いかに新特措法を通すか福田康夫首相の戦略

最大の戦略は時間稼ぎ
 既に時間的に11月1日のテロ特措法の終了でインド洋の海上自衛隊による各国の船舶への給油は停止せざるを得ない。
海上自衛隊は引き上げてくることになる。このタイミングでマスコミがどのように帰還を扱うかによって形成される世論が違ってくる。例えば福田康夫首相自らが出迎えて労をねぎらい「日本の国際貢献にには無くてはならない活動だった! みなさんは良く任務を全うしてくれた。みなさんの活躍でどれほど日本の国際貢献をアピール出来たことか、日本人の一人として誇りに思う」なんて演説をすれば世論は再出動に傾くだろう。
 それからじっくり新法を提出して国会論議を始めれば良い。世論を読んで行動する福田康夫首相流が発揮されるだろう。
また、民主党も世論に逆らってまで法案反対とは叫べないだろう。そのためには、早く民主党が考えるアフガニスタン支援策を法制化するべきだ。11月1日より前に世に問わなくてはいけない。伝わってくる情報(鳩山由紀夫氏のメルマガ)では策定中とのことだが、アフガニスタン復興の警察のような内容になるらしい。ガソリンスタンドをやるよりは危険が伴うかもしれないが、究極の目的は対立勢力との和解がアフガニスタンに平和をもたらすことを考えれば、海上給油は紛争の一方への支援であり、現地での警察機能は双方の調整が可能で、ガソリンスタンドよりも数段アフガニスタンの平和に貢献する。
 それを、国民に早い時期に説明できることが肝心だ。タイミングを逸すると情の福田康夫首相に流されてしまう。

「テロとの戦い」は永久に終らない
 安倍晋三元首相は「テロとの戦い」を何度も口にしたが、そもそも「テロとの戦い」の終戦のシナリオは有るのだろうか。ベトナム戦争がベトコンによるホーチミン市の陥落以外に終戦が無かったように「テロとの戦い」はテロ側の勝利以外に終戦は無いのではと思われる。
戦争の終了に向けての戦闘を繰り返しているように見えて、実は終了からはグングンと離れて行くのが今のアフガニスタン、イラクの現状では無いだろうか。
テロとの戦いは国と国の戦争のように首都陥落をもって終戦との明確な基準が無い。終戦のシナリオ無くして戦争を始める「テロとの戦い」は出口の無い泥沼に紛れ込むようなものだ。
国は領土、国民、政府を持って成り立っているから、このどれかを奪い取れば戦争は終わる。イランなんかがイスラエルを核弾頭1発で消せると考えているのもこのためだ。現実にイスラエルはイランが核弾頭を持ったら国家存続の危機だから先制攻撃をしたがっている。
 テロ集団は領土も無い、国民に該当するのがテロリスト達だが、これを明確に一般の国民と区分けするのは難しい。政府に該当するものはテロ集団の指導者と言えるが国民が選んだ政府とは形態が異なるので倒しても倒しても次が現れる。
 結局、テロとの戦いの終戦は「和解」しか無いのが実態だろう。双方が武力による闘争を止める。休戦でも停戦でも無い終戦に向けて共同で新政府を作る。ここまで行かないと戦争に戦争を重ねる戦火拡大に陥ってしまう。

現にイスラエルとイラン、フランスとイランが非常にきな臭い。


日本の宗教的な優位性
 昨今、叫ばれなくなったが宗教的背景がテロとの戦いの背景にある。タリバンはイスラム原理主義でもある。今のアフガニスタンの状況はキリスト教国が入ってきて旧来のイスラム教を攻撃している構図だ。この宗教対立の構造に和解をもたらすには日本のように極東のどちらの宗教にも関与していない国々の調停が有効に作用する。
日本だけの外交では力不足であれば極東アジアの国々と手を組んでアフガニスタンに秩序と平和をもたらす行動に出るべきだ。
給油に特化した特措法を新法で出すのが自民党の方針のようだが、それでは戦争に加担しているだけで「テロとの戦い」への終戦のシナリオにはなり得ない。政治には目標提示が必要だ。ガソリンスタンドやっていれば平和になるなら、その説得が必要だ。実はそれは無い。

テロとの戦いは言葉としては判りやすいが、実は「戦い」には戦略が必要で、それは「始めた以上、勝利をもって終戦を迎える」ってことだ。でもこの戦いに勝利と呼べる状況が存在しないことに気が付かなくてはならない。停戦が最も勝利に近い状況なのだと認識しなければならない。


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2007.09.17 Mint