武力では勝利出来ない戦い
大統領のイギリス訪問に抗議デモ
ブッシュ大統領のイギリス訪問に抗議デモ。主催者発表が15万人で警察発表は7万人らしいが、国賓に対するデモとして異例の多さ、しかも、フセイン大統領の像に見立てたブッシュ大統領の像を引き倒すパフォーマンスまで行った。
デモの規模もさることながら、今回のイラク侵攻を納得できないって同盟国のイギリスのパワーに圧倒される。翻って日本ではこんなデモが開催されるだろうか。イギリスがと言うか、ブレア首相がアメリカを支持した故の報復テロを仕掛けられ、ブレア首相が国民の生命、財産を危険にさらしたって国民意識が強いのだろう。もちろん、ブレア首相を支持する層も居るだろうが、矛先は大儀無き戦争を行ったブッシュ大統領にも向けられているのだ。
3月以降、いっこうにイラクの正常化は進まない。イラク人による政権樹立が早いのか、アメリカ軍の撤退が早いのか、もし後者が早ければ何のための戦争であったか、まったく全体が徒労に終わるのだ。
アフガン侵攻で目的のオラマビーンラディンは捕まえられず、今回はフセインを捕まえられず、しかも、陰でテロ攻撃をプロバガンダしている。テロは大規模組織行動では無いのでその根絶はかなり難しいと言わざるを得ない。イラク戦争で初期の終戦宣言までは良かったが、占領政策がゲリラ的テロに有って十分に機能していない。下手すると長期化するかもしれない、しかも、事態がイスラエル問題にまで飛び火して国際的紛争に燃え上がる危険をはらんでいるのだ。
トルコからの100年の分割統治の歴史が火種
イスラエル問題まで出てくると2000年程遡って始めなければならないが、過去100年の間にも紛争の火種が沢山有った地域だ。国連統治時代を経て、西欧各国の介入が代理戦争に発展しを繰り返した歴史がある。
100年前の状況と大きく違うのは、加えて、石油産出による膨大な資金が流れ込んでいることだろう。資金が流れ込んで国が豊になって、何故紛争は収まらないのか。それは、工業立国化がお遅れているからだ。豊富な資金で医療や福祉が国営で無料化して公衆衛生改善により若者人口が増えてきた。しかし、働く場は無い。結局町でたむろして政治談義して兵士(正規兵では無い)になるしか道がない、そんな状況が背景にあるのだ。
工業化がテロ撲滅の一つの方向性なのだ。もちろん、これだけでは無い。
作る力が無いので、豊富な資金で武器を買って戦う、その武器を売る国や商人が居る。その状況も切る必要があるだろう。大量破壊兵器(核開発)に走るのは、実は核爆弾は技術も資金も必要としない廉価な兵器なのだ。最大の障壁は原材料の入手である。これを濃縮技術も含めて天然ウランから行う技術は高度だ。だが、いったん濃縮ウランなりプルトニュウムを手に入れれば、それを爆発(核爆発)させるのは大した技術はいらない。
さすが、ダイナマイト抱えた自爆テロの根を切るのは難しいが、それでも、武器流通を止めるのは有効な手段である。
一番やっかいなのは、この地域で過去100年に西欧諸国が何をやってきたかを再度思い起こし、今後の施策に生かすことだろう。この面では特にイギリスはイスラエルからはアラブ寄りと憎まれているし、エジプトは旧ソ連の傀儡と憎まれてるだろう。その歴史を踏まえると、新たに調停に乗り出すのはアジアしか無い気もするが、ま、後始末的に火中の栗を拾わされるのではたまったもものでは無い。
支援が兵器に化ける愚を繰り返さないことだ
国連が撤退してしまったのだから、アメリカは振り上げた拳を下ろすにはイラク人による政権を早急に作らなくてはならない。このイラク新政権と国連の絆がアメリカが撤兵する条件だろう。途中で投げ出すようなことは出来ない、かといって妙な傀儡政権を作ってはベトナム戦争の二の舞だ。
そのために、なりふり構わず掃討作戦を行っているが、効果は出ていない。オサマビンラディン、フセインを捕まえるのが最大の効果を現すだろう。アメリカとしては膠着状態を打開しないと進退窮まっているのだから。
その意味で、先に書いたように「復興支援」の時期は来ていない。アメリカが起こした戦争に荷担するのでは無く、アメリカが始末を付けた後で「復興支援」を開始すべきだろう。加えるなら、アメリカが始末付けやすいようにアメリカを支援するのが今、国際社会が努力する事柄だろう。アメリカの片棒を担いでやるほどのお人好しでは、実は事態は一向に好転しないことを思い起こすべきだ。
今「復興支援」を行えば、それはアメリカの支援であり、火に油を、と言うか、飛んでくる火の粉を払わなければならない事態に陥る。言葉のアヤだが「イラク政府復興支援」と一語も略さず本質を明記すべきだろう。
文化侵略も一つの選択肢だが
笑い話で無いところが逆に滑稽なのだが、NHKはこの時期にイラク放送へテレビシリーズの「おしん」を無償でアラビア語に吹き替えて提供するとのこと。少女編では冬の山形の川、脱走兵と暮らした雪山と、ちょっと理解を超えるかなと思えるシーンもある。何よりも「商売」って部分伝わるかなぁって気もする。
それよりも、女性が社会進出するってことが解るだろうか、「こうぞうさん」はイラクでは腑抜けた男に写るんではないか。ま、多々疑問は有るのだけれど。
実はアメリカの日本における戦後統治は文化侵略だったのだ。共産圏には無い「資本主義」(だいたい、この言葉を有り難がって日本人が使うのがその証左なのだが)、を見せつけ、民主主義の方向を文化侵略で植え付けたのだ。これには誰も逆らわなかった。日本国民は戦後の焼け跡から中流階級を目指して復興にせいを出したのだ。で、それが手に入る頃になって文化目標を失ったのが1980年台以降の日本の文化なのだ。
それはさておき、「おしん無償提供」の話を聞いたとき、この文化侵略がイラクで受け入れられるか非常に興味がわいた。
江戸幕府以前の日本では戦いが終わると勝者は倒した敵を手厚く弔うことにより、その家臣が再度手向かうことが無いように配慮した。多くの神社が敗者のために勝者によって建立されたのだ。これと同じように、戦後統治と言うのは、長い目で見ると、旧体制の文化を弔い、新しい文化を広めることにつながるのではないか。そこまで行わなければ火種は以前としてくすぶり続けるのではないか。
その意味で、医薬品や飲料水って援助よりも、映画館やテレビ機材のほうがテロとの戦いに勝利する武器ではないか。工業化には時間がかかる(教育水準って土壌が必要)が、映画やドラマの文化は以外と簡単にその技術を伝授できるのではないか。兵隊になるより俳優になりたい。そう若者が考える文化の育成(ま、侵略にならないかどうか微妙だが)、そんな戦い方も有るように思うのだが。