思わぬ所に飛び火した給油隠蔽問題

20万ガロンと80万ガロンの違い
 2003年2月の海上自衛隊「ときわ」がアメリカ補給船に給油した量が20万ガロンでは無くて80万ガロンだった話は防衛省としては単純な記載ミスで片付けたいのだろうが、そう簡単では無い。
当時官房長官だった福田康夫氏が給油のイラク戦争への転用を問われた時に「空母は一日20万ガロン消費するんですよ。イラク行く前に無くなってしまうでしょう。引き算したら判ることだ」と説明したのだから。それでなくてもイラク戦争への流用については灰色である。日本からの問合せに米軍は「そんな軍事機密な事を言えるか」と日本側の平和ボケにあきれ返っているのが実情だ。
 この給油は用途限定ですよとはなら無い。まして、直接給油では無く補給船への給油なのだから、補給船が以後、どのような艦船に補給するかは判らない。そもそも、後方支援と言っても戦闘地区限定は出来ない相談だ。何処で使われるかは戦況に応じて柔軟に対応しなければならない。そもそも、急にイラク方面に行かなければならないのに「日本が給油したのだから、イラクへは行けない」なんて言ったら、そんな油はいらないってことになる。
海上幕僚監部の防衛課長が給油量の間違いに気付いていたが上司に報告しなかったことが発端だが、何故報告しなかったのかはなはだ疑問に思うのと、この国はシビリアンコントロールが出来ていない軍隊を持っている恐ろしさを受け止めてマスコミは一大キャンペーンを行っても良いのに、何故か朝青龍、亀田一家と向ける矛先が全然見当はずれだ。

やはり福田康夫幹事長の発言が重かった
 今は違うが、当時の福田康夫官房長官は上から目線で人を小ばかにして薄ら笑いで記者対応をしていた。その中で「一度米軍に提供した燃料は米軍の判断によって使われる。その用途は軍事機密だ。」と答弁すれば良い物を例の調子で「20万ガロンは一日の消費量だ。引き算したらイラクに行けないよとが判るでしょ」と小ばかにしたものだから、当時の防衛省の課長は言い出せなくなったのでは。
 防衛省にはいわゆる制服組と背広組の対立がある。課長は制服組に属する。それから上は背広組になる。制服組から背広組に情報が誤っていたと伝わらなく、福田康夫官房長官は20万ガロンと信じきっていたのだが、誰が何の目的で情報を隠蔽したのだろうか。ちまたに公式見解で言われてるように「記載ミス」では無い、思惑が存在したと考えられるのだ。
 一番の思惑は先の「イラク戦争流用疑惑」だろう。
最近になって政府はアメリカに「イラク戦争には使ってない証明をしてくれ」と泣きついたようだが、アメリカからは門前払い。そもそも、20万ガロンか80万ガロンかは軍事機密では無いが、給油後の行動は軍事機密だ。公開すべき情報を隠匿し、非公開の情報を開示しろってのは何処か着目点に乖離がある。アフガニスタン軍事行動に限定した後方支援である給油が結果としてはアメリカの全般的軍事活動の後方支援であることは自明で、そんなことは法律を作るときに考えておく事柄だろう。

防衛省スキャンダルと給油問題
 実は、問題の防衛省スキャンダルである守屋武昌元事務次官であるが、防衛省関連業者と3年で140〜150回もゴルフ接待を受けていたとか、その後に接待マージャンとか、報じられている。この情報源がマスコミ独自の取材によるものなら好ましいがどうも検察からのリーク情報を元にマスコミは書いているようだ。各社横並びの記事内容がそれを物語っている。
 となると、検索は既に立件を視野に入れて守屋武昌元事務次官の周辺を調べていることになる。守屋武昌元事務次官の名前がマスコミに扱われるようになったのは僅か55日で終わった小池百合子元防衛大臣との人事を巡る確執からだった。長期に居座るのは良くないとの小池百合子大臣の発言があったが、既に守屋武昌元事務次官の背景を踏まえて政治的な判断が必要と進言した勢力が居たのだろう。
また、一部には守屋武昌元事務次官を逮捕するために検察が調べているのでは無く、別な方面が本当の検察のターゲットだとの説もある。
 田原総一郎氏によれば沖縄の普天間基地の移転問題が何故名護市辺野古沖なのかには数々の防衛族議員の利権が絡んでいるそうだ。そして防衛族の集まっているのが旧経世会、現在の平成研究会なのだ。ここに手を伸ばすつもりで検察は情報をリークしているってのが田原総一郎氏の見かただ。
 そこまで深慮遠謀が働いているのか不明だが守屋武昌元事務次官だけ逮捕しても事件の規模は個人の範疇で終わってしまう、そこまで小さな事で検察は情報をリークしないと思われる。

人の異動から真実に迫れるか
 現在給油の情報を隠匿したのは海上幕僚監部防衛課長寺岡正善氏(退職済み)。彼が上司である部長→海上幕僚長→統合幕僚会議議長→防衛政策課長→防衛局長→防衛庁長官→官房長官→首相と情報を上げなければならないのに、個人の判断で隠匿したとされている。
当時の防衛局長は守屋武昌元事務次官だ。防衛庁長官は石破茂(現防衛相)、官房長官は福田康夫首相、首相は小泉純一郎氏だ。
ここで守屋武昌元事務次官まで情報が上がっていて、ここで隠匿されたのではないかと考えられる。何故なら、担当課長であった寺岡正善氏は2006年7月に退職後2007年5月から自民党の片山さつき議員の公設秘書になっているのだ。
片山さつき議員は前職財務省主計官時代に防衛庁担当だったので面識はあったと思われる。しかし、給油問題の責任を取って退職した寺岡正善氏の再就職に防衛省上げて支援したとすると、守屋武昌元事務次官と小泉純一郎元首相の関係(何故か2006年6月の小泉純一郎首相訪米に同行)から守屋→小泉純一郎→小泉チルドレンの片山さつき氏との流れが想像される。
 ちなみに、寺岡正善氏は国会の証人喚問が想定されるので、10月22日に片山さつき氏の公設秘書を辞任してる。
 点と点が結びつくように見えるのは、何らかの構造が出来上がっているからでは無いだろうか。また、検察の暴挙と思える情報リークも首相の「やれ!」の一言が後ろだてに必要だから、これは平成研潰しの政局の一部を我々は見ているのかもしれない。

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2007.10.28 Mint