いよいよ本丸に迫るか! 東京地検特捜部
調達に潜む甘い汁
1994年の内部告発に始まる防衛庁(当時)の一連の水増し請求の実態は防衛庁が指導した水増しの公算が高い。
国の調達は研究開発費等は積算せずに製造原価方式で価格を決める。このため企業にとっては、民間ベースより利益が少ないのが普通だ。それではやっていけないので民間並みの利益を得る方策として防衛庁が防衛庁公認の「水増し請求」の仕組みを指導した。
これが企業と防衛庁の「阿吽の呼吸」だったのだが、内部告発で表面化し基本の調達価格に戻した。その差額を「水増し請求」分と呼んでいるが、本来防衛庁が主導しなければありえない構造だった。業者との癒着を問われたが、その前に防衛省のような先端技術製品を購入する部署では調達価格を民生品と同等に扱うのがおかしい。その抜本的な部分には手を付けないで元に戻して終わってしまった。
先に亡くなられたNECの関本氏はNECの防衛庁水増し事件の責任を取る形でNECを辞めた。その後、再起することは無かった。
水増し請求是認の構造的な事件の責任を構造に巻き込まれた側の会社が取るってのも変な話で、調達業務自体が実情に合わない部分は見直されもせず継承された。
商社が兵器の調達に関わるのは防衛庁の能力不足から始まった長年の習慣が一向に改善されずロッキード事件のようなマネーロンダリングの構造を含んでいるからだ。
防衛省から支払われた金(もちろん、国民の税金)が多くの手を渡ることにより上流に向かって還流していく構造を容認し放置し、そして自らも甘い汁を吸い続けたのだ。
これが商社を利用したマネーロンダリング構造を構築したのだ。
決定的証拠が見つからない
状況証拠に近い伝聞情報は飛び交い、しかも錯綜してる。新聞各社も中々本丸への階段を見つけられない。確かに何百回もゴルフ接待を受けるのは常識的に山田洋行側に請託の意図が有るとしか思えないが、それの決定的証拠が出てこない。
言った言わない、会った会わないの情報しか出てきていない。しかも指名された側は否定するが否定に確たる証拠も無い。
捜査が堂々巡りをしてる間に重要な証拠はどんどん隠蔽されるのが事件の常だ。贈収賄で立件する方向を東京地検特捜部は固めたようだが、以外と山は険しく高いのではないだろうか。国会開催中の事もあり政治家にたどり着くルートの解明に時間が掛かっている。もしかしたらそのルートは今の捜査方針では見えてこないのかもしれない。巧妙な偽装工作が隠れているのかもしれない。
見ず知らずの山田洋行から600万円もの政治献金を受けた小沢一郎民主党代表は「知らない所から金を貰っていたのが判ったので返した」と述べているが、これは12年間で50万円づつ計600万円が政治献金されたものだが、小沢一郎民主党代表自らが「何代遡っても何故献金されたのか判らない」と言うほどの判らない政治献金だ。
同じように久間元防衛大臣も220万円のパーティ券の購入があり、返金している。これも1社で220万円も買えば目立つだろうに、なぜ、あからさまに政治献金なのに行ったのか。
実は元空将で今年引退した政治家、田村秀昭元参院議員の名前が浮上している。彼は新進党から民主党まで小沢一郎氏の側近で空将時代は宿泊テニスとかで山田洋行の接待を受けていた。
実は防衛利権は旧田中派の金丸信氏が握っていたが東京佐川急便事件で失脚した後は小沢一郎氏に移っていた。そして、現役空将を務めた田村氏との組み合わせ。これは親分の小沢一郎氏にも政治献金しとけ、って流れであるのは確かだろう。しかし、これは「万が一天下取ったときの保険」みたいなもんだったのだ。
贈収賄には「何を願ったか」が必須
目に見えるもの、証拠の残っているものは総て予め想定内の捜査撹乱材料だったのでは無いだろうか。例えば小沢一郎氏への50万円12年は、明らかに何かを成約してもらいたくて行った額では無い。永田町に流れる「山田洋行政治献金リスト」なるものがあるらしい。ここには12名の国会議員の名前が記されているが久間元防衛相に10万円とお中元、お歳暮程度だ。これで何かを願われても政治家は動かないだろう。
これも捜査撹乱のチャフ(ミサイルが攻撃してきた時にアルミホイルの小片を撒き散らしてミサイルのレーダを撹乱する防御武器)だろう。
本命は何処に隠されているのか、その決定的証拠に向けて東京地検特捜部は必死で追っているのが現状だろう。
海外からの黒船到来
今回の一連の事件がロッキード事件と似ているのは、アメリカの航空機産業が日本の代理店を通して防衛庁に機材を売り込んだ部分だが、先のロッキード事件は火の手が上がったのではアメリカからだった。アメリカの「海外腐敗防止法」に違反したロッキード社の取調べがアメリカで始まり、それの火の粉が日本に降り注いだのだ。
今回の場合は日本から発火したが、全容によってはアメリカ側も火の粉をかぶる。GE(ゼネラル・エレクトリック)が対象になる。
この法律は「アメリカの企業が商取引を得るために外国の政府関係者に金品を贈ってはならない」と規定してる。ま、アフリカか何処かの政治的安定が無い国をワイロとリベートで縛り付けて売り込むって事を想定してるのだろうが、実は守屋氏は立派にアメリカから見たら「外国の政府関係者」なのだ。
今回、ゼネラル・エレクトリックだけでなく、ノースロップ・グラマンも山田洋行から代理店を新会社のミライズに移してる。納入実績の無い会社が防衛省と取引出来るはずが無いのは、ちょっと調べれば判ることだ。ただ、守屋武昌防衛事務次官が随意契約が可能だ」と太鼓判を押したら別だろう。なんせ、調達のトップなのだから。
そうでも無ければゼネラルエレクトリック社やノースロップ・ブラマン社が1000億円以上になる商談をあっさり「ミライズ」に置き換えるはずが無い。
この守屋武昌防衛事務次官による確約以外に販売代理店を「ミライズ」に移す判断は付かない。
さて「守屋さん、頼みますよ」で一席設けただけで先の「海外腐敗防止法」に該当する。宴席に出ていない、会っていないと必死になるのはこのような裏があるのだろう。
とすると、海外ルートの解明から全容が見えてくるかもしれない。