産経webに腹を立てた小沢一郎代表の顛末

毎日新聞と袂を別ったMSN
 10月1日からマイクロソフトは産経新聞と組んでMSN産経ニュースを立ち上げた。http://sankei.jp.msn.com/
この乗換えで毎日新聞のアクセス数は半減、一方の産経新聞はアクセスが数倍に変化したと言われている。新聞もインタネを避けて通れない時勢に、変革により積極的だったのが産経新聞ってことだろうか。
 10月には秋田連続児童殺害の裁判の様子を克明に現地からアップするなど、旧来の新聞に無い速報性を武器にニュースを流してる。実際の紙面では文字数が限られる事件でも、インタネの特性を生かして情報量にメリハリを付けて報道する。これがマイクロソフトが産経新聞との契約に至った「紙面に拘らない姿勢を評価した」に繋がっているのだろう。
 しかし、紙面なら十分時間をかけて裏を取ることも、速報優先で流してしまう。記者が現場に居て目にした情報ならばぶれないが、伝聞情報も裏取りをしないで流してしまう傾向があったのは事実。
 渡辺恒雄氏が連立のキーパーソンと書いてみたり、福田康夫首相と小沢一郎代表の会談をお膳立てしたのは渡辺恒雄しと書くものだから、渡部恒三氏(衆議院、民主党)まで追い回す誤報に発展した。
 ま、書き放題なのがMSN産経ニュースで、ニュースのページの常として数日で掲載から消える。まるで、アクセス数が至上で証拠は隠滅をはかるってビジネスモデルを志向してるとしか思えない。この紙面に載らない情報こそがMSN産経ニュースの売りなのかもしれないが、とんでも誤報を撒き散らして小沢一郎代表を激怒させたのが今回の小沢一郎代表辞任騒動のトリガーだったのだ。

ひどすぎる誤報は自民党の意図したリーク
 一番笑ったのが「党首会談で自民10、民主6の大臣数を提示」だろう。政治に「ありえない」は無いと言うが、連立の話と連携の話がごちゃごちゃになっている。少なくとも連携を模索する会談で連立を目的とした会談では無いのだから、そんんあ数を持ち出す訳が無い。交渉の条件闘争を最初のトップ会談で行うはずが無い。
これは明らかに自民党側で作られた情報だ。
しかし、それに信憑性を持たせるために連立は小沢一郎代表が持ち出したって尾ひれを付けると急に信憑性が高くなる。これも産経新聞に書かせようと作り話を組み立てた自民党側の策略なのだろう。
MSN産経ニュースはこれに飛びついた。小沢は連立を持ち出して組閣の席を確保したってとんでも記事が金曜日のMSN産経ニュースからインタネに流れることとなる。当然、小沢は何を考えてるんだって民主党議員の反発は必須。
 政策課題によっては話し合い「連携」を強め、国民の信頼に足る民主党となって行こうって話も「連携」が「連立」に聞こえて頭に血が登った状態では会話が成り立たない。
 辞任会見で「民主党もまだ幼い」と小沢一郎代表が述べたのは、政治の駆け引きの中で是々非々であるべき政治家が頭に血が登って判断力を失っていることを指したものと思われる。小沢一郎代表は「連立」を持ち出していない。翌日の福田康夫首相の「連立を持ち出したのは双方の阿吽の呼吸」に代表されるように、ここは小沢が言い出した風を保つのが自民党の情報戦だったのだから。
その情報戦に敗れたのは民主党だった。小沢一郎代表に疑心暗鬼な所に「鬼が出たぁ」と叫ばれてパニクッタのだから。

俺への不信任だ! は情報戦に負けた悔しさ
 頭に血が登って逆上した役員を前に小沢代表は「俺への不信任だ。だったら辞める」と腹を決めたのだろうが、あまりにも短期な決断だった。調べてみると不信の原因はMSN産経ニュースの有りもしないデマを自民党筋から仕入れて垂れ流した情報戦と判る。「MSN産経ニュースを信じるのか、俺を信じるのか」と腹に据えかねる状態だったのだろう。
 それこそが、先に書いた民主党の幼さだ。小沢一郎代表も含めてだが。
どこの世界に参議院で第一党になった政党が「連立」する必要があるだろうか。「連立」は政治バランスから第1党と第3党が行い、第2党をけん制する手法だ。第1党と第2党が連立しても目的が無ければ崩壊への序章でしか無い。昔の大政翼賛会翼賛すべき命題が有った。今の日本にそんな命題はあるだろうか。あるとすれば、日本は民主主義国家として歩んでこなかったってことだ。
 偽電子メール事件以来、民主党には情報戦を戦う力量が不足してる。逆に言えば自民党のような陣笠代議士が少なく、ここの代議士のインテリジェンスが高いから陥ると好意的に見ても良いが、でも、学者の戦いでは無くて国会は国民の預託を受けた国民のための戦いの場なのだから、情報戦でコロリと負けるようでは官僚主導の政治の排除には甚だ心もとない。官僚も情報戦を得意とするのだから。

小沢一郎代表よ気弱になるな
 今回の辞任劇は小沢一郎代表の一人芝居の感が強いが、実は党三役を含めて党役員の狼狽は目を覆うばかりだ。結局、小沢一郎代表が居なければ纏まらない民主党の現状を国民の前にさらけ出した。雨振って地固まるは小沢一郎代表にこそ相応しいだろう。
 先に小沢一郎代表の「激怒」と書いたが、辞任会見の様子を見ている感じでは「弱気」とも感じられた。あれだけ選挙に強いと言われた小沢一郎代表が「民主党は幼い」「次の選挙でも政権を獲るのは難しい」と述べたのは陣営引き締めと言うよりも弱気になってるからではないか。
 実は現在の民主党で政権奪取のチャンスがあと1回しか無いのが小沢一郎代表ただ一人だ。鳩山由紀夫氏も菅直人氏も数回ある。岡田克也氏や前原誠司氏に至っては5回以上、原口一博氏に至って10回以上あるかもしれない。
 つまり「次は石に齧りついてでも」って意気込みがあるのは小沢一郎代表だけで、あとのメンバーは「そのうちぃ」とか「別にぃ」とか真剣さが無い。だから、情報戦で右往左往してしまう、肝が据わって無いのだ。
 ま、これを書いている時点では代表を継続するかどうか判らないが、民主党は個々の議員の力量以上の国民の期待を担っている。どう実現すれば良いのかは小沢一郎代表だけに託されているのでは無い。「別にぃ」議員を鍛えなおすあたりから始めてはどうだろうか。

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2007.11.05 Mint