歴史的敗戦処理を先送りする自民党

惨敗に終戦処理が不透明
 キャッチコピーだけで戦われた選挙の感がいなめない。自民党は37議席に留まり選挙戦前に40議席前半のマスコミの予想をあっさりと裏切ってしまった。
安倍内閣成立から10ヵ月の通知箋とも呼ぶべき選挙で国民は自民党の政策能力にNoを突きつけた結果と見えるが、はて、では何が争点だったんだろう。実は争点なんか無かったのだ。安倍内閣に大沢親分のように「渇!」と叫んだだけなのだ。野党は空前の大量議席に喜んでいるが、国民の審判は自民党に「渇!」票が流れ込んだ結果でしかない。野党のマニフェストが選択されたのでも何でも無い。
 野党もテレビでの討論で消費税問題を争点に引き出そうと「選挙で消費税に触れず、選挙後上げるのはけしからん」と迫ったが「上げるとも上げないとも言わない」と肩透かしをくらってしまった。
消費税について言えば1%で約2兆円の税収増になる。3%上げれば6兆円税収が増える。しかし、社会保障費は現在20兆円かかっており消費税だけでまかなうのでは10%以上にする必要がある。社会保障と消費税をセットで考えるのはアジテートであり政策では無い。
 その選挙、蓋を上げてみると自民党の惨敗だったのだが、そのことにより政局が不安定になることも無く、姑息に「やっぱり、事務費には領収書が必要なことにしよう」なんて対応を打ち出してる。内閣改造で仕切りなおしなんて選択をしている。
民主党の出方待ちの感が強いが。今度の内閣改造では谷垣氏の扱いが焦点になるだろう。コジンマリとした学級委員会が解消されるかどうかは人本位で選ぶか仕事の実績で選ぶかによって顕著にメッセージ性を持って外部に判るのだから。
いちおう8月末には内閣改造の人の名前が挙がってくるだろう。参議院自民党の体制立て直しは来週にでも明らかになるだろう。
問題は民主党が「数の論理の逆暴走」をやらかさないことだ。

勝って冑の緒を締められるか
 単純な戦術を考えると秋の国会において11月1日で切れるテロ対策特別措置法の延長を阻止する行動に出るだろう。ただ、何でも反対の戦術に出るのか、予め落とし所を決めておくのかで結果が180度違うだろう。
単純に「数の論理」で行けば参議院で否決、衆議院差し戻しは可能だが、それでは知恵が無い。民主党の悲願である政権奪取に向けて更に高いハードル「政権能力」が次の衆議院選挙で問われるのだ。
そのためには、何でも反対の方向を向くと国民から乖離してしまう。31日の民主党の役員会と常任幹事会で選挙後初めて顔を見せた小沢一郎党代表は記者に問われて賛成することはない」と反対行動を匂わせているが。
 民主党は政局の混乱を自らの手で行える伝家の宝刀を手にした。しかし、伝家の宝刀は抜くぞと見せかける抑止力である。抜いてしまったら圧力を掛け続けることはできない。自民党安倍政権が17回も強行採決を繰り返したのは「数の論理」の伝家の宝刀を抜いてしまったのだ。同じ土俵に乗るのなら民主党も同じ選挙を戦うことになる。
ここは、知恵の勝負だ。数の論理をちらつかせながら相手を妥協に引き込む。そして、修正案を通すことで政権能力をアピールする。
はたして、民主党にそこまで知恵者が居るのかどうなのか。

秋の決戦を制するものが政権を担う
 もちろん、衆議院選挙では無くて秋の通常国会。そして目玉は「テロ対策特別措置法」になる。
対応を間違えば「やっぱり民主党は駄目。社会党となんら変わらん」と国民はソッポを向いてしまう。
 参議院選挙での躍進は通過点でしか無い。小沢一郎代表は参議院の当選者と次期衆議院選挙候補者に向けて檄文を送った。そこには「誓」といして政権奪取を表明してるらしい。その心意気が民主党全体に共通認識されることを望む。
 宮崎県の東国原英夫知事がおもしろい話をしている。大勝した民主党を指して「お試し期間ですから」と。まさに国民は自民党に「渇!」したら勝っちゃった民主党「お試し」しているのだ。
 選挙勝利の美酒に酔うことなく、さらなる活動を進めなくてはいけない。最大の災いはおごりによる自滅だ。国民は民主党を支持したのでは無い、お試し期間なのだから。どれだけの民主党議員が、これを肝に銘じて自律した行動と知恵を出せるか。目標は選挙での大勝では無い。あくまで政権奪取なのだから。

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2007.07.31 Mint