シナリオを描けてない福田首相の胸のうち

会期延長しか選択肢は無いはず
 参議院での審議が始まったが民主党は採決に持ち込まずに会期切れ廃案に持ち込む戦術だ。この場合、本議会で否決されなければ衆議院に引き取って2/3の賛成で成立させることも出来ない。まして、強引に参議院本会議上程は現在のパワーバランスでは難しい。
ひたすら低姿勢で挑むしか無いのだが、民主党は方針を変えないだろう。そこで福田首相に残された選択肢は国会延長しか無い。参議院期限切れが1月12日に訪れるまで時間を引き延ばすしか無くなる。
この場合、衆議院に戻して2/3の賛成で新支援特措法を通したら、参議院では「問責決議案」が上程され現状では可決されるだろう。
法的拘束力が無いとつっぱねると、その後に控える予算案の審議に影響する。予算案が、これまた衆議院での可決で自動発効になる手順を選べば国会は機能しないことになる。
それでも、死んだ振りで衆議院を解散しなければ国民の支持は時間が経過するほど落ち込み、自民党に不利な選挙戦を余儀なくされる。
 ただ、予算と新支援特措法を天秤に掛けて、会期終了、自動廃案の選択肢が無い訳では無い。現実に首相のリーダーシップは低下するだろうが、そこは軸足を何処に定めるかによって判断は違ってくる。
 ここに来て民主党が参議院での自動廃案では無く、年内議決を表明しているので1月12日まで国会を延長する必要は無いだろう。ただ、中途半端に延長すると新支援特措法は廃案で終わる可能性も出てくる。年内議決を装って民主党が実質60日を掛ければ廃案で自民党の負けになる公算もある。

解散総選挙のカードは切れない
 来年のサミットに向けて解散総選挙を仕掛けるにはタイミングが悪い。予算を通すためにも2/3のカードは残しておきたい。仮に衆議院を解散するのなら新支援特措法を通しておきたい。複雑に絡み合った政治判断が福田首相に要求されている。
 加えて防衛省スキャンダルが何処まで進展するのか見極めが難しい。政治家にも及ぶのならば金丸利権を引き継いだ小沢一郎民主党代表にまで手が伸びる可能性もある。自民党内部に留まらず防衛関連政治家にも範囲は広がるだろう。
 選挙のカードが使えないとすれば、新支援特措法は廃案にしたほうが有利だ。あと1週間で決めなければならない局面に達してる。なんせ12月15日で延長国会は閉会するのだから。
 福田首相が組閣を終えてからサミット後の話し合い解散を口にしたことがあったが、今もその姿勢は変わらないと思われる。アメリカの大統領選挙が来年の秋にあり、ブッシュ政権は任期満了により交代する。その時に現在のアメリカのイラク政策が大きく変化する可能性がある。また、新支援特措法が実行出来ない場面も想定される。
そのために、無理して新支援特措法を通す必要があるのか福田首相も疑問を持っているのではと推測される。現在の衆議院の議席数が確実に減る衆議院解散は少しでも遅らせたいのが本音だろう。とすれば、新支援特措法を犠牲にせざるを得ない。

解散も無し、新支援特措法も成立
 この矛盾する命題を両立する手立ては現在見えていない。総て福田首相の胸の中なのだ。民主党も次の福田首相の一手を見てからではいと動きが取れない状況にある。そして、福田首相の次の一手が予想できない。
 無難な落とし所は公明党が反対に回って、結局2/3議決は行えませんでしたってシナリオだろう。自民党内も治まりやすいだろう。公明党も実質2/3決議はやりたくない雰囲気がある。それに加えて公明党は現在の選挙制度での長期低落は避けられず選挙も回避したい。
 以外と公明党が今後の政局のキャスティング・ボードを握っているのかもしれない。

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