考えられない失態、学研の偽地球儀販売
ついに地図の偽装事件まで起きた
2007年に相次いだ食品偽装問題は2007年の漢字が「偽」に選定されたように象徴的な事件の発覚だった。そして年が明けて地球儀の地図の偽装事件が発覚する。
事件の中心になった会社は学研グループの発売していた「スマートグローブ」とタカラトミーの「トーキンググローブ」の地球儀。
どちらもペンで国をタッチすると国名や国の特徴が音声で知らされる学習教材。
その教材に独立国である台湾を中国の一部として「台湾島」と表記。本来国際通念では台湾は独立国と認めるかどうかの意見は多々あるが、地図では国として表記するのが常識。政治経済の問題とは別に「台湾」って国家は地理的には存在する。
また、いわゆる北方領土をロシア領として同一の色で塗っている。1945年の終戦後カラフトの南方と北方4島は国政的に帰属のはっきりしない地域として白く塗っておくのが地図の常識。歴史的推移がどうあれ、これも地図的な扱いの常識になる。
食品偽装問題では生産日のとらえ方にファジーな部分があり、それが誤解を招く面もあったと情状の酌量の余地はあったが、この偽地図は明確に表記されていて誰にでもチェックの機会があったのだから明らかに偽物と知って販売してと言える。
しかも、食品偽造事件では曲がりなりにも食中毒や体調異変を起こしたことは無い。しかし、偽地図で学んだ者の偽知識は将来に大きな禍根を残す恐れがあり、教育玩具を手がける会社としての姿勢が大きく問われるだろう。
本来、販売してはいけない商品を販売した。それも製造段階で偽装すると通告を受けたにも関わらず、受注が入っていたのでそのまま製造した。国策にまで影響する過ちを犯したって反省が見られないのも、無責任さを強く感じる。
中国で製造された地球儀
「製造の現場である中国から強く指導された」ってのが学研の言い分。それはおかしくないかぁ。発注者は学研であり、製品仕様を決めるのは発注者である学研側。まして、政治的色彩を帯びる台湾、北方領土を扱う中国の政治的圧力は明確で、そんな商品を出したら日本国内で袋だたきに遭うと考えないのだろうか。
単に中国の事情の台湾のみでは無く、日本の国内で問題にされている北方領土まで圧力を掛けられて塗り替えている。しかも悪質なのは「中国政府の指示により表現を変更した」との注意書きを同封して販売した。自社には製造責任が無いかのような姿勢にはあきれてしまう。
しかも、販売中止の記者会見では「直接指示をされてはいない」と矛盾する説明を行っている。何が真実なのか、今後の情報公開に待つとして、偽地図問題が偽説明にまで発展する後手後手の対応は、去年の食品偽装問題から何も学んでいない。
偽地図を容認し販売した責任をどのように取るのか、学習教材大手としての学研の真摯な姿勢が問われる。
まずは、早急に真実を明らかにすることだ。地図の国境表記は国際問題の本端にもなる。「竹島(独島)問題」、「日本海、東海」問題。微妙な問題に発展する。まして、竹島問題は日本の領土を外国に武力占拠されてる現状がある。それに対して日本政府は的確な対応を取れていない。ここで、竹島は韓国の領土なんて地図を出したら日本国内では袋だたきだろう。そのような国際感覚があれば今回の偽地図問題は起こらなかったと思うのだが。
中国での製造は政治色を伴うのか?
中国がコピー文化の社会なのは旧来言われてきたが注文主の仕様を政治的に変更させる程の行為に及んでくるだろうか。世界を相手に工業社会を拡大している今の中国に日本からの注文の地図に口を挟み、日本国内で問題化するはずの台湾と北方領土の修正を「指導」する企図が解らない。そこまで気がかりなら「そんな注文は受けない」で終わらせて良い話だろう。個数も学研分で1万個、タカラトミーは4千個程だ。生産の穴埋めは他の仕事で出来る規模だ。
と、続報が入った。中国外務省の姜瑜報道官が10日の定例記者会見で「中国の法律を遵守すべきだ」と述べた。「中国の法律」とは「中国はひとつ」ってことだ。マーケットを日本に設定している商品にまで中国の法律が及ぶかどうか議論のあるところだが、やはり政治判断が入っていたのだ。
しかし、この論調の拡大解釈が怖いのは、もっと数量が多くて大量に出回る商品が、発注者の仕様にそぐわない偽造をされることだ。家電製品でも配線のグレードを下げて手抜きをすると発熱して発火する。可動部分が多い製品では十分に強度試験して設計したものが材質の粗悪なものを使われ折れてしまったり。中国の法律で製品の仕様を変えられたのではたまらない。
いわゆる「品質」の面で中国生産は安心できるのか? これが、今回の事件の裏にあると思う。去年は国内の食品偽装問題だったが、今年は国外生産の偽造の問題の年になるのではないか。新年早々から偽装地図問題は我々の安全・安心は国内だけの問題では無いことを知らせてくれる。
真相は複雑らしい
続報からの補足記載。
そもそも、この音声ガイド地球儀は香港のメーカーが企画作成し日本語版(音声)と販売権を学研が購入した。地図部分も日本の教科書仕様にしようとしたが、製作工場が中国にあり、中国政府が地図部分を変更すると輸出を認めないと決め、泣く泣く学研は「おおせのとおり」と屈服してしまったのだ。
しかし、伊原吉之助・帝塚山大名誉教授のこのような指摘もある。
「世界地図の表記はその国の利益に直結しており、他国の主張にやすやすと屈服し、自国で販売するというのは主権侵害への加担であり、一企業の商行為でも不誠実のそしりは免れない。それが学習教材大手というからなおさらだ」
izaより引用
正論である。地図って商品は国境線に深く関わり、一国のアイデンティティの象徴である。それを注文をさばきたくて不完全なまま輸入販売したのは、やはり偽造地図事件と言われてもしかたがないだろう。
しかも台湾の箇所をクリックすると中国の案内が流れ年間100万人もが行き来する台湾の情報はこの地球儀には無い。偽装地球儀と呼ばれない唯一の方法は表記を「中国仕様地球儀」と明確にすれば良かったのかもしれない。
2008年1月18日追記
偽装地図については、この後に
3Dジグソーパズル地球儀の「やのまん」
地球儀型ビーチボールの輸入雑貨店
なども発覚している。ジグゾーについてはその部分のピースの交換に応じると被害はピース1個だが、地球儀型ビーチボールについては20年も前から台湾島となっていた経緯は不明。