4年間の集大成は4年前と同じメンバー
ま、カズ、ゴン、秋田なんかは居ないが、この4年間でジーコ監督は半固定メンバーで戦ってきた。代表入りしたメンバーの中にはW杯3回目が多い。中田(英)、川口、宮本なんかがその最右翼だ。若手が育ってないのはジーコ監督だけの責任では無いが、4年間で若手を使ってみるって采配は少なかった、若手にとってベンチ入りだけでは世界と戦うには何が必要か肌で感じることは出来ないだろう。
WBCでは選手選考は王貞治監督の意見も入れて、各球団のアンバランスが出ないように配慮していたので、ある意味「あてがえぶち」でスタートすることになる。
ジーコ監督は「自由」を尊重して先のトルシエ監督と180度違った指導方針らしい。前回のW杯出場経験のある選手はまだしも、新人に向かって教えてくれるって雰囲気では無かった。ここに出場経験者と未出場の選手の間に意識のギャップがあっただろう。それを埋めるのがキャプテンの宮本の役割なのだが、寡黙なディフェンダーはその役が果たせなかった。他に川口、中田(英)らがその役割を担うかと言えば、外に向かって「完成度が低い」、「各自の役割が解って無い」なとど放言してチームの中で指摘すべき事をチームの外に持ち出していた。
イチローは放映されたので見た人も居ると思うが松坂をつかまえて「お前、野球なめてるだろう。才能だけで野球やってるのは見てて解る。才能と努力が無ければ野球をなめてるとしか見えない」と説教していた。また、「我々で歴史を作ろう」、「世界の王さんに恥をかかせるわけにいかない」とチームの中に向けて発言を繰り返す。対外的には「日本が同じチームに3度負けるのは許されない」、「日本の野球に10年は追いつかないなと思わせる試合をしたい」とあえて自分にプレッシャーをかけに行く。
年齢の差ってのはあると思うが、イチローにあって中田(英)に無いものはチームのまとめ方のノウハウだろう。孤高のイチローが野球は一人では出来ないと一番知ってる。かたや中田(英)は俺の仕事はやっている、あとは周りがレベルアップすれば勝てるって考え方だ。
指揮官の資質
これは中田(英)やイチロー以前のことだが、監督の役割も大きく違った。王貞治監督は試合のコンダクターであれば良かった。ある意味、プロ野球の選手なんだから何をすれば良いかは各自解っている。サッカーのように相手のフィジカルを直接受けることは無い。相手より点を取れば勝てるって単純さが野球にはある。
一方、サッカーはどうしたら相手より点数を多く取れるのかが非常に複雑だ。W杯が始まってからも3バックなのか4バックなのか選手個々の判断がバラバラだった。ジーコ監督も「相手に合わせて柔軟に対応しろ」としか言わない。
ある意味、王貞治監督のほうは「自由」で良いのだろう。昨日今日の新人選手が居る訳ではない。確実に点数を取る方針は全試合を通してゆるがなかった。ジーコ監督はW杯出場経験も踏まえて年俸1億8000万円で日本代表の監督としては最高額(ちなみに、前々回の岡田監督(代行)は5000万円)を貰って、選手を育てるのが仕事だろう。試合の采配だけでは高額な年俸に相応しくない。日本が何をジーコ監督に望んでいるのか、それを言えるのは川渕チェアマンだけってのも組織としておかしな話だ。
そのトップをいただいてイチローは王貞治監督を神格化し「世界の王さんに恥をかかせてはいけない」と選手を鼓舞する。中田(英)は我関せずだ。もっとも、ジーコ監督も組織作りが下手だと思うのは、中田(英)にはキャプテンよりもフォジカル面の指導者として位置づけ役割を明示し、宮本には全体を見るキャプテンとしての役割を与えて、常にミーティングを繰り返し情報交換を行うって姿勢が無い。そもそも、あそこまで日本語話せないものかなぁ。
イチローは自らの役割を自ら作って演じた。王貞治監督公認だったろう。中田(英)は一人のMFとしてしかジーコジャパンに参加してなかった。お前にはこんな役割があると誰も言わなかったしアイデアも出なかった。
実は貴重な映像がYou TUBEにある。2002年のトルシエジャパンの宴会(現在は不掲載)。ここで、中田(英)はW杯後離れていく秋田、ゴン中山の後を担える素養があることが解る。にもかかわらす、その役割を演じなかったのは、彼自身の問題なのか、それとも彼を取り巻く環境なのか。
「名選手、名監督ならず」はまさに名選手が自分中心の組織をつくり、名監督は組織個々人に役割分担を任せる姿勢の違いからくる。イチローは任された責任に応えようと努力した。中田(英)は任されなかった。それは組織を任された監督の力量の差だったかもしれない。ただ、もしジーコ監督のようなWBC監督ならイチローは苦言を呈したと思う。中田(英)のように「俺は俺の仕事はしている」とはならないだろう。それは、アメリカに日本の野球を認めさせるって大儀があるからだ。中田(英)には心に秘めた大儀が無かった。
イチローにあって中田(英)に無かったもの、それは「大儀」だと思う。
それに加えて試合後にセンターサークルで仰向けになって泣いている中田(英)に声を掛けたのは宮本選手ただ一人ってのも、中田(英)に無かったものを感じさせる。