MRJ、日の丸の翼がよみがえるか

MRJの目指すマーケット領域
 MRJはミツビシ(三菱)・リージョナル・ジェットの略で国際線では無く地域の足として短距離を少数の旅客を乗せて飛行する小型ジェット旅客機を目指してる。これに向けてパリで行われてる国際航空ショーでフィジビリティスタディを兼ねて客室のモックアップ(実物大見本)を展示してマーケットを探っている。
 実現すればYS−11に続く国産旅客機、それもターボプロップでは無い純粋のジェット旅客機の誕生となる。現在ホンダがジェット機の製造をしてるが、これは大手エアラインで利用する旅客機では無く個人や法人が所有する分野を狙った商品。今回三菱重工がフィジビリティスタディを行っているのは世界のエアラインに採用され定期路線を航行するリージョナル・ジェット旅客機、MRJである。
 しかし前途は多難である。
 世界の市場では90席前後のリージョナル・ジェット旅客機の需要は伸びている。空港の整備が進むと地方空港もジェット対応になり、国際空港からハブ化して地域の空港への利用は増える。ただし、情勢は厳しく、今後予想されるジェット燃料の値上げ、エネルギー問題を核としたモーダルシフトの流れ。高速鉄道網の発達と国際空港からのリージョナル・ジェットによるハブ化には様々な課題がある。
 ただ、日本国内の需要に限定されないならば、リージョナル・ジェットの市場は航空機産業のニッチのジャンルとして市場は存在する。現に、カナダのボンバルディアやブラジルのエルブラエルが市場の一角を取り崩してるのだから。もっとも、これはMRJのライバルに位置づけられるのだが。

開発費1200億円を回収するマーケット規模
 航空機の開発は当初予定して額に収まることはほとんど無く、現にエアバス社がA380に入れ込みすぎて経営が傾いてる。エアバス社はこれを廉価なA350の販売で補おうとしてる。
 三菱重工業も現時点でのMRJ(ミツビシ(三菱)・リージョナル・ジェット)の開発費1200億円。これをMRJ300〜400機の販売で初めて回収可能とソロバンを弾いている。これは20年後のリージョナル・ジェットの世界での需要の10%に達する。先のYS−11が国内の航空会社の協力に加えて海外への販売も行っても販売数は200機弱程度であるから、当時より市場は大きいとは言え、リージョナル・ジェットMRJで400機のハードルは高い。
 また、設計中に先行予約が取れなければ営業的に資金が回って行かない。これも100機程度必要で、国内の航空開放により航空会社が自社購入から海外リース機の利用にシフトしてるので国内のエアラインに協力を依頼するのも難しい。
 となると、残るのは「国の支援」だが財政的に負担能力が有るかと言えば、実は有ると思う。産業を育てて国を富ますことは政治の役割である。いま、国産ジェットの研究開発及び製造までたどり着けば、産業の裾野は大きく広がる。問題は、産業政策では無く現在のアメリカ追従政策が航空機産業をアメリカに敵対するものとタブー視してるのが現状だ。
 アメリカの航空産業は統廃合を繰り返しながらも民間旅客機の分野ではボーイングの一人勝ちである。アメリカとしても国の基幹産業の一つである。おめおめ自動車の二の舞を日本から浴びせかけられないようにアメリカ国内の航空機産業を守るために圧力をかけてくるだろう。
私見だが、田中角栄首相を巻き込んだロッキード事件は日本の航空族の国会議員を叩き潰すアメリカの陰謀と考えている。全日空のトライスターを隠れ蓑に自衛隊にP3Cを買わせる騒動だったと考えている。
 国産リージョナル・ジェット旅客機MRJを押す政治家が出てくるかどうかが、国の支援の有無に関わってくるだろう。

現在の代表格はA320、B737−400
 日本国内ではリージョナル・ジェットMRJの役割を果たしてる現有機はA320だろう。若干搭乗人数は多い(120名程度)がANAによりローカル空港間に就航してる。同じくこれより小型だとB737-400やB737-600になるB737は当初のエンジンから高バイパス比のCFM56に交換し燃費の向上と騒音の低減を果たしてる。大きくなったエンジンが地面からの高さを稼ぐために脚を伸ばすのでは無く、独特の「おにぎり型エンジンカウル」が特徴である。ボーイング社の総生産数は5000機をを超えるベストセラーで今でも生産が続けられている。
 この後継機を狙うスケジュールなので、MRJは(ミツビシ(三菱)・リージョナル・ジェット)2011年初飛行、2012年型式証明取得のスケジュールになっている。もっとも、現段階では三菱重工の公式見解は「マーケットを調べてから判断する」である。
 ところが、不思議な情報が多々流れてる。
 販売が好調なB787と同じコックピット構成にしてB787(250席)程度と住み分けながらも互換性をアピールする。
 MRJのB787互換機路線の話は、実は三菱重工とボーイングの共同作業でマーケットリサーチが行われているとか。販売後の顧客サービスは、スエーデンのサーブに依頼するとか情報が明らかになってきておりボーイングの意向が三菱重工の後ろ盾になっている様子が見え隠れしてる。
 このリージョナル・ジェットの市場に最初に乗り込んだのがナダのボンバルデイアとブラジルのエンブラエルである。この市場に旅客機部門で先行しているボーイングやエアバスは乗り込んで来なかった。そこにはボーイングの他社に真似の出来ない国際線航空機路線用の大型旅客機があり、リージョナル・ジェット市場では戦わないって戦略があるのかもしれない。そのため三菱重工と同様に今後新規参入を予定してるのがロシアのスーホイ、中国の上海航空工業等がある。
 20年後の航空事情を見通すのは難しいが、より低燃費で低騒音に向けて高バイパス比のエンジン(当然外観は太くなる)になるだろう。現在のB767でもジェットエンジンにも係わらずエンジン音は電気モータに近い。静かな国産ジェットが日本の空を飛ぶ日は近いのかもしれない。
 ジェットエンジンは使用燃料の融通性が高いので、バイオ燃料による運行も計画されている。脱石油で飛行する日の丸リージョナル・ジェットを目にすることができるかもしれない。
『本日当機の燃料は、東国原知事のご要望で宮崎県のナタネから採取のバイオ燃料を使っております』なんて地場燃料によるミツビシ(三菱)・リージョナル・ジェットが実現するかもしれない。

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