参議院選挙で民主党大逆転のシナリオはあるか

議席数から見る民主党の選挙戦術
 道県議会の選挙結果は自民党の97議席減、民主党の170議席増加。市議会議員選挙では自民党216議席減、民主党83議席増加。
 何故、自民党は議席を減らしたのだろうか。実は自民党は都市部のいわゆる無党派を抱え込んで選挙戦を戦う構造に変化していた。小泉純一郎元首相の政策は小泉劇場と呼ばれるように、都市型の選挙には強いが、実は構造改革と格差拡大で地方では小泉純一郎元首相の人気は弱い。それが自民党離れを引き起こし、地方選挙での大敗に繋がった。
一方、民主党の小沢一郎代表は徹底的に地方展開を選挙戦術にしてきた。これは、小沢一郎氏が田中角栄氏から教え込まれた選挙戦略である。徹底的なドブ板選挙だ。
田中角栄氏は街頭演説を行って「駅前で演説して1000人集まっても、投票所で田中角栄と書く人間は少ない。いや、既に演説の内容すら忘れているだろう。地域で100人相手に演説して、100人のかなりに人間が投票所で田中角栄と書くんだ。どっちが効率の良い選挙戦だと思う」と小沢一郎氏に話したという。
 地方向けに政策提言にも民主党らしからぬ部分がある。一つは年金制度の改革を旧来民主党は1階2階に分けて、1階部分は消費税で、2階部分は厚生年金を筆頭に各種年金を統合して対応するとしてきた。
1階部分を賄うために消費税の3%値上げが旧来の主張だが、小沢一郎代表はこの点には触れない。大きな公算があるのかないのか判らないが「消費税は上げない」とまで公言してる。
もう一つは農業政策だ。FTA(自由貿易協定)によって国内の農業は国際競争力が無いので輸入農作物に席巻されてしまう。FTA(自由貿易協定)を結ばない方向では国際的に受け入れられえない。であれば、輸出可能な農業分野には補助金を出す方向にある。しかし小沢一郎代表は「全ての農家に補助金を出す」と言う。
おいおい、10年前の自民党の政策を丸ごと飲み込んでいるじゃないか。何故そんな逆転現象が起きているのか。

参議院選挙に向けたケーススタディ
 本丸は参議院選挙にある。その前哨戦として民主党の徹底的な地方優遇の政策提言は成功したかに見える。実際、どちらが勝つにしろ参議院選挙後の政局は流動的だ。民主党内でも、なにも今、小沢一郎代表と揉めなくても良いだろうって参議院選挙後の政局頼みな雰囲気がある。あるからこそ、小沢一郎代表は好き勝手ができる。
 実は自民党も同じだろう。参議院選挙の結果待ちなのだ。もちろん勝利に向けての活動は行うだろうが、勝敗ラインのハードルの高さ調整なんかにうつつを抜かしてる。
 前回の参議院選挙は内閣支持率80%の小泉純一郎首相が居ての大勝だった。今回の内閣支持率では前回の様相とはほど遠い。また、いわゆる郵政選挙で自民党を勝たせすぎた反省が有権者にはある。小泉チルドレンの政治家には活躍が出来る人材がほとんど居ない。
 小沢一郎代表の選挙戦略は都市部は放っておいても民主党にゆり戻される。加えて地方の票を掘り起こして参議院選挙での勝利に繋げようと考えているのだろう。加えて、選挙のために代表になったのだから、選挙後は勇退する覚悟かもしれない。
政策通と言われる人たちや、党首討論まで引き伸ばしてるのは選挙に専任との考えが根底にあるのでは。だから、熟考した政策よりも選挙で勝てる政策に傾倒していく。

一度は政権交代が必要だろう
 官僚と政治家の癒着は自民党のお得意の分野だ。双方寄り合って自分達の都合の良いように政策を作る。本来の3権分離が行政府と立法府が同じになり機能していない。
昨今の「官僚天下り問題」にも官僚の修正舵が入り込む。政府が一元的に再就職を監視するはずが、なし崩し的に変更され、結局現行の制度と何が違うのかと言いたくなる骨抜き現象が起きている。官僚と自民党の利害関係調整の結果だ。
 小選挙区制が実施された時に「日本にもアメリカのような二大政党政治が実現する」と幻想を持った民主党議員も多かっただろう。実は、アメリカの2大政党政治は寄って立つ基本が違っている。キリスト教を中心とした保守の共和党かキリスト教を離れて時代の流れを受け止めて政治を行う民主党の違いが基本にある。宗教観なので根が深く互いに譲歩する場面も少ない。
日本の自民党と民主党は立っている土壌に違いは無い。対立軸も無理に対立してるだけだ。自民党が党内で揉めるような些細な事柄で自民党と民主党が揉める。テレビの政治バラエティ番組では誰が誰が敵で誰が味方すら判らない混沌とした状況になっている。
 たぶん、両者の対立軸を選挙戦から見たら「政治と金」問題でどちらが、少しはマシって所だろう。小沢一郎代表も参議院選挙に向けて最後の切り札は「美しい国、日本なって言ってるが、自民党にはキタナイ政治家ばかりじゃないか」に絞られていると思う。だから、身内の不始末には非常にナーバスになっている。
 もはや、対立軸が明確では無いのだから、選挙の切り札は相手のキタナイ所を徹底的に叩くしか方法が無いだろう。
 格差是正が政策課題だってのも良い選択だろう。
 金持ち>なんか悪い事してる>間違いない
って三段論法で対立候補を撃破していけば良いのだから。どんなに頑張っても政権に無い民主党にはキタナクなりようが無いのだから。
button 小泉政権が選挙に残したもの
button 政策としての再チャレンジの不可解

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2007.05.01 Mint