が付くだろう。
 日本的だから国際的には通用しないかと言うと、結構諸外国でも合理的でないことが有る。
 アメリカの地方の変な法律は有名だが、そこには「妙な合理性」が感じられる。例えば「町内で核爆発を行った者は500ドル以上の罰金に処す」なんてのは、核爆発が何かを知り(日本人のように被爆体験の伝承が無いにも関わらず)それを規制しなければ市民を守れないって知識が議員に有ったってことだ。罰金の額はさほど問題では無いだろう。これは「妙に合理的」に僕には見えてしまう。
 また、同じくアメリカでは未成年者に酒やタバコを売ってはいけない。自動販売機を設置しても販売した責任は設置者に有る。ってことで自販機が極端に少ない。これは自動販売機なんて置いておくと中の金を盗むために自販機を壊されるって事のほうが大きいかもしれないが。

マナー教育と罰則を考えるのが最も合理的
 ただ、携帯電話のマナーの悪さは別問題である。しかし何故迷惑なのかを考えると結論は見えてくる。前に大学で「何故人混みでの携帯電話利用はいけないか」って学生に聞いたことがある。実は誰も答えられなかった。「マナーに反するから」、ではそのマナーってと聞くとそこで行き詰まる。
 実は個人的な事を大衆の面前で行うから他人に迷惑をかけるってことなのだ。言い換えると人前でパンツを下げているようなものなのだ。これは本人は好きでやっているのだろうが、周りの人間には迷惑な話なのだ。これと携帯電話で大声で話すのとは原則同じなのだ。だから、各自治体に条例で定めた「迷惑防止法」を適用するって条例改正を行えば良いのだ。拡大解釈して取り締まっても良いと思うし。
 それを行わずにマナー問題にすり替えるよりは何故悪いのかって説明責任を果たして後、取り締まり対象にするのが合理的なのだ。パンツ下ろさないまでもチラチラ見える程度では取り締まらない。同じようにマナーが良ければ「電源断」なんて誰も言わないのだ。そのあたりの配慮が携帯電話については社会制度が遅れ遅れで、やっとJR東日本等でペースメーカー・ゾーンが出来たってことだろうか。あまりにも遅い。
 コンサートや映画館で携帯鳴らしたら「死刑一歩手前の刑」ってのはダウンタウンの松本人志の話だが、それも良いだろう。マナーなんて情では無くて、法で規制すれば良いのだ。
 さて、札幌の地下鉄はいつまで「電源断」を叫び続けるだろうか。

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2003.09.18 Mint